『ブルーノ、平気か?しっかりしろ!』

敵機士の声を聞きながら、イアンは再び機体を起こした。
背後から迫ってきていたもう一機はイアンの脇を通り抜けて仲間の
そばに戻っており、今はイアンの目の前に三機が固まっている。

いずれも動かなくなった自分たちの仲間と、
イアンの機体を交互に見る素振りを示していた。

仲間を潰されたことで、敵意が増しているように思える。
数が一機少なくなったにもかかわらず、イアンの気持ちが楽になることはなかった。

むしろますます窮地に追い詰められた気さえした。

同じ手がもう一度通用するとはとても思えなかったからだ。
相手がそんな隙を見せるはずがない。
ただでさえ限られた選択肢が、またひとつ消えてしまった気がした。

だとすればどうするか?
考えても相変わらず明確な答えは出ないままだった。

『おのれ!よくもブルーノを!』

一機が足を踏み出し、近づいてこようとする。
イアンの背後から別の声が聞こえてきたのはそのときだった。

『ファウラー閣下、あれを』

『何と!ひ、姫様!』

イアンは声のしたほうを振り向いた。
木々の間から、リュクサリア王国軍の機巧鎧が次々と姿を現すのが目に入った。