写真とは、画像を伝えるためのものである限り、シャープで克明であることが求められる。つまり、正確である必要がある。
レンズはその方向に進化してきた。
画像のどこを見てもなんら破綻のない正確な結像が、現在進行形で実現されつつあるのだ。

だが、その対極にソフトフォーカス系のレンズによる描写がある。正確であることが要求されないままに描き出される描写である。

まるで、正確さの追求に対する反動であるかのように、そんなレンズもまた求められているのだ。
輪郭を明らかにするはずの光はにじみ、映像は異なる表情を見せる。そこにあるのは、遠いなにかを思い出させるような表情なのだ。



 

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季節の花々。それは色彩と香をまとい、微笑みかける。
いずれもが路傍の花々だ。
光のにじみが香となるのだろうか、路傍で振り向けば、そこにはいつでも笑顔があるのだろうか。



 

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光のにじみはレンズの収差による。
つまり、レンズを通った映像が正確に結像することができずに、光が集まるべき箇所に集まることができなくなって、そこに瞹昧さが出るのだ。

造形的な被写体もまた、その輪郭が瞹昧になれば、その瞹昧な中に語りかけるものが現れる。



 

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色彩を失っても、そこに呼吸するものがある。
輪郭を失ったがゆえに、被写体は背景に溶け込んで行く。
撮影対象である被写体は「そこにあるもの」だが、背景とはいつでも広大なものなのだ。



 

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城址のお堀に散る桜。
碧い空の中にあった桜の花々は、散ったとたんに消え去ったわけではない。
水面に白く、ゆるやかに風の中に流れ、人々にあらたなその姿を見せる。

だが木々から散れば、それを見る人の姿はまばらなのだ。




音楽。描かれたもの。音律も映像も、にじむ光の中にある。

Gabriel Fauré "Violin Sonata No.1 in A Major, Op.13"
 - Doukan, Cochet - [Vinyl record]



 

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人の生活の中に、さまざまな色彩は楽しげに歌う。
コントラストが高ければ、光はその季節が見せる炎のように拡散する。
だがそれはなにも焼き尽くさない炎だ。そこにある炎とは、歌なのだ。



 

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木々。輪郭は失われ、境界は失われ、だが木霊は変わることなくそこにあるのだろう。

シャープネスとは、知に通じるものなのだろうか。
だが知が見せることができなかったものがここに姿を見せる。それなら、ここに聞こえている言葉とは、なんなのだろうか。



 

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冬枯れの中の木々や水辺。
にじむ光は大気の気配であるかのように、木の幹に触れる。黒は回り込んでくる光をまとう。
黒は、黒であることができなくなるのだ。

 

 

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なお、ソフトフォーカスレンズやフィルターなど、特殊効果用機材の使用例や写真は、下記リンク先の後半に多種まとめてある。

(リンク) フルサイズEマウントで使うオールドレンズ&写真 (5)

 

 

 

 

Coming Down Again