「司令部に戻ってくれ」
私が車に乗るなり、エリックは運転士にそう告げた。
かしこまりました、と運転士は車を出す。
エリックは私に向き直り、口元を歪ませた。
私はただ黙り、目の前の男を睨みつける。
「警戒するのは結構だが、車の中くらいフードは取ったらどうだね?」
エリックは私の顔を見ながらそう言った。
「それとも、車内でもフードを被らないといけない理由でもあるのかな?」
別に、フードを被っている事に理由なんてない。
ただ、周りの奴らに顔を見られたく無かっただけだ。
私は何も言わずにフードを剥いだ。
「これで満足か、大佐殿」
嫌味たらしくそう言ってやった。
「ほぉ……麗しいお嬢さんだな」
エリックは微笑みながらそう呟いた。
麗しい、普通の女ならそう言われると嬉しいのだろう。
だが私はそんな事では喜びなんて感じない。
いや、正確には感じなくなってしまったのか。
「褒めているつもりか?」
私は外の景色を眺めながら呟いた。
「おや、お気に召さなかったかな」
そう言いながらエリックは笑った。
何がそんなに面白いのか。
私はエリックの顔に視線を向ける。
「で、本当にやらせてくれるんだな?」
「あぁ、君の望み通りにしよう。アメリカでは、あの化け物に関する情報は少なかったろう」
「少ないと言うより、情報なんて無いに等しいよ」
「まぁ仕方あるまい。今のアメリカの状態は、ほぼ崩壊していると言って良い」
そう、アメリカだけじゃない。
今や世界全体が崩壊の危機に晒されている。
突然、何の前触れもなく現れた謎の化け物達によって。
/続く