イアンは体を落としながら、つかんできた相手の腕を逆に取って
自分のほうに引き寄せるのと同時に、無事な方にの足を胴体に当て、
力の限り蹴り上げた。

弾みについていた敵の機体が思い切り浮き上がる。

『何っ!』

その機巧鎧は投げたイアンが驚くほどの距離を飛び、
前方にいた二機の間をも抜け、頭から地面に突っ込んだ。

装甲のひしゃげる鈍い音が響き、仰向けになった状態で
そのまま動かなくなる。

イアンは地面に伸びた敵の機巧鎧を見、呆然となった。
相手の勢いをたmたまうまく利用したとはいえ、まさかこうも飛ぶとは思わなかったからだ。

考えた上での行動ではない。
今度は想像さえしている暇はなかった。

敵機が迫ってきたのに対し、反射的に取った対応の結果だった。

あの少女は敵機の下敷きにならなかっただろうか?

イアンは投げ飛ばした機巧鎧の周囲に少女がいないかどうか、
目で探した。

少なくとも視界内には見当たらないことを確認し、
ひとまず安堵する。