元・X(現:X-JAPAN)のTAIJIさんが亡くなった。
本当なら、物凄いショックなはずなのに不思議と落ち込んでいない。
携帯のニュースで、「TAIJI逮捕、自殺未遂」の記事を見たとき、「助からないだろうな。。」と正直、思った。
不謹慎かもしれないが、「ラクになって欲しい。」とまで思ってしまった。
僕らの世代で、Xを意識して影響を受けなかったヤツなんかいないだろう。よく「嫌いだから。」と言って否定する人間もいるが、そう判断した時点で影響を受けていると僕は考える。だって、本当に影響を受けてないなら無意識に通り過ぎるはずだし、何よりも「嫌い」なんて敵意のある言葉ではなく「別に、どうでもいいよ。」と答えればいいはずだ。しかし、「嫌い。」と言うことは、その音楽や活動を見てきて「ああいう音楽は作りたくない。」、「あんなプレイはしたくない。」などど思ったから言えるんだ。それは、反面教師的な意味合いで影響を受けていると僕は思う。
それはXだけに言えることじゃない。影響力のありすぎる人間は皆に言えること。
さっきから<JAPAN>の文字を入れないが、僕はX時代のファンだ。JAPANになってからは、あまり聴いていない。CDは全部持っているし、ライブにも行ったがX時代のような<圧倒的な>存在感とプレイを感じなかった。
X時代と、JAPANの大きな違いはTAIJIさんの在籍時・脱退後と区別できる。
Xは、メンバーそれぞれが十分なカリスマ性と創作性を持っていたと思う。Xの存在から日本人に<ドラム>とい
う楽器をメジャーなものに変えたし、スラッシュ・メタルというアンダーグランドなジャンルを日本でポピュラーなものに変えたのは、誰もが認めるものだと思う。それくらい存在が衝撃的だった。
その中でも、TAIJIさんはテクニックは勿論、楽曲・ルックスの良さ、何よりもセンスがピカイチ良かった。
僕は、Xのナンバーの中で特に好きなのが<EASY FIGHT RAMBLING>という曲。<紅>、<WEEK END>などのメジャー曲が多く収録されているアルバム<BLUE BLOOD>の中では、意外と地味な楽曲だが、この楽曲は本当に素晴らしい秀作。
この曲を始めて聴いたときから一発で惚れた。シャッフルのドラムを追いかけるようにTAIJIさんのベースが走り出す辺り、鳥肌ものだ。
BLUE BLOODは、物凄いインパクトのあるアルバムだが、音は良くない。インディーズの<VANISHING VISION>の方が音が良かった。しかし<EASY~>では、この音の悪さがライブ感があって実に心地よい。そして<一発録り感>があってカッコイイ。そして冴えてる!
この曲、バンドでコピーしようとしたことがあるのだがギターはそれほど難しくはないのだがリズム隊がギブアップした為に出来なかった。まぁ、当時は高校生でキャリアもほとんどなかったメンバーだったから仕方ないと言えば仕方ないけど。
以前も書いたが、ギターなどを志した人間は必ずと言っていいほど若いうちはフィーリングではなくテクニックに走るものだ。一発入魂!というよりも<より高度に>・<より速く>とペキペキとピッキングに勤しむ。ライトハンドやタッピングなどのトリッキーな技にも走る。当然、僕も走ったクチである。
そのときの目標となる存在が、Xか聖飢魔Ⅱだった。この2バンドには2人ギタリストがいて当然○○派のような感じで人気を2分していた。僕は奇抜でパフォーマーなHIDEさんよりもザ・ギタリスト的な佇まいをしていたPATAさんと、速弾きでハードロッカーなルーク参謀より、インテリなアプローチをしていたエース長官のファンだった。もちろん、現在でも大ファンだ。
でも、TAIJIさんのベースは物凄く好きだった。特に<Sadistic Desire>のベースなんて神々しさすら感じるほどだった。
そして2ndの<JEALOUSY>。このアルバムにはすっかりノックダウンされた。楽曲の良さは勿論だが、前作にはなかったバンドとしてのバランスが均等であり音もよかった。
全曲素晴らしいが、やはりインパクトがあったのは<Voiceless Screaming>だ。「何て美しい曲だろう。」と思った。
「あれ?Xのメンバーってこんなにアルペジオ巧かったっけ?」なんて生意気にも思ったが、後にこれはTAIJIさんが弾いていると聞いたときは、ギターテクニックに驚いた。ベースも神ががりなのにギターテクもこれほどとは!「反則だ!」と思ったものだ。
TAIJIさんは、このアルバムでは<Desperate Angel>というハードなアメリカンロックなタイプの曲も書いている。この二面性が物凄い魅力的だった。YOSHKIさんの楽曲の二面性とは全く異なる繊細さがあった。
このアルバムを聴いたあと、僕は<破滅にむかって>という東京ドーム3DAYSのライブを観にいった。僕は行ったのは初日。本当なら最終日!と思うのだが、あんなにハードなプレイをするのだ。絶対に最終日にはボロボロになって気合いで乗り切るようなプレイになるはずだ。と思い、同じ気合いを感じるなら初日のほうがボロボロではないだろうし、プレイもいいだろうと判断して初日を選んだ。
初めて行ったXのライブは、圧倒されっぱなしだった。何よりもファンのパワーがすごかった!
もう声援なんて、驚くほど「何言っているのか、解らなかった!」、もう<叫び>だった。ライブには、当時のバンドメンバーだったトクと出かけて、「心から愛してるよ~、YOSHIKI~!」なんて叫んでいる女性の前で、僕らは負けじと「石塚せんぱ~い!」なんて叫んでた。
そしてPATAさんと、TAIJIさんの2人で<Voiceless~>がプレイされると、僕はジーンとしてしまって少しチビッた。隣のトクを見ると、トクは泣いてた。
2日目・最終日は後に雑誌のレポートなどで知ったが、TAIJIさんがこの3DAYS終了後に脱退したことがショックだった。
しかし、そのあとすぐにTAIJIさんがラウドネス加入のニュースを聞いて、またまたビックリした。あのラウドネスかよ!なんて興奮したのを覚えている。ずっと憧れてたバンドに加入するなんて、僕で言うならチェッカーズに加入するということと、置き換えると、物凄いファンタスティックなニュースだった。
もちろん、加入後のアルバムも購入して聴いた。へヴィネスな感じでよかったが、何か自分の中ではハマらなかった。
それから、あっという間に脱退して<D.T.R>を結成した。Xのようなスラッシュメタルではなく、ラウドネスのような重厚感もなくカラっと乾いた感じのへヴィーなアメリカンロックなサウンドが、心地よかった。
その後、アコースティックなミニ・アルバムで<Voiceless~>のアンサーソングのような楽曲を聴いたとき、少しガッカリした。あれほどの完成度の高い曲を汚してしまっているような感じがしたのだ。これから<Voiceless~>を聴くたびに、この曲をセットで思い出してしまうことがイヤだった。
このあと、脱退して新たなバンドを結成し、また脱退。と繰り返すようになる。
TAIJIさんは日本での活動、日本人のメンバーよりも海外に進出して海外のメンバーと活動した方がよかったのではないのか?と、ずっと思っていた。
それからは、TAIJIさんについては<いいニュース>を聞かなくなってた。ホームレスみたいな生活をしてたことや、病気で変貌してしまったルックス、太ったかと思えばガリガリに痩せてたりと実に痛々しかった。
そんな姿を見ていると、「この人は長くないかもしれないな。」と不謹慎だが思ってしまった。
そして、新しいバンドの活動なんかのニュースや動画を観てると少しずつだが希望が見えてた。
そんな矢先の、今回のニュースだ。
「とうとう、きたか。」と思った。
本当なら、「生きて欲しかった。」と思うだろう。僕も本当ならそう思いたかった。
しかし、「いろいろな苦しみから解放してほしい。」という気持ちのほうが強かった。
もし助かっていれば、僕らはもっともっと素晴らしい音楽を聴けたかもしれない。凄いニュースを聞けたかもしれない。どんなに苦しくても死んだらオシマイだということも解っている。
でも、僕はそうは思えなかった。。