「乗りたまえ」
顔をこちらに向けるなりエリックはそう私に言う。
何も返事はせず、私は車に乗り込んだ。
「んじゃ大佐、また後で」
バリー中尉は軽い口調でエリックに敬礼する。
「あぁ、ではな」
エリックはそう私に微笑みながらドアを閉めた。
それと同時にバリー中尉がアクセルのペダルを踏み、車が走り出す。
「ここから学院までどのくらいかかるんだ?」
運転席に座る男に私は質問を投げかけた。
「んー、十分で着いちまうと思うぞ?」
「十分か」
外の景色を見ながらそう呟く。
歩道を歩く親子、学生、子供、そんな奴らの日常を呆然と見つめる。
と、信号が赤に変わったのか車が停車した。
横断歩道を何人もの人々が歩いていく。
そんな中。
横断歩道の突き当たりで泣き叫ぶ小さな男の子。
その子の側には十五歳辺りのお姉ちゃん。
姉弟、だろうか。
〝良いな……〟
泣いている弟を必死に宥めるお姉ちゃん。
そういえば、私もよく泣いているライアンをあんたふうに宥めていたっけ。
今では遠い過去の記憶だけど、それでも昨日の事の様に思い出される。
ああいう時は抱きしめてあげるのが一番なんだけどな。
するとお姉ちゃんは背負っていたリュックサックから何かを取り出した。
飴玉だ。
その飴玉を見た弟はすぐに泣き止んだ。
そして美味しそうに飴玉を食べる。
〝お姉ちゃんが買ってきてくれたの?〟
〝そうだぞ。毎日ライアンは頑張ってるからな、ご褒美だ〟
〝わぁ~、ありがとうお姉ちゃん!〟
気が付けば、視界がぼやけていた。
目に溜まった涙を拭う。
瞬間、赤だった信号が青に変わる。
そして何台もの車が走り出した。
私は視線をバックミラーに向ける。
そこには先程の姉弟が仲良く手を繋いで歩いている姿が映し出されていた。
その姿を見た瞬間、左目から涙が流れた。
/続く