『足が止まった。このまま包囲しろ』

『了解』

敵機士の声が聞こえた。四機のアームネインは、剣や鉾槍など手持ちの武器を構え、エシュリオンに迫ってくる。

フランシスカは敵の放つむき出しの殺気が、自分の身に吹きつけてくるのを感じた。

「こんな……」

声を出そうとしたものの、喉がひりついてすぐに出てこない。

「……こんなところで、負けるわけにはいかないわ!」

フランシスカは操縦席の中で懸命に声を張り上げた。敵に向けて発したというよりも、むしろ臆しそうになる自分への叱咤だった。

彼女は再び機体を立ち上がらせた。

大丈夫、エシュリオンの加速力なら必ず振り切れる。目くらましや飛び道具を使ってくることも、そうとわかっていれば対処のしようはある。もう一度。もう一度だ。

だがエシュリオンが機体を翻し、再び走り出そうと腰を落としかけたその瞬間、激しい亀裂音が聞こえて、右足ががくん、と大きく沈み込んだ。たちまち平衡が損なわれ、機体が大きくよろけてしまう。すぐに体制を立て直すべく、フランシスカは操縦席の中で右足に力をこめたが、機体の動きに変化はなかった。何度も何度も、蹴りつけるように自分の足の動きを機体に伝える。それでもまったく反応はない。

エシュリオンは傍らに生えていた木をつかみ、かろうじて体を支えた。

「まさか……」

フランシスカの脳裏に、最悪の仮定が思い浮かぶ。

エシュリオンの足が壊れてしまった。