第二章 友達の絆 144 | Beyond Despair

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「うかつだったぜ……口が軽いってのはオレみてーな奴の事か」

エレナの前で自分が暗闇でなら無敵と言ってしまった事に今更後悔する。

失言ではない、むしろグリードにとって暗闇でなら無敵と言うのは相手を恐怖させるものなのだ。

普通の、相手になら、の場合だが。

「まさかな……今の世の中の魔術ってのは、こんな大芸も出来ちまうのか?」

「いいえ、普通はこんな事出来ないわよ。何故か知らないけどね、私の魔術って魔術基準を大きく凌駕してるらしいのよね。だから、これは私のオリジナル」

「オリジナル……これを使える奴はそうは居ねぇ訳か」

「そうね、私と姉さん、それと師匠くらいかな」

予想をはるかに上回る愛花の魔術にグリードは絶句する。

ライトと同様、彼も魔術を甘く見ていたのだ。

が、驚いているのはグリードだけではない。

ここに居る誰もが愛花の大魔術に言葉を失っていた。

そんな中、一つの人影がグリードににじり寄る。

「覚悟は良いな……吸血鬼」

ライトはいつの間にか作り出したグレートソードをグリードに突きつけた。

「明るい所では弱体化するのが吸血鬼だろ赤毛犬。しかし残念、褒めてはやるよ魔術師の嬢ちゃん……だがなぁ、明かりがあるからオレ様が弱体化すると思ってんなら、大間違いなんだよなぁあ!?」

と、素早く蛇腹剣を元に戻すとグリードはライトに向かって一気に間合いを詰める。

左手で握っている蛇腹剣でグリードはライトの右腕に斬りかかる。

右腕を落とせば、ライトは戦力を失うと考えたのだ。

ライトはそんなグリードの攻撃をかわそうとする素振りを一切見せない。

いや、見せないのではない、かわす気が無いのだ。

グリードはそんなライトに構わず、彼女の右腕に蛇腹剣を振り下ろす。

瞬間……目の前に血飛沫が上がる。

飛沫を上げているのはグリードではない。

間違いなく、目の前にいるライトからだった。

彼女はグリードが振り下ろす蛇腹剣を右手に持つグレートソードではなく、空いている左手で防いだのだ。

真っ赤な血が彼女の皮で出来た手袋を滲ませる。

と、唐突にライトは左手で掴む蛇腹剣を強引に引き寄せる。

その衝撃でグリードの額がライトの額にガツンと音をたてながらぶつかった。

「ッ!? テメー、何しやが――」

る、と続けようとするグリードの顔が真っ青になる。

本来なら痛みで顔を歪めていてもおかしくはないはず。

にも関わらず、目の前にいる少女はグリードを睨みながら口元をニヤりと嬉しそうに歪ませているのだ。



/続く




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