失敗したとき、「わたしのせいで」と必要以上に自分を責めてしまう。
あるいは、うまくいかない状況に対して
「あの人のせいで」と他人を責めたくなる。
そんな“思考のクセ”に心当たりありませんか?
私はいっぱいあります…!
実はそれ、あなたの性格のせいではなく、
「認知の歪み」というこころの仕組みによって
引き起こされている可能性があります。
大学では心理学を専攻し、認定心理士の資格も取得しました。
そんな私自身も、「認知の歪み」という考え方に出会ったことで、
自分を責めすぎていた思考のクセに気づけた経験があります。
この記事では、認知行動療法の視点から
「わたしのせいで」や「あの人のせいで」の背後にある
“10のワナ”を紹介し、自分を少しラクにするためのヒントをお届けします。
「自分責め」も「他責」も、実は“思考のクセ”だった
「もっと気をつけていればよかった」「私が悪かったのかも」
そんなふうに、自分を強く責めてしまうことがあります。
あるいは
「あの人さえちゃんとしていれば」「上司のせいで空気が悪くなった」と、
他人に気持ちが向くことも。
こうした思考の背景には、「認知の歪み」と呼ばれるパターンがあります。
これは認知行動療法(CBT)という心理療法の中核的な概念で、
思考・感情・行動が互いに影響し合うというモデルに基づいています。
感情に飲み込まれそうになったとき、
自分の“頭の中の声”に気づくことが第一歩になります。
あなたの思考はどのタイプ?——10の「認知の歪み」チェック
私たちが陥りやすい「思考の歪み」は、主に以下の10パターンに分類されます。
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白黒思考:「うまくいかなければ意味がない」「0か100」でしか評価できない
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一般化のしすぎ:「いつも失敗する」「私は何をやってもダメ」
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心のフィルター:うまくいったことよりも、1つの失敗ばかりに注目してしまう
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マイナス化思考:「これはたまたま」「本当の実力じゃない」と成功を否定する
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結論の飛躍:十分な根拠もないのに「きっと嫌われてる」と思い込む
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拡大解釈と過小評価:ミスを大ごとに捉え、自分の良さは過小評価する
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感情的決めつけ:「不安だから、ダメに決まってる」と感情を根拠にする
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すべき思考:「こうあるべき」「〜しなければならない」と自分を縛る
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ラベリング:「私はダメ人間」「あの人は自己中」とレッテルを貼る
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個人化:他人の機嫌や出来事の責任を、自分に結びつけてしまう
こうして見てみると、「あるある…」と思い当たるものが
一つはあるのではないでしょうか。
でも大丈夫。気づけた時点で、すでに一歩進んでいます。
責めるクセから抜け出すための3つのステップ
では、自分の思考のクセに気づいたら、
どうやって少しラクになる方向に変えていけばいいのでしょうか?
ここでは、比較的やさしく取り組める3つのステップをご紹介します。
1. 思考を「見える化」してみる
「なぜ私はこんなに落ち込んでるんだろう?」と感じたら、
ノートに書き出してみましょう。
状況・感情・頭に浮かんだ考えを並べてみると、
自分の思考のパターンが見えてきます。
2. 「本当にそう?」と問いかけてみる
浮かんだ思考に対して、「これは事実? それとも解釈?」と
問い直すだけでも、グラグラしていた感情が少し安定することがあります。
3. 自分に優しく話しかけてみる
「友達が同じことで悩んでいたら、自分は何と言うだろう?」と考えると、
現実的で優しい視点が持てます。
このように「友人視点で考えてみる」という方法は、
認知行動療法でもよく使われる問いかけのひとつです。
“真面目で頑張り屋”なあなたへ伝えたいこと
「どうせ私が悪い」とすぐに思ってしまうあなた。
あるいは、「なんであの人はああなんだろう」と
他人にイライラしてしまうあなた。
どちらの傾向にも、共通しているのは
「うまくいかない状況に、
自分なりに理由を見つけようとしている」という姿勢かもしれません。
実は、「自分責め」と「他人責め」は、表裏一体のようなもの。
前者は“自分に原因がある”と捉えすぎ、
後者は“自分を守るために他人に原因を見出す”防衛反応とも言えます。
どちらも悪いことではなく、ただ“思考のクセ”として気づいていけると、
心が少し軽くなることがあります。
認知行動療法の考え方は、魔法のように
すべてを変えてくれるわけではありません。
でも、自分の中にある「自動的な思考」を気がつくことで、
感情の波に飲み込まれにくくなることは確かです。
「自分を責めは、自分の思考のクセ」
「誰かを責めるは、自分の思考のクセ」
この視点こそが、自分にやさしくなれる第一歩なのかもしれませんよ。