風が強い日だった。
単焦点レンズの90mmと24mmの2本だけを持って、しばらく歩くこともなかった道を、2時間ほど歩いた。フジノンとドイツのエンナリサゴンだ。
FUJINON -EX 1:5.6 f=90mm
Lithagon 1:4/24mm ENNA München
レンズを被写体に応じて交互に使い分けるわけでもない。いちど付けたレンズは、そのまましばらく、気が済むまで?使い続けるのだ。
「これだけで撮る」なら撮影の制約も多くなるのだが、独特のたのしさがある。
FUJINON -EX 1:5.6 f=90mm
FUJI PHOTO OPTICAL
このレンズは、引伸し機用のレンズだ。今回持ち出したのは、焦点距離90mmの中望遠レンズだ。
この焦点域のレンズは、画角がやや狭くなるために、対象を「見つめる」ような視界になる。「漠然と見ている」という感覚とは違うのだ。
たとえばポートレート撮影などで、この焦点距離のレンズが使われることが非常に多い。
撮影者とモデルの距離感が好まれるのだが、「見つめるような視界」であることもまた、使われる理由になるのかもしれない。
なお、このレンズは、絞りをいわゆる「レンコン絞り」に交換した改造レンズだ。
この絞りを使うと、穴位置にもよるが、ボケや高輝度部に奇妙な揺らぎが出る。
絞り値は開放でも5.6と、被写界深度の深いレンズだ。ボケを生かした表現に向くわけでもないだろう。
しかしなお、背景を遠ざけるなど、ボケを意識して撮影すれば、このレンズは、変化がなだらかで破綻のないボケを見せてくれる。
このレンズのボケは、「被写体の特定の距離関係では良い」のではなく、「どのポイントにおいても良い」のだ。
Lithagon 1:4/24mm
ENNA München
エンナ社は、ミュンヘンのレンズメーカーだ。
ドイツのレンズというと、盲目的な信仰?を見ることもあるが、エンナ社はけっして高級ブランドではない。どちらかというと一般向けのブランドだ。
広角レンズには、中望遠レンズの「見つめる」感覚ではなく、「その場所にいる」感覚がある。
このレンズが出た時代には、焦点距離24mmのレンズは「超広角」レンズとされていた。
「超」という文字は、扱いにくいものに対して付ける文字なのだろうか。
しかしいまでは、24mmレンズは超広角ではなく、普通の広角レンズなのだ。その場所にいる感覚があれば、扱いやすいレンズなのだ。
このレンズでの撮影はモノクロモードとした。
ときどきモノクロームに回帰したくなる。光が光としてそのまま浮き上がるような描写は、やはりモノクロームというジャンルのものなのだろう。
このレンズには、高輝度部に「にじみ」が出る特徴があり、そんな特徴をモノクロームで見たかったのだ。
ちなみに、このレンズのカラー描写がこちら。黄色系が強いレトロな発色だ。
Bach, Variaciones Goldberg BWV 988. András Schiff, piano