少女の乗っていた機巧鎧は、まるで人間がそのまま大きくなってその場にいるかのような、自然なたたずまいを見せていた。過度の装甲で覆われたりしていない分、機巧鎧が本来備えている基本的な姿形が表に現れているのかもしれない。軽装ではあっても弱々しい感じはまるでしなかった。むしろ無駄な要素を一切省いたがゆえの、あたかも抜き身の刃物がそこにあるかのような研ぎ澄まされた迫力が、内からにじみ出ているように感じられた。

頭部が流線型をしているせいか、人間以外に例えるなら鳥、それも剽悍な猛禽類を連想させる。

イアンの目の高さの位置に操縦席があり、両開きの扉が開け放たれたままになっていた。彼は縁のところに手をかけ、中を覗き込んだ。

操縦席の中は大人ひとりがある程度ゆとりを持って入れるだけの広さがあった。左右の壁に穴が開いており、そこから棒のようなものの先端が覗いている。おそらく穴の中に手を差し込み、棒を手で握って操縦するのだろう。椅子はなかったが、背中の当たる部分が、寄りかかって楽に体重を預けられそうな形状になっていた。

イアンは目線を下のほうへ向けた。左右の足を別々に乗せるようになっている、金属製の踏み板があるのが目にはいる。

ふと、その踏み板と踏み板の間に何かが転がっていることに、かれは気がついた。