扉 | 新・たぬき日記U・ω・U

ウサギの国がありました。


そこは城壁で守られていて、

暑くもなく寒くもなく、病気もなく、

食べるものは豊富に行き届き、

まさしくこの世の楽園のような場所でした。


そこに住むうさりんとうさぴーは、ちょっと変わったウサギでした。


彼らは大勢のウサギと一緒にいても、

楽しそうなフリをするだけで、

いつも孤独を感じていました。

何をしても何を見ても、彼らの心は満たされず、

いったい自分は、

生きているのか死んでいるのかさえもわからずに、

自らの身体を傷つけて、それを確かめてみることもありました。


彼らの得体の知れない心の苦しみは、

いったいどうすれば癒されるのか、

この国の中では、どこを捜しても見つかりませんでした。


ある時、二人は、

城壁の扉が、ほんの少し開いていることに気がつきました。


うさぴーが言いました。

「ボクはここから出ていくね。

外には、僕の弱った心を癒してくれる何かがあるかもしれない。」

うさりんが言いました。

「私はここから出ていかないわ。外には癒しどころか、恐怖しかない。」


そして、二人はさようならを告げあい、

うさぴーは静かに扉の外へ出ていきました。


でも外の世界は、

うさぴーが思っていた以上に、過酷な世界でありました。

命を守り、生命をつなぐための食物を捜すことで精一杯。

病気になっても誰も看病をしてくれる人もいない。

彼を癒してくれるものなんて、どこにもありませんでした。


じきに彼は、あんなに取り付かれていた心の苦しみを忘れてしまい、

その代わり、「生きる」ことだけに、

すべての集中をしていかねばならなくなったのです。


やがて数年が過ぎたとき、

扉のそばで、うさぴーのなきがらが発見されました。

みな、口々に言いました。

「だからいわんこっちゃない。

この城壁の中にさえいれば、もっともっと長生きできたのに・・・」


でも、うさりんは、

うさぴーのむくろの中に、誰よりも長い人生を見ていました。


ゆっくりゆっくり何事もなく時が流れていくだけの城壁の中で、

どんなに長いと思える時間を過ごしたとしても、

うさぴーほど長生きできる者などいないのだということに、

やっとうさりんは、気づきはじめていたのです。


扉
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