一機の白いアームネインが自分のいる方向に向かい、猛烈な勢いで斜面を滑り落ちてくるのを、イアンは呆然と見つめていた。

あれからひたすら走り続け、敵味方を問わず周囲に誰の姿も見えなくなったことを確認し、ようやく人心地がついた気になった矢先のことだった。

アームネインは斜面に生えている木にぶつかり、小刻みに進む方向を変えながら、イアンの立っているすぐ目の前まで落ちてきて、止まった。

逃げようとする間さえ与えれない、あっという間の出来事だった。

目の前に落ちてきたアームネインが再び動き出すのを見ても、イアンはまだ立ち尽くしたままだった。唐突な事態の発生に戸惑い、アームネインが上体を起こすまでの一部始終を、食い入るように見つめていた。

片膝をつく体勢となったアームネインが、イアンのほうに向き直る。イアンとアームネインの目が合った。
アームネインの胴体にある扉が開き、操縦者が姿を現した。

随分と小柄だな、と思ったイアンだったが、すぐにその理由がわかった。

中にいたのは長い金髪の美しい少女だった。

その少女は、扉を開くなり身を乗り出し、まっすぐな視線をイアンに向けてきた。

その瞬間、イアンの心臓が大きく鼓動を打った。

彼の目は少女と、アームネインとに、釘付けになった。月の光に包まれて、少女とアームネインは柔らかな輝きを全身から放っていた。光が粒子となって、彼女たちに降り注いでいのようだった。