CT-105 1:2.5 f=105mm BBAR MULTI C. TAMRON
1976年に発売された、タムロンの初期アダプトール時代の単焦点レンズだ。
初期アダプトールレンズは、ピントリングのすべり止めがシャークスキン柄なのでわかりやすい。
アダプトールとは、レンズのマウント部をユーザーが簡単に交換できるシステムだ。
この方式の開発によって、ユーザーはどのメーカーの一眼レフボディを所有していても、レンズを買いなおすことなく同じレンズを使うことができるようになった。
しかし当時、どれほど付加価値がある機能だったのかはわからない。
プロでなければ、複数メーカーのカメラボディを持っているユーザーは限られていたと思う。
アダプトール方式が注目を浴びたのは、デジタル一眼レフが主流になり、フィルム一眼レフの中古価格が暴落して、ユーザーがメーカーを問わずに好きなカメラを入手できるようになってからのことだと思う。
ニコンとキヤノンのカメラを持っていても、同じレンズを使えるのだ。
結果、タムロンのアダプトールレンズは多くのユーザーに認知され、その副産物であるかのように、アダプトールレンズの光学性能がいかに優秀だったかが見直されることになったのだ。
もう夏も終わり、まだ暑い日が続くにしても、秋の気配が感じられるようになった。
野草ももう、これからさらに生育していくこともなく、夏の日の傷もそのまま残り、季節の終わりが告げられる。
今日はこのレンズだけを付けて、そんな風景を撮影しよう。
取り残されたような古い街がいい。
バイクで裏通りを、行き先も定かではないままにめぐり、ときどき降りてそのあたりを歩こう。
タムロンの単焦点中望遠レンズには、圧倒的な高評価を誇る90mmマクロがあり、CT-105は後継機種を残すこともなく1979年にディスコンになった。
あまりにもマイナーなレンズなのだが、その写りは、個人的には明快な立体感が極めて好みだ。
最短撮影距離が1.3mと、「寄れない」のが欠点なのだが、M42のアダプトールを付け、ヘリコイド付きM42マウントアダプターでカメラと接続すれば、かなり寄れるようになる。たとえば、最後の花の写真はヘリコイドも使っている。
Earth & Fire - Seasons (1969)