『水晶林地』

雷桜は、物資を携えて、急いで水晶林地へと向かった。

辺りには、何人もの重症の兵士たちがいる。

指揮官であろう兵士を見つけると、急いで声をかけた。

あなたは?

 

雷桜は、ここに来た理由を伝えた。

するとルエルは安心したように息をつき、笑顔を浮かべた

そう、クリアから派遣されてきたのね。

それにわざわざ補給物資まで・・・。

確か・・・雷桜と言ったわね。本当にありがとう。

あなたはルエルに、自分がメルを探していることについて説明した。

なるほど・・・まさかそんなことが起きていたとはね・・・。

連れ去ったのがシュウの可能性がある・・・か。

シュウと私は旧知の仲なのよ。

過去にあんなことが起きなければ、きっと今も家族四人で仲良く過ごせていたはずよ・・・。

雷桜は、ルエルに過去について尋ねた。

メルにはね、アイリという名前の妹がいたのよ。

でもある時、シュウ一家は水晶林地でニドルスと遭遇してしまったの。

ニドルスは両目が全然見えないのだけど、その代わり聴覚がかなり優れているのよ。

だからもし、ニドルスと遭遇してしまったら、音を立てないように逃げるの。

 

でも、その時アイリは事故で転んでしまったのよ。

それが原因でニドルスに襲われて、アイリが亡くなってしまったわ。

娘を一人失ってしまったことがショックで、シュウの奥さんは元気がなくなってしまったの。

そして姉のメルは、なぜか怒りっぽくなって、更に親に対して反抗的になったわ。

ルエルが過去の出来事を説明している時、突然雷桜は眠気に襲われた。

徐々に意識が朦朧とし、雷桜は意識を失った。

 

 

気が付くと、雷桜は『過去のシュウ』になっていた。

重い空気が水晶林地全体に広がり、遠くからはニドルスのうなり声が聞こえてくる・・・。

めまいでフラフラしていると、近くで女性の声がした・・・。

二人とも・・・これからなるべく音を立てないように行動するのよ。

近くにニドルスがいるわ・・・。

よし~

 

よし~

 

 

シュウ、ニドルスの撃破お願いね・・・!

 

ママ・・・ここ怖い・・・早くここから出られないの?

 

 

アイリ・・・。

この近くにはニドルスがいるの。声を出したり、驚かせたりしちゃ駄目よ・・・。

静かに歩いて・・・。パパがここから連れ出してくれるから・・・。

シュウが辺りにいるニドルスを撃破しながら、家族四人は水晶林地を出口に向かって歩いていく。

よし・・・ここまで来れば大丈夫ね・・・。

ここで待つのよ・・・。パパが兵士を呼んできてくれるからね・・・。

あなた、ここまで来れば安全のはずよ。

私とメル達とここに残っているから、あなたは先に行って、近くにいる兵士を呼んできてくれる?

シュウは頷くと、兵士を呼びに行くために出発する準備をした。

 

少し安心していると、突然怪しげな声が聞こえてきた・・・。

しまった・・・ニドルスの声よ・・・みんな静かに・・・!

 

突然、草むらの中から一匹のニドルスが飛び出してきた。

もしかしたら、二人の会話の声を聞きづけたのかもしれない。

ニドルスは辺りを見回し、音の発生源を探している。

メル、アイリ・・・静かにね・・・

 

メルがアイリの背を叩き、それに驚いたアイリが声を上げた瞬間、

ニドルスに気付かれてしまう。

すごい速さで駆けてきたニドルスに、アイリはあっという間に咥えられ、連れ去られてしまう。

 

・・・・・っ!

 

ナキアは両目を塞ぎ、すすり泣く声をなんとか抑えていた。

メル・・・どうして・・・?

どうしてあんなことをしたの・・・?

どうしてあんなことを・・・?

シュウ(雷桜)はメルがアイリをわざと攻撃し、アイリを連れ去られようとしているのを見た。

すると再び強烈な眠気に襲われ、徐々に意識を失った。

 

 

 

 

雷桜、大丈夫?

 

目を開けると、ルエルがあなたを心配そうに見ていた。

 

雷桜は大丈夫であることと、先ほど見た、シュウたちの過去のことを話した。

 

ルエル様!大変です!

 

すると突然、一人の兵士が大声で叫びながら、あなたたちの元へ走ってきた。

銀霊の祭壇付近で突然大量のモンスターが出現しました!

モンスターの数が多すぎて、私たちだけではもう限界です・・・!

それに、モンスターの主と思われる者が一人の小さな女の子を抱えています!

パンノ隊長が支援が欲しいと・・・!

なんですって・・・!?

でも私たちも襲撃を受けた傷が治っていないわ・・・。

支援に行ける人なんて・・・

ルエルは困ったように頭を抱えた。

私が行くよ!

その女の子、メルかもしれないし、確かめなくっちゃ!

あなたはルエルに、自分が支援に向かうと告げた。

それに、抱えられているという女の子を確認する必要があった。

もしかしたらメルの可能性がある。

・・・どうやらあなたにお願いするしかないようね・・・。

私があなたをパンノがいる前線まで送り届けるわ!