夏の抜け殻 | DANKOROのブログ

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音楽、神社仏閣、お酒、美味しいごはんなんでも書いてます。

ギター演奏も、たまにアップします。

ロードバイク初心者です。

夏の抜け殻
見つけたよ。

金木犀の花が咲き出したね。
ねえ、
けんちゃん



けんちゃんと僕の
夏の抜け殻


学校裏の大きな公園で、
けんちゃんとキャッチボールをしていた。

けんちゃんがキャッチャー。
僕がピッチャー。

子供のくせに、
誰よりも速い球を投げたくて、
思いっきり腕を振った。

ボールは、けんちゃんの頭の上を越えて、
秋になるととても良い匂いのする
木々の向こうへ消えていった。

「ごめん、けんちゃん」

そう言いながら待っていると、
しばらくして、けんちゃんが戻ってきた。

手には、ボールと――
一匹の蝉の抜け殻。

「よっちゃん……」

そう言って笑いながら、

「蝉の抜け殻だよ」

あの時の笑顔が、
今でも心のどこかに残っている。

あれから、ずいぶん長い時間が流れた。

蝉の声は遠い記憶になり、
あの公園にも、
きっと秋の風が吹いている。

木々の葉が一枚、また一枚と落ちるたび、
過ぎてしまった季節を思う。

そして、ふと思うんだ。

あの抜け殻は、
夏を置いていったんじゃない。

あの夏を、
僕の心に残していったんだと。

けんちゃんは今、
雲の上。

もう一緒にキャッチボールをすることはできないけれど

秋の風が頬を撫でるたび、
あの日の笑顔が、
木漏れ日の向こうから
ひょっこり現れる。

「よっちゃん、元気か?」

そんな声が、
聞こえてくるような気がする。

空を見上げる。

高い秋の空に、
ひとつだけ白い雲。

僕は小さく笑って呟く。

「けんちゃん……
あの夏の抜け殻、
今でもちゃんと、持ってるよ。」

胸の奥で、
あの日の夏が、
静かに鳴いた。


笑門来福
ダンコロ