イアンは機体のそばへと近づいていき、真下からその姿を見上げた。

その機巧鎧は、月の光を全身に浴びて、イアンを見下ろす格好になっていた。今まで見たことない型だった。

これまで頻繁に目にしてきたリュクサリア王国軍の機体と、先ほど遭遇したばかりのオルガンド軍の機体、そのどちらにも似てない気がした。

それほど大きくないのだな、とイアンは改めて見て思った。比較する対象がこの場にいないのではっきりしたことはわからないが、主人のアルバートが乗っていた機体はこれよりひとまわり大きかった気がする。もっともそれは、目の前の機巧鎧の全身の形象から、イアンがそのような印象を受けただけなのかもしれない。

アルバートの機体にしてもそうだったが、リュクサリア王国軍の機士たちが乗っている機巧鎧の多くは、肩や操縦席のまわりを分厚い装甲で覆った、見るからに重厚そうな外見をしたものが多かった。それらの機巧鎧を見て、イアンはよく、巨大な甲虫を連想したものだ。

しかし、今目の前にある機巧鎧から、そういった印象はまるで感じられない。機巧鎧というのは人間の着用する甲冑をそのまま大きくしたようなものだと、以前アルバートが誰かと話しているのを聞いたことがあるが、目の前の機体を見ていると、その言葉がなるほどと頷ける気がした。