比較的小さなところでの故障が物同士のつながりによって伝播(でんぱ)して、全体として大規模な故障になる事なんだとか。
この場合のカスケードとは、物同士が連なってつながっている状態を示します。
ネットワークの分野において、カスケード故障による被害を抑える研究が数多くされているらしいです。
よく取り上げられる分野としては、電力送電網における障害が伝播することで発生する大規模停電です。
・2003年8月にニューヨークを含むアメリカ北東部・カナダで発生した大規模停電
・2006年11月に発生したヨーロッパ広域停電(需要過多の地域と供給過多の地域が発生)
・2018年9月に発生した北海道胆振東部地震に伴う大規模停電(ブラックアウト)
日本での電力ネットワークにおいて、重要度が高いリンクやノードの例として以下が挙げられます。
・北本連系線
北海道と本州を接続。函館(北海道)と上北(青森)に直・交流変換設備を設置し(ノード)、直流の架空送電線と海底ケーブルで接続(リンク)
・関門連系線
本州と九州を接続する50万ボルトの送電線
・本四連系線
本州と四国を瀬戸大橋に添架された50万ボルトの送電線で接続
・阿南紀北直流幹線
阿南(四国徳島)と紀北(和歌山)に交・直流変換設備を設置し(ノード)、架空送電線および海底ケーブルで接続(リンク)
・周波数変換所(東日本の50Hz系統と西日本の60Hz系統を接続するゲートウェイ的ノード)
静岡県佐久間(30万kW)
長野県新信濃(60万kW)
また、昨今の電力事業自由化の流れにより、大小様々な電力供給源も考慮したスマートグリッドのネットワーク構造も注目したいところです。
通信分野におけるインターネットを考えると、古くから徐々に規模を大きくしていく過程で、電力網よりは比較的障害に強い性質を持つスケールフリーの形となったように思われます。
IoTを活用した新しい電力ネットワークも、最初は小規模都市などでローカルネットワークを試行的に構築し(小さく作りテストする)、得られたデータにより経済性と耐障害性のバランスを追求したネットワーク構造を模索するのが良いかもしれません(得られたデータから大きく学ぶ)。
LANケーブルを敷設する感覚で、太いスケールの電力ケーブルを作る訳にはいきませんし、停電のメカニズムは需要と供給バランスによる周波数変動が重要であり、送受されるものが電流と電気信号とで性質が違いますが、参考とできる例はいくつかあるような気がします。
スマートグリッドは実現していく過程に興味が湧く取り組みです。
・各電力ノードのセンサーには、どうIPを振り分けるのか?
・送電線のネットワークとセンサーのデータをやりとりする通信ケーブルのネットワークは、どう整合させるのか。メタルは論外として、光ケーブルは超高電圧のケーブルと共存できるのか?
・電力設備の老朽化のサイクルとデータセンターのサイクルの整合はどうするか?
20年前後の耐用年数となる電力設備に合わせてデータセンターも換装する?
データセンター内技術の陳腐化等により「2025年の崖」問題の再来とならないか?
サーバー等のシステム移行におけるリスクが跳ね上がるのではないか?
みずほ銀行システム移行などで場数を踏んだエンジニアの知見を頼るか?
・送電ネットワークとセンサーネットワークを完全に独立させた場合において、従来のインターネット網を活用する上で、ネットワークインフラにはAWSなどのクラウドサービスを利用するか?
・セキュリティはどうするか?独立した電力施設さえサイバー攻撃される時代(イラン施設に対するスタックスネットによる攻撃の例)に、どのような検知・対処システムを導入するか?
電力という重要なインフラ基盤を新しくするためには、色々と考えることが多そうです。