「何だ……?」

イアンは縁にかけた手を支えにして飛び上がり、上体を操縦席の中へ突っ込ませると、片手を伸ばして転がっていたものをつかみ取った。

ペンダントだった。小鳥の卵程度の大きさの角ばった形の石に、金属製の鎖がくくり付けられている。

あの子の持ち物だろうか?

イアンはペンダントの石を握り締めながら、地面に降りた。

複数の機巧鎧の稼働音が耳にはいってきたのは、そのときだった。

イアンははっとなって、音のしたほうに顔を向けた。

夜陰と、密生する木立に紛れて数ははっきりしないが、オルガンド軍のものとおぼしき機巧鎧が数機、こちらへ向かって進んでくるのが目に入った。

『落ちたのはこのあたりのはずだ。探せ』

『はっ』

機士同士が交わす会話の内容も、漏れ聞こえてくる。

イアンは急いで少女の下へ戻った。どうやらまだ、目を覚ましていないようだった。

この子が追われているのか……?

おそらくそうだろう。イアンは少女が助けて、といった意味がわかった気がした。そして少女がリュクサリア王国軍に属する立場であることと、何らかの事情によりたった一機で敵に追われる羽目になったのだということをも、同時に把握した。

イアンはあわてて周囲を見渡した。こうしている間にも、敵はじわじわと距離を詰めてくる。木立ちをかき分け、下生えを踏みしめる音が次第に大きくなってきた。