《 Maruyama side. 》


「…行ったか」

「…まる?どうしたん?」

「いや…大切な友達が、帰ってしもてん…」

「大切な友達…?」

「あぁ…ほら、シゲちゃんや、シゲちゃん」


関ジャニ∞での収録が終わり、
変な違和感に気が付く。
いつも近くで感じていたあの気配が感じられない。
それはきっと、そういうことなんだと察しがついた。
増田くんと、蹴り、つけたんやな。
たまたま呟きを聞かれた亮ちゃんにシゲちゃんのことを言う。
帰ったっていうのもオカシイよな。
事情を詳しく知すはずもない亮ちゃん達は帰ったって聞いても、家かどっかかと思って、そんな大袈裟なことちゃうやろって笑い飛ばしてくるんちゃうか?


「…シゲちゃん?」

「…おん、あ、帰ったって言うても家とかちゃうで?もっとこう…別の…」

「いや…まる、別に知らん人のこと聞いてもわからへんわ…」

「…え?」

「ま、そこまで大事な人っちゅーことやな。気の毒やけど、でも…まぁ、またいつか逢えるやろ。な?」

「亮ちゃん…」


元気出せよ、と背中を叩かれる。
亮ちゃんはいつだってそう。
落ち込んでたりすると特に深く追求したりせず、爽やかに励ましてくれる。
それより、数年も同じグループだった亮ちゃんがシゲちゃんのこと知らへんわけないもんな…
きっと亮ちゃんがシゲちゃんのことを誰?って言ったのも、シゲちゃんが記憶操作を使ったからなんやろな…


「まめやわぁ…」


自分が突然消えたら大勢の人がざわめくもんな。
ほんま、まめやわ。
気ィ遣いや。

加藤シゲアキがこの世から名を消した。
ということは、増田くんの物語もここで終了か。
お疲れさん。
最後まで真面目なあの子に、やっぱりシゲちゃんはシゲちゃんやな、と少し笑った。






《 Masuda side. 》


夜が明けた。
あれから一睡も寝れなくて、携帯の電話帳を見てみたけど加藤シゲアキの文字はなかった。
今日から始まる、アイツのいない世界。
アイツのいなかった世界。
俺は次顔を合わせる時、手越と小山になんて言えばいい?
次顔を合わせる時、どうすればいい?


「…あれ」


1件のメール。
事務所からだ。


「えーと…おー…ライブね…ライブ…やるのね…NEWSで…」


アイツのいないライブ。
アイツのいない収録。
アイツのいない雑誌撮影。
そう考えると、胸の中にもやもやが広がった。
いつもは朝起きてすぐに髪の毛を整えるのに、今日はそれすらもせずにパジャマのままソファに座ってダラダラと歯を磨いた。


「あ、やべ…」


口から垂れた歯磨き粉がパジャマを汚す。
いつもはこんなこと絶対しないのに。
最悪だ。
まるで心にポッカリと穴が空いたみたいな感覚。


「…ん?え、嘘だろ…集まんの…?」


今日?
いきなりアイツらと?
顔を合わせる?
いやいやいや、勘弁してくれよ。
俺、無理だって…
こんな感情のまま2人に目を合わせんの?


「…はぁ」


ため息が出る。
やっと普通になれたって言うのに、4人じゃなきゃ意味無いだろ。
小さな声でシゲに文句を言う。
あぁ…今日NEWSで集まったらさ、そう…なんていうかさ、
お前も…いてくれねぇかなぁ…
いつもみたいに遅せぇよ!!って…叱ってくれないかなぁ…


「…着替えよ」


ふとテレビの横をすぎると、NEWSで撮った写真が目に入る。
そこの写真にもお前はいなくて、
本当に、どこからも消えてしまっていて、
ここまで細かく消すことか?って、
もはや加藤シゲアキって存在してたっけ?って、
変な気持ちにさせる。
今までのは全部夢なのかと錯覚させる。


「マジ、ふざけんなよ…」


おめでとうじゃねぇよ…




自由なんかじゃない。
この世界にはいないハズのお前の姿をどうしても探してしまって、
期待してしまう。

そんな俺は、見えないお前に囚われている。








《 Tegoshi side. 》


突然、NEWSが集められた。
俺は午前中収録があったんだけど…まぁ気持ち悪い気持ち悪い!!
二日酔いって恐ろしい!!
昨日のクリスマス会が楽しすぎて、思わずたくさん飲んじゃった。
頭も痛いし吐き気もする…
最後の方なんて覚えてない。
いや…少し覚えてるけど。


「んぁー…頭いだいー…」

「昨日飲みすぎたんだろぉ…?」

「慶ちゃんもでしょ~?」

「いや、俺はそうでもないよ。しっかり最初から最後まで記憶ありまーす」

「うっそだー!!」

「ほんとー」


慶ちゃんといつも通り楽屋でじゃれる。
もっと早いうちにライブの打ち合わせって知ってれば、昨日もう少し控えたんだけどなぁ…
実際のところ、もう疲労困憊で今すぐにでもバタンキューしちゃいそうだけど、全国の俺の彼女の為に頑張るよ。


「そういえば、まっすーは?」

「んー、まだ来てないみたい。」

「俺、昨日まっすーに担いで貰ってなかった?」

「貰ってた貰ってた」

「いやぁ、朝起きたら知らないところにいてさ、ホテルだったわけ。で、もう飛び起きて、心臓バクバクよ。急いでスマホで調べたよね」

「よかったね、マネージャーに起こされる前に気がついて」

「さすがにホテルのチェーンは切断しないと思うけどね」


ガチャリと扉が開いて、まっすーが現れた。
相変わらずの黒いマスク。
でもなにかいつもと雰囲気が違った気がした。


「まっすー?どうしたの?」

「いや…なんでも」

「昨日は担いでくれてありがとー!俺、びっくりしたよ!起きたら知らないところにいてさ!」

「…お前がホテルって言ったんだろ」

「あれ、そうなの?」


あ、俺が言ったの??
俺が言ったなら仕方ない。
自分で自分にサプライズしちゃったのね。
なるほどなるほど。


「まっすー、顔色悪くない?大丈夫??まっすーも二日酔い?」

「…いや、俺普通に途中からウーロン茶だから」

「あ、そっか」


まっすーが黒マスクを顎にかけて無愛想に呟く。
なんか雰囲気が怖くて、グイグイ喋りかけられない。
するともう一度ドアが開く。


「あ、全員いますね。そろそろ打ち合わせを始めるので、移動してください」

「あ、了解しましたー」


スタッフさんのその言葉に反応したまっすーが、楽屋の奥からスタッフさんにガンを飛ばす。
やめてよまっすー、怖いって。
まっすーのこと誤解されちゃうよ。


「さ、行こっか。」

「うん」

「…おう」


まっすーの消えてしまいそうで、重たく低い声に何故か泣きたくなった。







《 Koyama side. 》


ザッとした打ち合わせが終わると、俺たちは家に散らばる。
手越は二日酔いだから珍しく早く帰った。
昨日そんなに飲んだか?と思い出してみても、
何故か霧が薄くかかったかのようにあまり鮮明に思い出せない。


< 俺、また衣装作るけどいい?

< いいよー

< もちろん!いつもありがとう


今日のまっすーはなにかおかしかった。
まっすーがおかしいのか、俺たちがおかしいのか、
でも俺にも何故か引っかかっているところがある。
なにかが足りない。
なにかがおかしい。
マネージャーの車に乗って考える。


「マネージャー、まっすーのこと何か知らない?」

「いえ…特に何も。どうかしましたか?」

「いや…まっすーの機嫌がなんか変でさ…怒ってる?みたいな…なんて言うんだろ」

「なんでしょう…聞いてみましょうか?」

「いや…大丈夫だよ。ありがとう」

「そうですか」


あくびが漏れる。
俺にも感じるなにかの違和感。
それは昨日のこととかじゃなくて、
なんて言うんだろう…
もっと、もっと大切な…

ミラー越しに、マネージャーと目が合う。
次々と過ぎ去っていく景色は確かに暗いけど、たくさんの明かりが灯っている。
赤信号で車が止まると、主にスーツを身にまとった人達が腕時計をチラチラ見ながら忙しそうに横断する。


< 見て、できた

< え、はやくない?!

< はやっ!!


打ち合わせが終わって約3時間。
画像がポンポン送られてくる。


< まだ少ししか書けてないけど

< わー!かっこいいね!!

< まだライブ構成とかも練ってないし、

< 今日の話もライブやりますよくらいしか話せてないから大幅変更するかも

< 了解!!


送られてきた画像を1枚1枚拡大して見る。
3つ目が見終わると、トーク画面に戻った。
でも、


「あれ…」

< まっすー、なんで4枚?

< 4枚書きたかったの


一応指摘してみたけど、どうやら間違いではないらしい。
1枚1枚画像にはどれが誰のかわかりやすくするために小山、手越、増田と右上に書いてある。
じゃああと1枚は…誰の??
…まぁ、まっすーがいいならいいんだけど。


「つきましたよ」

「いつもありがとう!おやすみ」

「次のライブも必ずみんなで成功させましょう。おやすみなさい。」

「うん!もちろん!」


マネージャーがぺこりと頭を下げ、車を走らせる。
車が見えなくなったことを確認すると、俺は鍵を開けて家へと入る。


「あ、もしかして…」


俺の感じる違和感って、“ 3人 ”って言葉?

でもなんで3人にもやもやするんだろう、
俺たちはもう長いこと3人でやって来てるはずなのに。
今更違和感?
まさか、そんなことないない。
家の中を徘徊する。
とりあえずお風呂に入って汗を流し、首にタオルをかけて一息つく。



「…なんだろ」


パジャマに着替えてソファに座る。
すると、ひとつの冊子が目に入った。


「あれ、これ…」


…アルバム?
中をめくると、俺たちの写真。
何枚も何枚も貼り付けられていて、それはJr.の時からつい最近のものまである。
手作り感満載。
これ、いつからあったっけ?
俺こんなアルバムなんて作ったことないよな…?
じゃあ、誰からもらったもの??
手越は絶対こんなことしないし、まっすーも多分やらない。
じゃあマネージャー?


「聞いてみよう」


グループメールでまっすーと手越に写メを送る


< これ、身に覚えがないんだけど誰が作ったのだっけ?


メールを送ってから数分後、


< 俺知らないよ~


返信してきたのは、金髪のアイツ。
いや、お前じゃないってのはわかってるよ!
手越はこんな細かいこと絶対にしないでしょ~が


< 俺でもない

< あ~、やっぱり2人じゃないんだ。

< あ!まって!

< どうしたー?

< 俺の家にもあった!!


写真が1枚送られてくる。
表紙にはピンクのペンでTo.手越と書かれていた。
角張った文字。
俺のと同じだ。


< そんなん俺もあるし


まっすーからも1枚。
これにも黄色のペンでTo.まっすーと書かれていた。
またまた角張った文字。
こんな字書く人いたっけ?
必死に思い出す。


< マネージャーじゃないよね?

< マネージャーこんな字書かないよ!

< じゃあ、誰からだろう…

< あ…

< ん?

< 1枚1枚見てたんだけどさ、1番最後のページになんか書いてあるよ

< へ…?


急いで1番最後のページを見る。
そこには同じ角張った文字で「I will see you again.」と書かれていた。
…また逢う日まで。


< これって、どういうこと?

< わかんない…わかんないけど、俺…

< …うん

< これ、捨てられないなぁ

< …うん、そうだね


いつの間にか、既読はひとつ減っていた。