かなり以前入手したまま、放置していたジャンクカメラとジャンクレンズがある。

■ ジャンクカメラは、昔のファミリーカメラ、「フラッシュフジカ」。
カメラに入れたままになっていた単3電池が漏液し、カメラ内部がすっかり腐食した状態でジャンク箱に転がっていた。


◆ ジャンクレンズは、ヤシカの「FR-II」という一眼レフカメラに付いていた、「DSB 55mm 1:2」だ。
このレンズの後玉が、貝殻を剥がしたような不可解な形で割れていた。
??
落下痕ではない。カビ取りレストアでもしようとして失敗したのだろうか。
なんであれ、レンズが割れてしまっていては完全なジャンクだ。



で、いずれも二束三文だったので買ったのだ。(^^;
なにかに使えるかと思ってはいたものの、結局なににも使わないまま放置していた。

しかし、フランジバックの短いミラーレスの登場で、ふと思い出して、なんとかしようという気になったのだ。


■ フラッシュ・フジカは、レンズに問題はなかった。
そこで、ヤシカのレンズを鏡筒から抜き取り、代りにフラッシュフジカのレンズを移植することにした。
絞りやヘリコイドはヤシカの鏡筒を使うから、使い勝手もよいだろう。
もちろん、マウントは超薄型のEマウントに付け代える必要がある。

◆ 抜き取ったヤシカのレンズも、なんとかしたい。
割れている後玉はギブアップ。前群レンズは無傷だったので、前群レンズのみを使用して、「中望遠ソフトフォーカスレンズ」に改造することにした。

焦点距離は長く変わるが、前群レンズだけでも使えるのだ。
まずレンズをM42中間リングに接着固定する。これでM42ヘリコイド付きマウントアダプターが取り付くようになる。
もちろん、中間リングで無限位置を合わせる必要がある。ややオーバーインフィニティぐらいはOKだ。


これで、2つのジャンクから、2本のレンズが復活した。(^^)



■ FUJINON 1:2.8/38mm (Flash Fujica) 改
FUJI PHOTO FILM

 

イメージ 1




このレンズは、富士フィルムが発売していた、ファミリー向けコンパクトカメラに、長いこと使われていた。
カメラがモデルチェンジしても、レンズは同じものが使われ続けたのだ。

レンズが小さいので、フランジバックを合わせると、レンズ位置は上の写真のように、鏡筒の奥深くになる。
こんな場合は、鏡筒もまたレンズフードだと思えばよい。?

改造の副産物もあった。
ヘリコイドの繰り出し量がそこそこにあるので、レンズ前面から被写体まで20cmぐらいまで寄れるようになったのだ。
下に、黄色い花の写真があるが、これが最短撮影位置で撮ったものだ。

写りは、きめ細かさよりも、独特の「濃い」印象がある。
いまでも、ネット検索すると、このレンズを高く評価する人が多いのだ。


 

イメージ 2


 

イメージ 3


 

イメージ 4


 

イメージ 5


 

イメージ 6


 

イメージ 13


 

イメージ 7


 

イメージ 14


 

イメージ 8


 

イメージ 32


 

イメージ 29


 

イメージ 9


 

イメージ 10


 

イメージ 11


 

イメージ 12

 


このレンズの独特の濃い写りは、マニアから高い評価を受けてきた。
しかし、この種のコンパクトカメラ用レンズは、たとえ改造しても、バックフォーカスの短さのため、一眼レフでは使えなかった。
ミラーレス機の登場で、このようなレンズまで使えるようになったのだから驚きだ。


周辺部にマゼンタ被りがみられる。絞り込んで撮影した写真に、特に顕著に発生した。
これでも面白い絵になるから、個人的には無問題なのだが、いちおう原因も推定しておく。

このレンズは絞り位置がレンズ後端(カメラ側)にあり、イメージセンサから近い。
絞り込むと、レンズの中心部からイメージセンサ周辺部への光軸は、極端に傾いたものになる。
この場合、今回使ったα7Rのような高画素機では、周辺部でマゼンタ被りが発生しやすくなるのだ。

 

 

これはα7SやAPS-C機では発生しない。次のリンク先の最後の方に、種々のカメラで撮影した記事一覧を掲載している。
フルサイズEマウントで使うオールドレンズ&写真 (5) 海外、引伸し用、Lマウント、テレコン 他


こちらも、別の日にAPS-C機で撮影したもの。
イメージ 28




◆ YASHICA LENS  DSB 55mm 1:2
ソフトフォーカス改


 

イメージ 15




このレンズは、前群のみをM42中間リングにエポキシパテで貼り合わせ、さらにM42ヘリコイド付きのEマウントアダプターを付けて、使えるようにした。

このレンズには後群がないため、収差はほとんど補正されない。つまりソフトフォーカスレンズになってしまう。

このレンズの場合、前群レンズのみを使うと推定焦点距離130mm程度の、中望遠ソフトフォーカスレンズになる。

絞り機構がないから、ピンホールレンズに近い描写になるのだが。


収差がもたらすソフトフォーカス効果は、ソフトフォーカスフィルターによるものとはまったく異なる。
昔なら、収差は敵とばかりに扱われたものだが、いまでは収差もまた、「あらたな絵を描きだす」という点で、受け入れられることもある。

収差によってどのように写るかは、やってみなければわからないのだが、撮影が楽しみなレンズとも言えるのだ。(^^;


 

イメージ 16


 

イメージ 17


 

イメージ 18


 

イメージ 30


 

イメージ 19


 

イメージ 20


 

イメージ 21


 

イメージ 22


 

イメージ 31


 

イメージ 23


 

イメージ 24


 

イメージ 25


 

イメージ 27


 

イメージ 26



このレンズのおおよその焦点距離は130mm。所有するソフトフォーカスレンズ中で、もっとも焦点距離が長いレンズがこれになった。(^^)

このレンズの場合、フレアが放射状に出る。さらに周辺部の流れが大きいが、周辺部が気になる場合は、APS-C機で使えばよいだろう。


しかしクセの強さは、うまく嵌まると非日常系の面白い写真になると思う。
それをどう生かすかなのだ。
このレンズの場合、独特のバブルボケと放射状のフレア、周辺部の崩れをうまく生かせれば、このレンズにしか描けない絵を見せてくれるだろう。



 

Keith Jarrett - Lausanne Concert (excerpt II)