すると目地すら無かった鉄製の壁に四角い線ができ、囲われた部分が機械音とともに動き出す。

「「おっ!?おお!!??」」

 見たこともない未来世界のような光景に驚きを隠せない環奈と黒川。
 そして、出てきたのはロッカーのような形をした白いボックスの上部、ガラス張りの部分に目をやると人間らしき形が見えた。

「これが要様のDNAより生まれた新しい身体でございます。とくとご覧になってくださいませ」

 誘導された二人がボックスに近づき覗き込む。そこには、プロメテウスと初対面した時と同様に素っ裸の少年が眠っていた。

「写真でしか拝見したことはないのですが顔はしっかり覚えてますよ。どう見ても要様のお若い頃の姿ですな...」

「へぇ...そぉなんだぁ。ふぅ~ん、要様って若い頃は意外にイケメンだったんだねぇ」

「...環奈さん、若い娘が下の方を直視しながらそういうことを言うのはおやめなさい。このお方は新しい我らのご主人様ですぞ」

「あらぁ、宗ちゃんも歳の割りにケチくさいことを言うわねぇ。減る物でもないしこういう機会は滅多にないことだから別に良いんじゃない?」

「なりません」

「仕方ないわねぇ、わかったよぉ」

 二人がコントのようなやり取りをしているあいだにプロメテウスが保存機体の方へ移動し、機体の足部にある分電盤のような作りをした部分を操作しながら口を開く。

「お二人ともご見学の方はそろそろよろしいでしょうか?これより要様の脳の情報転送を始めます」

 二人が保存機体に浮かぶ桐生要の頭部に目をやると、何やら機械でできた触手がウヨウヨと出現し、頭部の上半分を覆い尽くしていった。

「これは...ものものしいですな...」

「ほんと、こりゃまるでSF映画の世界だねぇ」

 操作を終えたプロメテウスが二人の元へと歩み寄る。
 
「先ほども申し上げましたがこれで数日中には情報転送を完了し、新しい身体を使って生まれ変わった要様と対面することが可能となります」

「死んだ要様とまた会えるってなんだか不思議な感じだね」

「確かに...しかし楽しみですなぁ。生まれ変わったご主人様と会えるのは...」

 嬉しくて感極まった様子の二人。

 環奈と黒川が桐生要に持つ感情や想いはそれぞれあれど、突然現れた侵入者から主人を守れなかったという悔しさと、桐生要という人物を失った悲しさはほぼ同じだったのかも知れない。

「私は少し上の様子を見て参ります。このシェルターは個室や浴室なども完備されておりますので、お二人ともお疲れでしょうからごゆっくりなさってください」