届く距離に居たって

届かないものはある



届いちゃいけないものも、

届けちゃいけないものも



微かな吐息に安らいで

確かな脈打ちに安堵して


どうかどうか、神様

私の我儘で、この自由な心を疲弊させてしまいませんように



鳥の羽根をもぎ取るような愚行にはしるなら、

どうか神様、私の腕を諌めてください



飛んでこそ、羽ばたいてこその大空を

四角く囲ってしまったら。


たちまち鳥は翼を壊し

光る瞳を濁らせて

哀しく空を仰ぐのでしょう


私は檻になりませんように。



捕らわれてしまった心の行く末を案じながら

始めから開いていた鳥籠の外へと、

恐る恐る出てみる私は、きっと滑稽。


飛びかたも知らない

羽根の存在すら忘れて

不器用に歩き回っては躓いている



転んだ拍子に視界に入ったあの鳥に

焦がれて焦がれて、

やっと今、翼の存在に気付いた



飛べるだろうか

羽ばたけるだろうか

自由に飛び回れるだろうか



うまく飛べたなら

まず

あの自由な鳥の見てきた世界の話を聞いてみたいんだ



神様、

私にも、まだ自由を乞う権利は残っていますか。



神様、私は許されたいです

全ての罪と哀しみから。


それ故に何かを無くしても

あの日々の蒼く黒い言葉を無くしても

もう怖いと思いません。



病を治したが故に

描けなくなったムンクのように

なくしても構わない



刺々しい哀しい報われなさの中で

もがいていたあの頃の

繊細な凶器はもう天へ還します



自由を恐れない心と

自由を肯定する強さと

自由に飛び込む度胸がほしいです。



あの鳥の足跡は縦横無尽に

空の道筋も、決まりきった軌道を描きもせずに

迷いもしない


何が見えているのだろう


残酷に捕らえてみたくもなるけれど

そんな権限はないのだから



神様

あの鳥の行く先が

幸いの溢れる光のなかでありますように



籠の中の鳥は

いまやっと

踏み出したところ



追い付くだろうか


届く距離

でも

そこへ行く手立てがまだないから


足踏みしながら見上げるだけ



視界から消えてしまいませんように

けれど

視界から消えて、広い広い世界を渡って行きますように


矛盾した願いを心に秘めて

一粒涙を溢したら


その鳥は綺麗な綺麗な声で鳴いた。



飛んでごらんと鳴いたから



羽ばたくための力を蓄えていこうと

歩き出したは良いけれど

道を間違えていませんように。



飛べるようになったとき、

あの鳥はまだ、

この空を飛んでいてくれるだろうか







神様

その時に、どちらもが

一人ぼっちじゃありませんように。