“これは不毛な恋なのか…”
“いや、まだ何かあると信じたい…”
“あのとき出会えた奇跡に意味なんてなかったと思いたくない…”
“これは私の負け戦なのか?”
“いや、まだやってないことがきっとあるはずだ…”
“打つ手が完全になくなるまでは諦めきれない…”
そんなあなたに届けたい想いを綴りました。
***
私は普段、ネイルをしない。
でも過去には、念入りに爪を綺麗にしていた頃もあった。
正確に言えば、
綺麗にしてもらっていた頃もあった。
美しくなった指先を眺めて
気分を上げていたわけじゃない。
好きな人がより近くに感じられる
好きな人との繋がりを感じられる
嬉しさも切なさも儚さも
様々な感情が入り混じる行為が
私にとってのネイルだった。
そう、当時
好きな人だった人はネイリストだった。
***
転機は突然やってくるもの。
とあるイベントに参加するために
近所のお店でジェルネイルをお願いした。
当時の職場はネイルが禁止だったので、
連休の数日間だけネイルを楽しんだあとは
せっかく施してもらったジェルネイルも
次の出勤日までには落とさなければならなかった。
が、しかし、
ネイルを落としたいその日に限って
サロンは予約でいっぱい。
予約をしていなかった私の落ち度だが、
時刻は19時過ぎ、
受け入れてくれるお店探しをするには
遅すぎる時間で突如としてピンチに陥った。
自宅周辺のネイルサロンに片っ端から電話をかけた。
1件目
私:「本日ジェルオフをお願いしたいのですが…」
店:「申し訳ございません。本日はすでにご予約がお取できない状況でして…」
私:「ですよね…、ありがとうございました」
2件目
私:「本日ジェルオフをお願いしたいのですが…」
店:「申し訳ございません。営業時間が間もなく終了いたしますので…」
私:「ですよね…、ありがとうございました」
こんなやりとりを何件も続けていた。
そんな中、1件だけ希望の光が見えた。
私:「本日ジェルオフをお願いしたいのですが…どうしても今日中じゃないといけなくて困っていて…」
店:「申し訳ございません。本日はもうご予約満了頂いておりまして、当店ではご予約をお取できないのですが…」
私:「そうですよね、こんな時間ですもんね、無理を言ってしまい申し訳ございませんでした。ありがとうござ…」
店:「お客様!少々お待ちいただけますか?」
私:「は、はい、、、」
~♪~♪~♪
保留音が流れた。
(なんだろ…何かいい話だといいな…キャンセルでも出たのかな…)
~♪~♪~♪
店:「お待たせいたしました。ここからお車で10分くらいのところに系列店があるのですが、すぐにお越しいただけるのであれば、そちらの店舗をご紹介できますがいかがなさいましょうか?」
私:「行きます!行きます!」
二つ返事でその提案を承諾し、車を走らせた。
***
紹介されたお店はショッピングセンターの一角にあった。
到着時、私のほかにお客様らしき人はおらず…
(あれ?系列って言っていたけど、ここはあまり人気ないのかな?)
お店の中に入ると
短髪ソフトモヒカンに眼鏡をかけた
全身黒ずくめの男性が表れた。
所謂おしゃれに気を遣っていそうなアート系の
少し苦手なタイプの男性だった。
(え?女性のスタッフさんじゃないの!?)
恐る恐る私は声を発した
私:「あの~、〇〇店からご紹介いただいたのですが…」
男性:「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」
案内された席に座ったものの、
予想外な状況に気まずい空気が流れた。
静寂を破ったのは相手の方だった。
男性:「らっこさん、〇〇店にお電話くれたでしょう。対応したスタッフは、昔からよく知っている後輩なんですけど、すごい困ってそうなお客様がいるから、何とか先輩のところで対応してくれないか?って、珍しく頼みこまれたんですよ。だから、どんな困ってる人が来るのかなって、ちょっと楽しみにしていました。」
私:「そうだったんですね!でも、こちらのお店が営業していて良かったです!」
男性:「終了してますよ、営業時間20時までですから(笑)」
私:「えっ!?」
時計に目を向けると時刻は20時15分過ぎ。
私:「ご迷惑かけて本当にすみませんでした。でも本当に助かりました!ありがとうございました!!」
最初に電話をかけた系列店のスタッフさんの機転の利いた対応と
それを受け入れてくれた目の前にいる男性の優しさに心から感謝した。
二人きりだったこともあり、いろんな話ができた。
出身が県外であること、もともと美容の専門学校で講師をしていたこと、美容師だったのにいつの間にかネイルの方が本業になっていたこと、恋愛からしばらく遠ざかっていること…。
あっという間に時間が過ぎた。
楽しい時間というのは、どうしてこんなに過ぎ去るのが早いのだろう。
当時、仕事もプライベートも忙しくて、
あまり自分の時間がとれていなかったこともあって、
心の底から癒された。
(男性に癒しを感じることって、今までなかったかも…)
素直にまた会いたいと思えた。
時刻は21時過ぎ。
車に乗り込んだものの
駐車場を後にするのが少し名残惜しかった。
車のバックミラーに映るショッピングセンターに
その男性スタッフの姿を重ねていた。
***
翌日になっても
昨日の親切な対応を噛みしめていた。
どうしても
もう一度“ありがとう”と伝えたかった。
季節はクリスマスシーズン。
12月の10日を過ぎた頃だった。
恋人のいない当時の私には
関係のないイベントだった。
それなのに…
(クリスマスか…、今ならお礼を伝える絶好のチャンスなのかもしれない…)
そう考えた私は、TSUTAYAでクリスマスカードを購入した。
予備で買ったものを使い切るくらい
何度もメッセージを書き直した。
いろんな言い訳を挟みながら。
ああでもない、こうでもないって。
でも結局シンプルな内容におさまった。
【〇月〇日、営業終了後にも関わらず対応して頂きありがとうございました。本当に助かりました。どうしてももう一度きちんと御礼が伝えたくて。素敵なクリスマスをお過ごしください。】
こんな感じで用意したものの、
このカードが届く頃に
相手が私のことを覚えている保証はない。
“誰これ?”と
あっけなく処分されることだってあるかもしれない。
いや、その可能性の方が高いかもしれない。
たとえそうだったとしても、
今ならダメージも大きくない。
送らない手はない。
お礼を告げられたら、私も満足する。
正直お店に行くことはもうないと思うし
なら迷うことはない。
(えい、やー!)
クリスマスカードをポストに投函した。
***
クリスマス当日、
もちろん何もなかった。
次の日も。その次の日も。
そして、次の年へと月日は流れていった。
***
綺麗な思い出として終わらせるはずの出来事が動き出したのは、
1月も半ばに差し掛かった頃だった。
(ん?誰これ??)
私のスマホに、ショートメッセージが届いていた。
その男性ネイリストさんだった。
要約するとそこには
カードのお礼とお礼が遅れてしまった理由が記されてあった。
私がカードを送った店舗とは別の店舗でのシフトが続いていたため
カードの存在に今になって気がついたと。
まさかの返事がきた。
(そっか。これも何かの縁なのかな…)
またそのお店に行く理由ができた。
できてしまった。
いや、もしかすると私は
自らそのチャンスを作り出したのかもしれない。
***
その後、何度かその男性のいるネイルサロンに通った。
その男性は火星うお座で
私は火星しし座だった。
西洋占星術という占いでは
男性の火星には、好きな人に見せる態度、愛し方が表れている。
女性の火星には、好きな男性のタイプ、理想の男性像が表れている。
その男性は相変わらず
よく話を聞いてくれる人だった。(火星うお座)
どんな質問にも聞けば答えてくれた。
会話の流れから食事の約束をした。
私は口約束は鵜呑みにしない性格。
それでも嬉しかった。
“いつか本当に叶ったらいいな…”
***
そんな思いも虚しく
その約束が果たされる日は一向に来なかった。
だから、お店からも足が遠のいた。
だんだん胸が苦しくなってきてしまったから。
“あー私、期待しているんだな…”
それに気がついたとき、どうしても積極的になれなかった。
傷つくのが怖かったから。
***
2週に1回のペースで通っていたお店も
月1まで減らした。
当時、唯一の楽しみだったから
この決断は本当に心苦しかったことを覚えている。
それでも、たまには話題にだしてみたりした。
私:「落ち着いたらごはん行けるといいですね^^」
男性:「そうですね、本当に待たせてしまって申し訳ないです。」
(だからさ…それはダメだって…)
(その返しは、待ってしまうのだよ…)
そんなことを思いながら
これ以上ツッコむことはできなかった。
***
半年以上が経過した。
何も変わらない。
店員さんとお客様のままだった。
あえていうのであれば、
絶対にNOとは言わない人だった。(火星うお座)
どんなに他の予約が詰まっていても、
別の仕事をしながらでも、
時間を調整して施術してくれた。
だからこそ
何を考えているのか
よくわからなかった。
***
ある日、衝動にかられて
こんなメッセージを送った。
私:「今日お時間あれば、ごはんでもいかがですか?」
どうせ無理だと思っていた。
何度も仕事を理由に断られていたので。
またテンション下がることを承知で返事を待った。
そもそも返事もこないかもしれない。
でも、その日は違った。
男性:「夜遅くなるかもしれませんが、それでもよろしければ!」
え…?
行けるの?
そんな回答がくるとは思ってもみなかったから
慌てて深夜までやっているお店を調べ始めた。
そして、実際に会えた。
男性:「当日に誘ってくれてありがとうございました。
久しぶりにお酒のみましたよ。」(火星うお座)
どうやら本当に忙しそうで、
その表情には少し疲れが見え隠れした。
男性:「らっこさん、今日は大人しいですね。いつもみたいに恋バナしないんですか?」
私:「そうですね、恋バナしましょうか(笑)」
一緒にごはんに行けて感無量で言葉が出ないのと
疲れている人に対して能天気に恋バナなんてする気になれなかったけれど、
どうにかエピソードをひねり出していた。
男性:「そういう時はね、~~」
仕事上、女性からよく恋愛相談を持ち込まれるであろう彼は
私の面倒くさい素朴な質問に対しても嫌な顔ひとつせず答えてくれた。(火星うお座)
***
毎回誘えば会えるわけではなかった。
でも当日の誘いが比較的よい返事をもらえることがわかった。
あれは3回目だったかな、
不意に体を近づけてきたのは。
私:「そういうのは、お付き合いしてからすることですよ」
一応、牽制しておいた。
男性:「あ、そっか、そういうの大事ですもんね。」
私:「え??今までどうしていたのですか?」
男性:「もう何年も告白せずにいたので…」(火星うお座)
私:「・・・」
男性:「・・・」
過去の苦い経験から
ここはどうしても引き下がりたくなかった私は無言の圧をかけ続けた。(火星しし座および不動宮の戦い方)
男性:「お付き合いして頂けませんか?」
そうやって、聞きたい言葉を引き出した私は
内心、勝利のガッツポーズをした。
***
この彼とはそこから4年間おつきあいした。
とにかく優しくて
だけどだらしない所もあって(火星うお座)
だらしないと言ったら怒られるかな
本人は人助けだと思ってやっていたことがほとんどだったから。(火星うお座)
大金を人に貸したり
借金を肩代わりしたり
デートの合間に数時間、
困っている人を助けるために別の予定を入れることもよくあった。
私との出会いもそうだけど
可哀想だと思ったら放っておけない性分らしい。(火星うお座)
そんなところが大好きで
そんなところが大嫌いだった。
彼:「どうにかなる」
私:「どうにかするならわかるけど、どうにかなるはどうにもならないよ」
恋バナを楽しんでいた私たちはどこへ行ってしまったのだろう。
いつしか将来について話すと
衝突することが多くなった。
それでも大好きな人だったから
ずっと一緒にいたかった。
でも正直、
一緒になれる道筋がまったく見えていなくて
私の情熱の火はほとんど消えかけていた。
(そもそも、この人私のこと好きなのかな…?)
それすらも確信が持てなくなっていた。
だからこそ
その思いだけでも再燃させたくて
私は別れ話をする決心をした。
***
当時、この彼とは途中から遠距離恋愛になっていたこともあって
別れを切り出す舞台は空港にしようと決めていた。
私:「もう4年が経つけど、将来が見えなくて、一緒にいることがつらいです」
彼:「…」
私:「だから、お互いのために離れた方がいいと思いました」
彼:「…」
搭乗アナウンスが響き渡る中
しばらく沈黙が続いた。
彼:「長い間、時間を無駄にさせてしまって、本当にごめんね」(火星うお座)
当時の私にとっては
想定外の言葉だった。
私:「どうしてそんなこと言うの…」
抑えていた涙があふれだしてきた。
私が欲しかったのは“ごめんね”じゃない。
ただひたすらに熱く“好きだ”と言って欲しかった。(火星しし座)
でも彼の愛情表現は違った。
どんな話でも嫌な顔一つせずに聞いてくれる
君の下した決断なら僕はそれを受け入れる
どんなに間違ったことを言おうとも指摘せずに味方でいてくれる
それが彼の思い描く男性像だったのだろう。(火星うお座)
私の頬を流れる涙を
彼は指でふき取ってくれていた。(火星うお座)
そんなの指じゃ、とても間に合わない。
慌ててティッシュを取り出し
目頭を押さえてくれた。
いつも本当に丁寧に接してくれた。
お客さんとしてネイルしてもらってる時と変わらないソフトタッチだった。
私はわかっていた。
ここで「やっぱりこの話やめよう」と言えば
またすぐにやり直せることを。
でもその選択をしなかった。
私は理想を曲げられなかったし、
それをまだ追い求めたいと思ったから。
今となってはわかる、どれほど愛されていたのかを。
だけど、私は自分の欲しいものばかりに目が向いていて
そこに気がつくことができなかった。
自分の決断を後悔しているわけじゃない。
でも、あんなに私に寄り添ってくれた彼のことを
私は理解してあげられなかった。(火星うお座)
海のような大きな懐でいつも快く迎え入れてくれた彼を、
きっと私は彼に寂しい思いをさせてしまっていたに違いない。
これじゃないあれじゃないと
駄々をこねる子供のように見えていたのかもしれない。
彼:「らっこさんはちゃんと幸せになれる人だからね」
どうしてそんな言葉を最後にかけられるのだろう。
最後くらい嫌いになれる暴言を吐いてくれたら良かったのに。
私はドラマチックに追いかけてきて欲しかった。
「俺が幸せにするから」そんな展開を望んでいた。(火星しし座)
それが愛している人への愛情表現だと信じてやまなかった。
どんなにまわりに反対されようと
二人で仲良く生きていこうねと。
でも、それは私の彼に対する
理想の男性像の押し付けだった。
今ならそれがわかる。
本当に謝らなければならないのは
私の方だったのかもしれないと。
***
それから私はネイルをしなくなった。
彼の存在を思い出すから避けていたのかもしれない。
そんなところまで見込んでくれていたのか
彼は最後の最後に魔法の言葉をくれた。
「らっこさんはちゃんと幸せになれる人だからね」
その言葉に今でも励まされている。
だからもうネイルに心の拠り所を求めなくてもよくなった。
***
この経験を通して学んだことは、
私が相手に自分の火星(理想の男性像)を押し付けすぎていたということ。
きっと彼は始めから終わりまで何も変わっていなかった。
出会い方に運命を感じてしまったから、
余計に期待が膨らんでしまった部分も大きいと思う。(火星しし座)
本当の彼の姿にバイアスがかかっていたのかもしれない。
それにもっと早く気づくことができれば、
そのままの彼を愛することができたかもしれない。
今も愛され続けていたのかもしれない。
“男性には当たり前のようにこういう風にしてほしい”という欲求が
女性側の火星には込められている。
それから外れると、
違う、そうじゃない、もっとこうして欲しいのにって
勝手にガッカリしてしまう。
「ごめんね」を言いたいのは私の方だった。
彼の火星を一度も褒めたことがなかったかもしれない。
(男性側の火星は、好きな人に認めてもらいたいところ、否定されたくないところ、受け入れて欲しいところ)
あんなにいつも優しい姿を見せてくれていたのに。
占い師になった今の私が
この彼との相性をみると
他はいいのに
「火星」の相性だけがチグハグだった。
ここに改善の余地があったのに。
努力する方向性を何段階も踏み飛ばして
唐突に別れという選択肢を選んでしまった。
だから、このブログを読んでくださっているあなたには
まだ出来ることがあれば小さなことでも試してもらいたい。
何か突破口があるかもしれないから。
あなたの気がつかないところで
あなたは愛されているかもしれないから。
少しでも心当たりのある人には
もしかすると私が学んできた西洋占星術の知識がお役に立てるかもしれません。
よろしければ、こちらの講座案内にも目を通して頂けると嬉しいです。
長い文章を最後まで読んで頂き
本当にありがとうございました。
あなたの恋愛がうまくいきますよう
心より願っております。
浜田らっこ