先進国でのインフレ率の低下は今後とも大きな基調の変化はないと思うが、多くの人が理解していないのが、それがIT革命による急速な効率化によって引き起こされているということだ。
無駄な労働力の削減や、モノ・サービスの裁定がはたらく事で社会全体が効率化されきているため、インフレが発生しづらい経済になってきている。先進国の低金利・マイナス金利は、こうした流れを反映して起きているという側面がある。
マイナス金利でも債券を買う機関投資家がいるのは、日銀が債券を買い取ってくれるので、それでもキャピタル・ゲインが出ると見越しているということだ。先進国の中央銀行は、これまで以上に最後の砦として、世界経済の構造変化のしわ寄せが来ている。一方で、だからといって先進国国家の金融システムが崩壊すると考えるのは拡大解釈をしすぎだ。
日本のB/Sには現金同等物だけで1,500兆円あり、反対側に政府の1,000兆円の負債がある。政府は徴税権をもっており、1,000兆の借金のクレジットは高い。P/Lでは毎年500兆円の利益が出ていることも安心材料。加えて、政府の裏には日銀があり、物価や円の流通量まで決められる権利を持っている状態だ。
上記内容は、1,000兆円の借金が実質的には小さいというテクニカルな側面にフォーカスしているが、一方で、マクロ経済の中で国力が弱体化していくことを想定に入れていないことや、日銀を政府と連結して考えているなど、見方がやや偏っているかもしれない。国債の裏付けとなる資産は、あくまでも日本国民が保有する資産と日本企業の稼ぐ力にあるので、日本政府のB/Sだけを見た論法は、日本国債の価値を評価する観点からは、あり得ない前提で論じているようにも見られる。
もし、国債の裏付けが日本政府が保有する資産だけであればこれほど簡単な話はないが、しかし実際には投資家は日本企業の稼ぐ力を見ており、これが弱体化すれば、日本国債など保有したくはない。
ドルインデックスは2014年半ばから急騰しており、1970年頃から見た長期平均に対して7-8%ほど上方に乖離している。歴史的には1980年初頭や2000年初頭に次ぐ、3度目の上方乖離と言える。ただ今回の乖離幅は過去2回から比べてもまだ小さく、急にこれを引き締めるような施策を打つとは想定しづらい状況だ。先進国でまともな成長を続けているのは米国だけであり、ドル高はある意味で当然のことと言えるだろう。
今年に入り、GRIPの150兆円程あるポートフォリオの時価が一時的に目減りしている事は間違いないが、だからと言って年金の支払いが滞るようなことはあり得ない。日本の国民年金は賦課方式を採用しており、毎月、国民年金基金には資金流入がある。現時点で40歳以上の方は、年金が不払いになるリスクは極めて小さいと言える。
長期的には現時点で40歳以下の人たちは、年金の額が自分が納めた程度の金額しか受け取れない計算になるので世代間での不公平感は否めないが、これは人口減少が続く限りは解消できない構造的な問題だ。故に、自分自身の生存スキルを向上させて、自分の老後の資金を確保しなければならない。