中古カメラを扱うショップに、「ジャンク箱」と呼ばれるものが置かれていることがある。
そこには、「商品価値がなさそうな、ワケあり品」が、無造作に放り込まれている。

レンズもそうだ。しかしワケありの理由はいろいろあるものの、現代のカメラでも使えるレンズとして、復活させることも可能なのだ。
とくに、フルサイズのミラーレスカメラの登場は、復活の可能性を大幅に拡大したと言える。

ここでは、そんなレンズたちをいくつか取り上げたい。
添付した写真は、どれも同じ日に、バイクでのお散歩かたがた、ただ気の向くままに撮ったものである。

 

 

なお、本記事で扱うレンズに関しては、次のリンク先に一覧化されている。
フルサイズEマウントで使うオールドレンズ&写真 (5) 海外、引伸し用、Lマウント、テレコン 他



Nettar Anastigmat 1:4.5 7.5cm  (ZEISS-IKON)

 

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1937年にドイツで発売されたスプリングカメラ(ジャバラカメラ)の、ツァイス・レンズだ。
パウル・ルドルフが1890年に設計した「アナスティグマット(プロター)」というレンズ構成は、現代レンズの基本になった。
ここからレンズ構成は、複雑化しながら多様に派生発展して行くのだ。


カメラボディはボロボロだった。だからジャンク箱に入っていたのだろう。
しかしレンズはまだ使える状態だった。
そのため、まずレンズユニットを取り外してM42化し、中間リングでフランジバックを大まかに合わせ、M42ヘリコイドで微調整できるようにした。

もちろん、古いレンズだからコーティングもされていない。逆光に極端に弱いため、自作フードを付けた。
で、フードには
100均のステッカーシールを貼っている。これがいい。(^^ゞ

 

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80年も前の、2群4枚構成のこのレンズは、シャープすぎることもなく、発色もおだやか、トーンの変化もなだらかで、非常に端正な絵を見せてくれる。

数値スペックでは現代レンズにおよぶべくもないだろう、だがその柔らかな端正さが魅力なのだ。
最後の写真は、ほとんど廃墟写真なのだが、それすらも端正な絵となる。
単なる数値スペックを超えるものを持つレンズだと思う。

「理由があって使われなくなる」。
しかし、使えるのだ。そうして、撮影者の意図に、どこまでもついてきてくれるのだ。



ROKKOR-PF 1:2 f=45mm (minolta)


 

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1962年に発売開始された、ミノルタの初代ハイマチックに搭載されていたレンズだ。
このカメラは、アメリカのスミソニアン航空宇宙博物館にも展示されている。
アメリカ初の有人宇宙船「フレンドシップ」に乗って、宇宙に行ったからだ。

レンズの状態が悪かった。後ろ側のレンズはカビに食われて、表面は白くざらざらになっていた。
前面は擦り傷だらけ。レンズ面に息を吹きかけて、ハンカチでごしごしと清掃するような使い方をしたのだろう。要するにジャンクだった。

後群レンズはあきらめ、前群レンズだけを丸ごと取り出して使うことにした。

前群レンズだけでも、焦点距離は中望遠級になるのだが、「使える」のだ。

このレンズの場合は焦点距離105mm程度の中望遠レンズになる。

もちろん、前群だけでは収差の補正ができないから、フワフワの写りになる。ましてこのレンズは擦り傷だらけだ。

これもM42中間リングとヘリコイド付きマウントアダプターでフランジバックを合わせ、ピント調節を可能にした。
で、「収差補正なし+擦り傷だらけ」のソフトフォーカスレンズ」として使えるようになった。(^^)


 

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収差もここまで激しいと、気が遠くなりそうになる。(^^;
もちろん、収差はレンズの欠点なのだが、しかしよく言われる「レンズの味」とは、収差によるものが非常に多い。

長所と短所は背中合わせにある。収差の多い描写が嫌いな人もいるし、好きな人もいる。
私は後者だ。(^^ゞ 欠点は欠点だけに終わるものではないだろう。



 

It's Only A Paper Moon