※陸上とは関係ありません
学生生活はあっという間だ、と言われる。大学に入って最初に受けた担任の授業で担任の先生は、大学生活の四年間はあっという間だ、高校での三年間もあっという間だったと思うけどそれ以上に早く時間が過ぎていく、だから単位を落とさないようにちゃんと履修計画を立ててください、というようなことを言っていた。
学生生活があっという間?冗談ではない。勉強していると確かに時間は早く流れるが、それは学生生活があっという間であるという事にはならない。気が付いたら1週間経っていた、1か月経っていた、半年経っていた…後からそう気づくことはある。でもその半年間、私は毎日苦しんでいるのだ。私を苦しめるのはそんなに大したことではない。家から自転車で行ける距離にマクドナルドが無くて悲しいとか、徹夜しても課題が終わらなくて空しいとか、その程度のことだ。けれども、苦しみを感じている瞬間の1秒は途方もなく長い。そしてそれは常日頃繰り返される。
部活の下校途中、希望のない大学受験に不安を抱えながら足元にある駅のエスカレーターを見つめる瞬間、歯医者に見放されてロビーの扉を開ける瞬間…力及ばない物事に直面する時、苦しみが記憶に強く刻み込まれる。そうした過去の苦しみを想起する時、私たちはあっという間だといわれる学生生活を自分は確実に通過したのだという時間の重みにどうしようもなく触れることになるのだ。
勿論、学生生活にあるのは苦しいことだけではない。宿題を期限内にやれて喜びや満足を感じられることもあるし、自分に課したハードルを乗り越えたご褒美に買う自販機のアイスが思い出になることもある。
ただ悲しいかな、それらは稀にしか起こせない。自らを知り律する事は訓練を必要とする。
世の中には、努力すれば物事というのは大体上手くいくのだ、と思っている人がいる。
だが私は声を大にして言いたい。全くそんなことはない!と。
私は自分の部屋を平素散らかした侭にしていてそこでは勉強がし難いから、毎日大学で勉強をする。すると周りの学生達の雑談が耳に入るのだ。本日耳にした所では、或る人は頭が良くない人が好きになれないのだという。自分が勉強してきたから、努力ができない人は嫌なのだと。
彼女は、努力というのはやろうとすれば実行できるものなのだ、と思っているのかもしれない。それは彼女自身がそうだったからだろう。現実には、万人がそうである訳ではないのだ。彼女はその点で恵まれていると私は思う。
それは私に向けて言われたものでは全くないのだから、本当は聞かなかった事にすればいいだけの話なのだ。だが、そうした価値観が世の中に存在するという事実が重く伸しかかってくる。というのも、私自身も心のどこかでその考え方に納得しているからだ。努力しようと望み、実行し、そして望むものを手に入れる…それは一見自然な流れであるかのように思える。
しかしこれは、数多の人々に通用できる考えではないのも事実だ
人生、いや勉強する事において、私は幾らやろうとしても上手くいくこと等在りはしなかった。毎日学校から帰ってきて、今日こそは宿題をやるんだ!と自分を奮い立たせてもテスト勉強をまともにやれたことは結局一度もなく、いつもテスト前の合計勉強時間はクラスで一番勉強している人の十分の一ほどだった。それは中学でも高校でも、受験生であっても変わらなかった。
それはおそらく、上手くできる人とは心構えが違ったからだ、と今では推察できる。つまり、自分の力で勉強したくないのを我慢して宿題をやった!という成功体験というものが人生で一度もないから、「ただ机の前に座って鉛筆を握ること」それだけのことへのハードルと期待が著しく高まってしまうのだ。自らの意志でしか変えられないことなのにどうしようもなく、何度挑戦しても手掛かりすら掴めず、でもそれ以外の道などありはしない…そういう出来事が幾度となく繰り返されると、やがて自分に対して期待すら持てなくなる。そして現実逃避や架空の事物に縋るようになるのだ、現実は変えられないから。
どうすれば、うまくいくのか?
どうすれば、自分の思い通りに自らを動かせるのか?
この答えははっきり分かったわけではないが、最近になってようやく道筋が見えてきた。私の仮説としては、「本来であれば到底許容できないような最低限のラインをまず決め、それを達成できたら少しずつ自らに課す課題を追加していくことで最終的に合格ラインを超えられるようにする」という方法が有効である気がしている。例えば7割以上の点を取るまでは回数制限なくやり直しになる小テストがあったとして、まずは「事前の勉強は全くできなくていいから、とにかく小テストを一回以上受ける」ことを目標にする。そうして最初の目標を達成すると、おそらく小テストの点自体は目も当てられないもので間違いなく再テストにはなるだろうが、「自分は不安な小テストを逃げ出さずに受けた!」という成功体験が生まれる。その小さな嬉しさを足がかりに、今度はちょっとだけ教科書を読み、前回の小テストの内容を思い起こして、もう一回受けてみる。すると、恐らく少しはマシな点になる筈だ。まだ100点中30点くらいかもしれないが、ひとまず点数が上がったことを喜び、それを糧に更なる復習に努める。そうやって10回も繰り返せば、恐らく及第点には届くことだろう。その時付けられる成績は芳しくなかったとしても、自分の中には10回分の小さな成功体験が得られることになる。そしてそれは積み重なって前向きに生きられる理由になり、希望を持って更なる試行錯誤をするための土台になる。それをもとに、いつか自他ともに認めざるを得ないような結果を出すことを目指して、「努力できる人間になる」のだ。