新婚の新床には
純白のシーツと純白の花嫁
散らすのは赤い花びら
命ではないはず・・
男は女の真実など信じはしないものなのか?
自らの妄想の中に生きる姿だけを真実の姿と信じるのならば
真実などというものは
なんと自分勝手の賜物であろうか?
これでは女は真実の姿など男に見せられるはずもない
虚像のみを抱いて虚像を道連れに果てることの
なんと虚しいこと
女が命をその身に育む力を持っているのはそのためなのだろうか?
男が虚像と妄想しか孕む力を持たない者だから?
歴史は多くを語っている
男が孕んだ危険な子種が
多くの命を虚像と妄想のために絶やされてきたことを・・
中世の魔女狩りは男にとって都合の悪い女を絶やすために行われたもの・・
女が男の前で愛らしく振舞うのは・・
自分の命を守るための防衛本能なのかもしれない
白い天蓋付きのベッドに眠るデズデモーナの傍らにオセローの殺意が忍び寄る
苦しみもがきながらも殺意だけを高ぶらせていくオセロー
目を覚ましたデズデモーナに死の宣告をするオセロー
罪状は不義密通
濡れ衣だ
命乞いするデズデモーナの言葉を無情に突き放し
その細い首に手をかけるオセロー
神にすがるように伸ばしたはかない白い手は
黒い男の手によって
無残にも力奪われてしまう
愛する者に命奪われるとは・・
信じてさえもらえないとは・・
ただ・・愛しただけなのに
ただ・・貴方に信じてもらいたかっただけなのに
それが罪だというのでしょうか?
それが命を奪われるほどの重罪だというのでしょうか?
殺してもいい
せめて・・明日にして
せめて・・あと30分
せめて・・神に祈りを・・
デズデモーナは最後の瞬間までをも清らかな乙女だった
奪われた命は戻りはしない
どんなに嘆き悲しもうと
どんなに許しを請おうとも
たとえ本当のことが明るみになったとしても
失った命だけは戻ってはこない
冷静に考えればわかりきったことのはずが
激情というものは冷静と遠く離れたところへ
理性を追いやってしまうものなのか
それはたとえどれほどの窮地や死地を潜り抜けた英雄であろうとも
人の心に巣食う猜疑心や嫉妬や激情だけは
等しく宿るものだということの証のように・・
オセローに命奪われたデズデモーナの
死を最後に見取ったのは侍女のエミリアであった
エミリアは城の外でキャシオーが何者かに刺されたことをオセローに知らせにきたのだ
デズデモーナを殺したのがオセローとすぐに察したエミリアはオセローを激しくなじる
オセローに剣で脅されてもひるまず
「あんたは悪魔だ!」
オセローはデズデモーナが不義を働いたことをエミリアに告げ
それでも信じないエミリアに夫が真実を知っていると言い放った
驚愕しながらも信じないエミリアは大声で皆を呼ぶ
「人殺し!ムーアが奥様を殺した!」
その声に人々が集まる、中にはイアーゴーもいる
オセローの口から
語られる真実・・それはイアーゴーが作り出した妄想の真実
その言葉を聞きながら
エミリアは夫が犯した恐ろしい悪事を思い知る
不義を決定づけたのは夫がエミリアから取り上げたデズデモーナのハンカチだったのだ
「悪党の仕業だ!悪党の仕業だ!
あ~くやしい!!自分を殺してやりたい!
悪党の仕業だ!」
うわごとのように嘆くエミリア
エミリアによって全てが明るみにでることになったイアーゴーの罪
イアーゴーはエミリアを刺し殺して
その場を逃げ去るがすぐに捕らえられてしまう
口をつぐむイアーゴー
自らの愚かさを思い知るオセロー
デズデモーナの死体を抱きしめ
犯した罪を嘆くオセロー
「死んでしまった!!デズデモーナ!!
死んでしまった!!ああ!! ああ!!」
人々に事の顛末を全て語ってもらいたいと言い残し
オセローは隠し持った剣で自らを刺し
デズデモーナに口付けして息絶える・・
イアーゴーは処刑されることとなる
だが、あれほど狡猾に悪事を語ったイアーゴーの舌は
決して動くことはなく
ただ、虚空を睨んで黙するだけだった・・
まとめに続く