3.潜入捜査
マルチにハマった彼女(前回に引き続きマルちゃんとする)の動向について調べられるだけ調べた私は、彼女が他に呼びそうな友人2人に声を掛けた。そのうち1人は私と同様にサロンでカウンセリングをさせてくれと頼まれていたようだった。
そこで3人と話し合い、連絡を取り合いながらやはり私が乗り込むことになった。いざ敵陣へ赴かんと、私は全力を尽くす決意を固めた。
内容は「肌カウンセリング」である。この手の美容は、やたらとニキビ・肌荒れ・毛穴を気にするので、これらが顔面から完全に消え去った状態で行けば、相手の思惑に乗せられることはないはずである。
幸いなことに、私の顔面はかなりコントロールが効く。普段は思春期用(現在23歳である)の化粧水と、無印の乳液しか付けていないが、アットコスメで上位にあったダーマレーザーのフェイスパックをわざわざ購入し、10日ほど前から1日置きに使用した。若干あったニキビも以前皮膚科でもらった薬をつけてキレイさっぱり消し去った。
何がやりたかったのかというと、メディアの偽善的海岸ごみ拾い企画を潰してやろう、という魂胆に基づく「ごみ拾い前ごみ拾い企画」と同じだ。何も文句を言えない状態にしてしまえば、売りつけられても「でも私、実際肌キレイだし…」で押し通せる。嫌な客である。
そして当日、2月中旬ごろ。私は都内某所の駅前でマルちゃんと待ち合わせ、サロンに向かった。度肝を抜いてやろうと思い、これからカウンセリングを受ける人間とは思えないキツめの地雷風メイク・ファッションを決めていた。狙い通り怪訝な顔をされたが、お互いにオタクであったため、オタ活のための正装ということでごまかすことができた。
このサロンは、マルちゃんがハマった△△△社が現在持っている唯一の店舗らしい。以前は他の地方都市にも複数あったようだが、コロナの不景気で潰されたのか、今はこの一店舗に集中させているようだ。(マルちゃん曰く、「店舗を持たないのは店舗運営費や土地代等のコスト削減のため」らしい。さすがMLMだが、この1店舗で地方都市店舗3つは運営できそうな大層な立地である)
ここでも△△△社が直接的に接客をするのではなく、ビジネス会員(マルちゃんが「フリーランス」と呼ぶ者)に場所を貸し、ビジネス会員が自分で連れてきた客にカウンセリングを行う施設となっている。会員は△△△社の商品を好きなだけ使用して接客することができる。
私が思うこの施設の注目ポイントは、△△△社が雇った人間ではなくビジネス会員が接客をする点にある。これにより受付や管理以外の仕事がなくなるため、人件費を大幅に抑えることができる。また、場所貸し代(なんと2時間ワンコイン)と、販売に成功したビジネス会員による売り上げももちろん入ってくる。なんともおそろしいビジネスモデルである……。
マルちゃんに連れられて受付を済ませ、待機場所に案内された。荷物を置くと、彼女が一言、
本当に来てくれると思ってなかった、ありがとう。最悪、友達やめられるかと思った……
と尻すぼみに消え入りそうな声で言っていたのを、私は聞き逃さなかった。
カウンセリングを受ける間、私はことあるごとに友人2人とのlineグループに報告を入れていた。気分はスパイ調査員だ。
予約時間まで待つ間に使用する測定器の説明を受けた。測定をした後に、カウンセリングに移るという。彼女が自分で受けた結果を見せてくれたが、なんだかよくわからないチャート分析図とカタカナが並んでいる。マルちゃん自身も自分の勉強不足を理由に、うまく解説できないことを嘆いていたが、そんな状態で他人の身体に直接関わる接客をできる神経が私には理解しかねる。
受付をしてから10分も経たないうちに呼び出しがあり、測定器に顔を載せて写真を撮られ、2,3分で結果が出てきた。測定結果はとても優秀だった(らしい)。彼女は私の結果を凝視し、「毛穴がない」と驚いていた。消してきたのだから当然である。どんなことでも、努力が成果として表れるのはうれしいものだ。
測定後、ドレッサーの予約時間まで待機場所に戻り少し話をした。彼女の「カウンセリング50人チャレンジ」(報告①参照)は、この時点ではまだ始まったばかりで、私が初めての被験者(カウンセリー?)だそうだ。友人の挑戦の記念すべき一人目になれるとは光栄なことである。マルちゃん曰く、
「研修を終えたばかりで実際に接客を行うのは初めてだから、粗相があったら本当にごめんね。温かい目で見守ってもらえるとありがたい!」
とのこと。下手くそなのは百も承知。元々私と同様に、そこまで美容に興味がなかったのだから。しかし限度ってものがある。マルちゃんはとても面白いやつだ。恐ろしいほどに、期待を裏切らない。
そしてついに始まる、「肌カウンセリング」_______
