写真撮影に、定点観測という手法がある。同じ場所から同じものが変化してゆく様を、インターバルをおいて撮影する手法だ。
事例としては、たとえば、「雲など自然界の変化」、「都市計画時の街の変化」、「天災や戦災などにおける風景の変化」、「都市の交差点での人や車の変化」などなどがある。アイデア次第なのだ。
それらは、「一方向へと向かう時間軸」の上での定点観測と言えるだろう。
だがここでご紹介するのは、くり返し巡ってくる「循環する時間軸」の中での定点観測だ。
もう何年も行っており、今後もずっと続けるつもりなのだが、「こんなやり方もあるよ」ということでご紹介したい。
まず前置きに、これは50mm標準レンズによるフルサイズ画面のもの。
普通に肉眼で見える範囲に近い。この画像の中に定点としているものがある。
おなじ場所から、フルサイズ135mm望遠レンズで引っ張った写真だ。
遠方、上部左側に塔が立っているのが見える。
この塔は直線距離で約3km弱の場所にある。
望遠レンズで、この塔を含めて撮影したものが、今回ご紹介する定点観測?写真の数々なのだ。
撮影に使っているカメラはAPS-CのNEX-5Nだ。
コメントに (F) と記載してある写真のみ、ニコンのフィルムカメラ、F4 を使用している。
また、レンズはニコンの75-300mmと、タムロンの古い200-500mmを並列して使っている。この焦点範囲は、APS-C機の場合、35mmフルサイズ換算で112.5-750mmとなる。
超望遠域での画像は、収差や回折の影響が大きく出て、細部の崩れがあまりにも顕著になる。しかしもちろん、気にしない。(^^;
これは早朝の撮影。
光を受け始め、眠っていた建物に立体感が出つつある時間帯のものだ。
(F) 雲の影が、太い帯のように海面に横たわっている。反射する陽光との対比が際立つ。
それにしても、すさまじいまでの回折によって、線は崩れ放題だ。(^^;
(F) 重たい雲から漏れる光で海はあかるく、それが神秘的だ。
(F) ときには、翔ぶ鳥の姿も入り込む。まるで塔を経て、船に向かおうとしているかのようだ。
この写真と次の写真の2枚は、風が強かった日のものだ。
遠方からも視認できるほどに波が高い。普段は、遠方からは波の姿は見えないのだ。
超古い200-500mmズームレンズの収差が、塔にバリバリ出ているが、もちろん、気にしない。(^^;
海面の白い箇所は、陽光が当たっている個所だ。
この塔のすぐ先は断崖だ。塔のあたりに、海辺に降りてゆく急な坂道がある。
曇った日の午前。なんとなく、どよんとした雰囲気だ。
雲もまた面白い形を見せてくれ、そんな雲から海面にわずかに光がさしている。
(F) 光の反射と波とが交錯して、海面ではなく、不思議な空のように見える。
日が暮れ、街に明かりがともり始めたころ。肉眼では、この写真よりもかなり暗く見える。
(F) 太陽の場所はわからず、それでも陽光は海面にひろく射している。
太陽光が海面全体に反射している。
太陽光を背景にしてシルエットとなった街は、あまりにも非日常的、絵画的だ。
曇った日の午前中の撮影。
雲の切れ目からの光で、海の表面の光には、均一ではなくゆるやかな濃淡が出ている。
(F) 遠くの船は、自分がこんな光の中に居ることに、気がついているのだろうか。
小雨の日の朝。ぺたっとしたフラットな絵になるが、構図を工夫すると面白い絵作りができるだろう。
(F) 霧の出た夜。
街の灯は霧の中ににじみ、左奥の方にかすかに塔の姿が見える。
海面全体に太陽光が反射している。黒っぽい帯状の線は雲の影だ。
塔の背後は海なのに、なんとなく空にも見える。それなら、とてつもなく不思議な空だ。
夕暮れ時、斜光線を受けて風景は立体的な描写になる。そうしてこれから眠りにつくのだ。
雲の形が複雑で、その隙間から太陽光が海面にまだらに降り注ぐ。
そんな光の範囲が刻一刻と変化していくことが、なにか不思議だ。
(F) 船が通りかかる。めぐりあった塔と船とが、なにか話しあっているかのようだ。
よく晴れた日の昼間。家々の屋根の反射がパズルのようで面白い。
(F) シルエットとなった街。午前の陽光の中の海はあまりにも豊かだ。
風が強かった日の夕暮れ時。街には明かりがともり始めている。
波がとても高い。こういう海を見ることはめったにない。
(F) 3年前の撮影だ。大雪が降った翌日のもので、まるで津波のように見える。
太陽光をいっぱいに受ける海面。
ここでの波は、前の写真に比べれば小さな波に見えるが、これでも浜辺に出ればかなり大きい波なのだ。
小雨の夕暮れ時。街には少しづつ明かりがともり始めている。
(F) 穏やかな海面には、セイレーンの歌声が響いているかのようだ。
日没後、空にはわずかに光が残る。塔の姿がかろうじて見える。
太陽光の中のもの。
画面の左下、家の屋根の反射が、なにかを語りかけているようだ。
超早朝。沖に、明かりがついた船が見える。
太陽光の中に、雲の影。水平線上にわずかに見える船はタンカーだろうか。
(F) ここに写る光も、光という名詞の概念を教えてくれるのだろう。
夕暮れ時、フェリーが毎日通る。
思った以上に速い。ぼやぼやしているとすぐに通り過ぎてしまう。
(F) 雲の影が不思議だ。少しばかりの時間を置いて見れば、もうすっかり別の形になっているのだ。
(F) シルエットになった家々のハードなエッジが不思議だ。
ここに人が住み、ここに生活があるということが不思議なのだ。
(F) 行く船を見送っているかのようだ。雲がまるで巨大な壁のように見える。
曇り空の午前、ところどころに光がさしている。
沖合に見えるのは漁船だろうか、塔が船に向かって挨拶しているように見える。
雲が複雑だった。太陽光がまだらに降り注ぐ海面が、非日常を見せてくれる。
■■
以下はオマケ。同じ機材、同じ場所で、塔以外のものを撮ったものだ。
タムロンの200-500mmレンズは、不思議なことに、画面中に高輝度部があると、対称位置に謎の結像をする。
いずれも月なのだが、これをレンズの欠点と思う必要はないだろう。
「月を二つ結像してくれるレンズ」。それでOKだ。(^^;
こちらは太陽。雲の形によって、太陽も被写体になる。
太陽撮影の場合には、月のように二つにならないのが不思議だ。
手前にある電柱に、たまたまいた。
ずっとそのポーズでいたから、撮れと言っていたのだろうか。撮った直後に、どこかに飛んで行った。(^^;
花火も超アップで画面に入る。
夏には毎年、最初の写真の画面右上の場所で花火大会が行われる。
使用レンズ
AUTO TAMRON ZOOM 1:6.9 f=200-500mm
AF NIKKOR 75-300mm 1:4.5-5.6
雲台の上にベルボンのマグプレートを介して、レンズ2本を並列に取り付けている。
NEX-5Nカメラ本体は、写真の右上にわずかに見える四角部分だ。
YouTube動画でも、このシステムでの写真を結構使っていたりする。
ANGUISH - Mindrot - [ Route 6, Fukushima, Japan - 0:00 1:00 2:00 3:00 4:20 ]