「ココロノオト」に有安杏果の本気を見た
2017年10月11日、有安杏果のデビューアルバム「ココロノオト」がついに発売されました
ココロノオト【通常盤】
本当に素晴らしいアルバムに仕上がっていて、私もめちゃ聴き込んでおります
さて今回はこのアルバムの感想を書くのですが、
いわゆる楽曲への感想ではなくて、アルバム全体を聴いたり、インタビューを読んだりして感じた事。
普通のレビュー物とは少し違った感じで書こうと思います。
去年の11月7日、有安杏果はLINELIVEにて生配信。
大分で行われる「ココロノセンリツ vol.0.5」で販売するソロコングッズ紹介をしていた。
有安杏果のソロコングッズ大公開でありやす♪大分編
しかしこの時のコメント欄にはグッズに関する事よりも、
「ハムスター」などの未音源化曲をCD化する要望が大量に流れていました。
当時、新曲「小さな勇気」は熊本地震のチャリティーとして配信されるのに、
既に発表されていても配信されない曲がある事に、不満の声を上げる人が多かった記憶があります。
なのでグッズの感想よりも、それらの人の要望で埋め尽くされてしまう始末。
あまりに大量に流れるので杏果本人も拾ってはくれたものの、基本的には笑ってスルーするだけ。
普段はファンの声には出来る限り答えてくれる、彼女としては異例なほどの塩対応。
そんな有安杏果の姿を見ていて私は確信したのです。
「あぁ、彼女はフルアルバムが完成するvol.1の開催まで、音源を出す気がないのだな。」…と。
出来た曲を小出しにするのではなく、シンガーソングライター有安杏果の作品をきちんとした形にしたい。
初めて一般流通で販売する処女作を、寄せ集めのベスト盤のようなものにする気はない。
そんな確固たる信念のような物を感じ取って私は興奮し、
まだ発表もされていない、彼女のオリジナル曲だけで構成されるであろう
「ココロノセンリツvol.1」の開催を想い、期待に胸をふくらませたのでした。
その後、「vol.1」ツアーはやはり彼女のオリジナル楽曲のみで構成され、
様々なサプライズもあり、期待以上の内容にファンも大満足のコンサートとなった。
しかし私の予想に反して、肝心のアルバムの発売はツアー後になってしまう。
仙台、そして武道館の追加公演の前に発売と、一見タイミングが良さそうにも思えるが、
本来ならツアー前に発売して、全曲を深く聴き込んでからコンサートに臨んでもらうのがセオリー。
なにゆえそんな出し惜しみをしたのかと疑問に思っていたのですが、
ここ数日に出回った彼女の単独インタビュー記事を読んで、深くその理由を理解できた気がします。
ももクロ・有安杏果、ソロ活動で「アイドルとしてはできないことをやりたい」
ORICON NEWS
有安杏果(ももいろクローバーZ)「ココロノオト」インタビュー
感情の軌跡詰め込んだ夢の1stソロアルバム (1/3) - 音楽ナタリー
有安杏果に取材。ももクロとは異なる、ソロで見せる大人びた一面
インタビュー : CINRA.NET
とにかく、彼女のレコーディングに対する姿勢が、凄まじいまでに愚直と言えるのです。
楽曲提供者だけではなく、アレンジャーともコミュニケーションをとって曲を作り込み、
出来る限りオケのレコーディングやミキシング作業にまで足を運び、
より自分のイメージ通りの音楽を具現化することに余念がない。
そのこだわり方はとてもアイドルのソロ活動とは思えないレベル。
彼女の職人気質がいかんなく発揮されていたと言えるでしょう。
そしてそれが故に、ツアー開始前にアルバムを出すことは困難だったのではないかなと。
vol.0.5以降は自身の大学卒業という大きなイベントがあり、
ももクロとしての活動においても、春の一大事、青春ツアー、夏の馬鹿騒ぎと、
川上アキラがライブの年と位置づけただけあって、かなりタイトなスケジュール進行だったといえます。
更にココロノセンリツvol.1に向けた楽曲作り、演出などの総合プロデュースも手掛けたのですから、
彼女の望む形のレコーディングスケジュールは取れなかったのではないか。
結果、ツアー後に未完成曲のレコーディングに本腰を入れ、
追加公演前に発売という形になったのではないかと私は考えたのでした。
そして彼女のそれらの"こだわり"は「ココロノオト」というアルバムを、
結果として大傑作として仕上げることに成功している。
音の作りこみという点では、これまでのももクロ作品の中で最高傑作になったと私は思います。
よくももクロの曲はCDが発売されてから、ライブで披露されて初めて完成されると言われます。
実際「AMARANTHUS」「白金の夜明け」の2枚のアルバムと比べると、
後に発売されたBlu-ray&DVDの特典として付いていたライブ音源の方が聴いていてしっくり来る。
私などはアルバムよりも、こちらの特典音源の方ばかり聴くようになりました。
これは会場のライブ感や、バンドとのグルーブ感が伝わって来るからなのはもちろんなのだけど、
やはりももクロのレコーディングは厳しいスケジュールの中で、詰め込まれて作っているからかなと。
メンバーは1人ずつ別々にブースに入って歌を取るし、
バンドのレコーディングも一緒ではなくバラバラで、後から別々に音を足す場合もある。
先に上げたナタリーのインタビューでも語ってる通り、
レコーディングが終わってしばらくしてから、曲の全体像がわかることなども多い。
なのでどうしても彼女達が曲としっかり向き合って理解を深めるのは、
パズルのピースが完全に揃った、ライブで歌いこんでからになってしまうのです。
しかし今回の「ココロノオト」に収録された曲はこれまでとは違います。
有安杏果が自ら1から発案し、楽曲提供者やアレンジャーと意見をすり合わせ、
オケのレコーディングにも立ち会い、場合によってはもう一度それに合わせて歌を取り直す。
その凄まじいまでの作り込みようは、初回限定盤Aのメイキングに収められている、
深夜にも及ぶ制作風景を見れば伝わって来ます。
ココロノオト【初回限定盤A】
なので「ココロノオト」というアルバムは音源化の時点で、
彼女のイメージ通りの完成形が出来上がっていると言えるのでしょう。
彼女の歌を中心としたバンドや打ち込み音の臨場感が本当に素晴らしく、
楽曲への没頭感がこれまでにないレベルに仕上がっているのは、その為だと言えると思います。
その結果、先の「AMARANTHUS」「白金の夜明け」とは逆転した現象が私には起こりました。
このアルバムの初回限定盤Bには、vol.1東名阪ツアーのライブ音源が特典として付いています。
ココロノオト【初回限定盤B】
もちろん私はこちらも手に入れて聴いてはいるのですが、
作り込まれた音源のクオリティーの高さに惹かれ、現在はオリジナルの方ばかりを聴いている状態です。
ライブ音源の生々しさやエモさも確かに魅力ではありますが、
それをも上回る満足度がこのCDには詰まっていると私は感じています。
(特に「遠吠え」「色えんぴつ」などの新曲のクオリティはvol.1よりも高くなっている)
まだまだミュージシャンとして駆け出しの有安杏果ですが、
彼女の愚直なまでの情熱は、参加したスタッフや音楽家たちの心を動かし、
デビューアルバムとは思えないハイクオリティーに仕上げる事が出来た。
シンガーソングライターとして、最高のスタートラインに立てたのではないかと思います。
最後に話は変わりますが、彼女は過去に何度か「自分の声が嫌い」という発言をしています。
確かに少しだみ声気味でハスキーな声を持つ彼女にとっては、
高城れにのような美しいクリアボイスに憧れるというのもわかる気がします。
ただこのアルバムを聴けば聴くほど、彼女の魅力はこの声があってこそだと改めて思いました。
「愛されたくて」では、まるでシャイな少年のような声に聴こえるし、
「裸」ではそのハスキーさが大人っぽい愁いをまとう。
「TRAVEL FANTASISTA」「ヒカリの声」などでは伸びやかでストレートな声が曲に煌めきを与える。
曲によって様々な表情を見せながらも、どれを聴いても有安杏果の特徴ある声なのだ。
売れ線の綺麗な声の持ち主はいくらでもいると思う。
しかし1度聴いただけで誰もが「有安杏果」とわかるようなオンリーワンの声、
これはソロ活動をしていくにあたって、大きな武器になっていくでしょう。
これからも、その愛すべき声が多くの人々に届くよう、応援していきたいと思います。
<おまけ>
レコーディングが終わって、湯上がりみたいに上気した表情がとても素敵
ココロノオト【通常盤】
本当に素晴らしいアルバムに仕上がっていて、私もめちゃ聴き込んでおります
さて今回はこのアルバムの感想を書くのですが、
いわゆる楽曲への感想ではなくて、アルバム全体を聴いたり、インタビューを読んだりして感じた事。
普通のレビュー物とは少し違った感じで書こうと思います。
去年の11月7日、有安杏果はLINELIVEにて生配信。
大分で行われる「ココロノセンリツ vol.0.5」で販売するソロコングッズ紹介をしていた。
しかしこの時のコメント欄にはグッズに関する事よりも、
「ハムスター」などの未音源化曲をCD化する要望が大量に流れていました。
当時、新曲「小さな勇気」は熊本地震のチャリティーとして配信されるのに、
既に発表されていても配信されない曲がある事に、不満の声を上げる人が多かった記憶があります。
なのでグッズの感想よりも、それらの人の要望で埋め尽くされてしまう始末。
あまりに大量に流れるので杏果本人も拾ってはくれたものの、基本的には笑ってスルーするだけ。
普段はファンの声には出来る限り答えてくれる、彼女としては異例なほどの塩対応。
そんな有安杏果の姿を見ていて私は確信したのです。
「あぁ、彼女はフルアルバムが完成するvol.1の開催まで、音源を出す気がないのだな。」…と。
出来た曲を小出しにするのではなく、シンガーソングライター有安杏果の作品をきちんとした形にしたい。
初めて一般流通で販売する処女作を、寄せ集めのベスト盤のようなものにする気はない。
そんな確固たる信念のような物を感じ取って私は興奮し、
まだ発表もされていない、彼女のオリジナル曲だけで構成されるであろう
「ココロノセンリツvol.1」の開催を想い、期待に胸をふくらませたのでした。
その後、「vol.1」ツアーはやはり彼女のオリジナル楽曲のみで構成され、
様々なサプライズもあり、期待以上の内容にファンも大満足のコンサートとなった。
しかし私の予想に反して、肝心のアルバムの発売はツアー後になってしまう。
仙台、そして武道館の追加公演の前に発売と、一見タイミングが良さそうにも思えるが、
本来ならツアー前に発売して、全曲を深く聴き込んでからコンサートに臨んでもらうのがセオリー。
なにゆえそんな出し惜しみをしたのかと疑問に思っていたのですが、
ここ数日に出回った彼女の単独インタビュー記事を読んで、深くその理由を理解できた気がします。
ももクロ・有安杏果、ソロ活動で「アイドルとしてはできないことをやりたい」
ORICON NEWS
有安杏果(ももいろクローバーZ)「ココロノオト」インタビュー
感情の軌跡詰め込んだ夢の1stソロアルバム (1/3) - 音楽ナタリー
有安杏果に取材。ももクロとは異なる、ソロで見せる大人びた一面
インタビュー : CINRA.NET
とにかく、彼女のレコーディングに対する姿勢が、凄まじいまでに愚直と言えるのです。
楽曲提供者だけではなく、アレンジャーともコミュニケーションをとって曲を作り込み、
出来る限りオケのレコーディングやミキシング作業にまで足を運び、
より自分のイメージ通りの音楽を具現化することに余念がない。
そのこだわり方はとてもアイドルのソロ活動とは思えないレベル。
彼女の職人気質がいかんなく発揮されていたと言えるでしょう。
そしてそれが故に、ツアー開始前にアルバムを出すことは困難だったのではないかなと。
vol.0.5以降は自身の大学卒業という大きなイベントがあり、
ももクロとしての活動においても、春の一大事、青春ツアー、夏の馬鹿騒ぎと、
川上アキラがライブの年と位置づけただけあって、かなりタイトなスケジュール進行だったといえます。
更にココロノセンリツvol.1に向けた楽曲作り、演出などの総合プロデュースも手掛けたのですから、
彼女の望む形のレコーディングスケジュールは取れなかったのではないか。
結果、ツアー後に未完成曲のレコーディングに本腰を入れ、
追加公演前に発売という形になったのではないかと私は考えたのでした。
そして彼女のそれらの"こだわり"は「ココロノオト」というアルバムを、
結果として大傑作として仕上げることに成功している。
音の作りこみという点では、これまでのももクロ作品の中で最高傑作になったと私は思います。
よくももクロの曲はCDが発売されてから、ライブで披露されて初めて完成されると言われます。
実際「AMARANTHUS」「白金の夜明け」の2枚のアルバムと比べると、
後に発売されたBlu-ray&DVDの特典として付いていたライブ音源の方が聴いていてしっくり来る。
私などはアルバムよりも、こちらの特典音源の方ばかり聴くようになりました。
これは会場のライブ感や、バンドとのグルーブ感が伝わって来るからなのはもちろんなのだけど、
やはりももクロのレコーディングは厳しいスケジュールの中で、詰め込まれて作っているからかなと。
メンバーは1人ずつ別々にブースに入って歌を取るし、
バンドのレコーディングも一緒ではなくバラバラで、後から別々に音を足す場合もある。
先に上げたナタリーのインタビューでも語ってる通り、
レコーディングが終わってしばらくしてから、曲の全体像がわかることなども多い。
なのでどうしても彼女達が曲としっかり向き合って理解を深めるのは、
パズルのピースが完全に揃った、ライブで歌いこんでからになってしまうのです。
しかし今回の「ココロノオト」に収録された曲はこれまでとは違います。
有安杏果が自ら1から発案し、楽曲提供者やアレンジャーと意見をすり合わせ、
オケのレコーディングにも立ち会い、場合によってはもう一度それに合わせて歌を取り直す。
その凄まじいまでの作り込みようは、初回限定盤Aのメイキングに収められている、
深夜にも及ぶ制作風景を見れば伝わって来ます。
ココロノオト【初回限定盤A】
なので「ココロノオト」というアルバムは音源化の時点で、
彼女のイメージ通りの完成形が出来上がっていると言えるのでしょう。
彼女の歌を中心としたバンドや打ち込み音の臨場感が本当に素晴らしく、
楽曲への没頭感がこれまでにないレベルに仕上がっているのは、その為だと言えると思います。
その結果、先の「AMARANTHUS」「白金の夜明け」とは逆転した現象が私には起こりました。
このアルバムの初回限定盤Bには、vol.1東名阪ツアーのライブ音源が特典として付いています。
ココロノオト【初回限定盤B】
もちろん私はこちらも手に入れて聴いてはいるのですが、
作り込まれた音源のクオリティーの高さに惹かれ、現在はオリジナルの方ばかりを聴いている状態です。
ライブ音源の生々しさやエモさも確かに魅力ではありますが、
それをも上回る満足度がこのCDには詰まっていると私は感じています。
(特に「遠吠え」「色えんぴつ」などの新曲のクオリティはvol.1よりも高くなっている)
まだまだミュージシャンとして駆け出しの有安杏果ですが、
彼女の愚直なまでの情熱は、参加したスタッフや音楽家たちの心を動かし、
デビューアルバムとは思えないハイクオリティーに仕上げる事が出来た。
シンガーソングライターとして、最高のスタートラインに立てたのではないかと思います。
最後に話は変わりますが、彼女は過去に何度か「自分の声が嫌い」という発言をしています。
確かに少しだみ声気味でハスキーな声を持つ彼女にとっては、
高城れにのような美しいクリアボイスに憧れるというのもわかる気がします。
ただこのアルバムを聴けば聴くほど、彼女の魅力はこの声があってこそだと改めて思いました。
「愛されたくて」では、まるでシャイな少年のような声に聴こえるし、
「裸」ではそのハスキーさが大人っぽい愁いをまとう。
「TRAVEL FANTASISTA」「ヒカリの声」などでは伸びやかでストレートな声が曲に煌めきを与える。
曲によって様々な表情を見せながらも、どれを聴いても有安杏果の特徴ある声なのだ。
売れ線の綺麗な声の持ち主はいくらでもいると思う。
しかし1度聴いただけで誰もが「有安杏果」とわかるようなオンリーワンの声、
これはソロ活動をしていくにあたって、大きな武器になっていくでしょう。
これからも、その愛すべき声が多くの人々に届くよう、応援していきたいと思います。
<おまけ>
レコーディングが終わって、湯上がりみたいに上気した表情がとても素敵