王綱の機巧鎧エシュリオン２８

イアンの心の中が疑問符で満たされる。

どうしてこんな女の子が、アームネインに乗っているのだろう？

そんなことを思いながら少女の顔を見つめていると、その両目がうっすらと開いた。

再び、イアンと少女の視線が合う。

以前にどこかで会っていただろうか？

イアンは懸命に自分の記憶を探った。初めて顔を合わせた瞬間に向けられた、少女の親しみのこもった表情から、知っている人だろうかとも一瞬考えたが、まったく覚えはなかった。

少女が片方の手をゆっくりと持ち上げ、イアンに向かって伸ばしてきた。その指先がイアンの胸元に軽く触れた瞬間、彼の心臓が跳ねた。

「あ……」

少女はイアンを見つめながら口を開き、かすれる声で言葉を紡いだ。

「……けて……」

「え？」

イアンは聞き返したが、少女はそれだけを言い終えると、再び目を閉じてしまった。彼の胸元に当てられていた指先も、力を失って下へ落ちる。

はっきり聞き取ることができたのは終わりのほうだけだったが、口の動きで、イアンは少女が何といったのかがわかった。

助けて。

確かにそういっていた。