海岸線に沿って、銀の線路は走る。夏草の香と、開け放された家々の窓と。
この場所、かすかに潮の香は漂い、波の音が響いては来るが、── 海は見えず、陽光の下に家々の屋根。
── 男と女が浜辺に降りてゆく ── 手で触れることすらできないものを求めて。
── かすかに潮の香は漂い、波の音のひびくその街、故郷よ。(10/24)

川沿いの、堤防の上の道。
昼下がり、川と野草とのざわめきが、彼方に広がる黒雲を知らせてくれるのだが、── 川面には無数のきらめき。子供たちは黒いカーテンの手前まで走ったら、また戻ってくるのだろう。
──
なにもかもを打ち壊して侵攻していくものがある。その侵攻に背信する人々を処刑場に送り込みながら。
波打ち際の轟音はどこにでも響き、常に新たな告別と歓喜との侵攻が、牢獄を打ち砕いてゆく。(10/24)

風の中、無数の旗は赤道の真下の極地を走る。砂漠は燃え上がる、都市も、地下室も。(10/15)

快晴の秋の日。家々の壁は肌のようだ。色褪せはじめた木々の無数の葉。
風と日々とは走り、その中に所々、一瞬輝くもの。
── 路上、転倒した子供が泣いている。
人のいないホームから見える、朽ちてゆく秋の風景 ── 忘れてしまったものは何なのか。
──
家々の肌に刻み込まれる影、禁忌を持たぬ子供たちは転倒し、泣き声を上げ、そうしてふたたび起き上がり、走り出す。
風と日々とは走り、その中、壊滅していく神殿と予測と。(10/22)

長い橋を渡り、新しい街を通り抜けてゆくと、木々の茂る丘があった。
遠い昔の古墳だった。木々の多いその付近、細い道路の両側には古びた家々。
── 立ち去った人々が残した、何も語らぬ彼らの思い。(10/22)

曇り空。太陽はもう沈んだのか。
光は次第に失せてゆき、橋の上から見る川面には、淡い靄も出て来たようだ。
── 闇の手前に立つ少女の笑顔は、今でも現れはするのだが、── 疲れ切った魂は、暗い安息の底へ、底へと。(10/20)

鉄条網の向こう側に、人は花束を投げ込む。
暴力は、はや処刑され、── 鉄条網の冷たい輝きの向こう側に、人は花束を投げ込む。
放棄された無数の植民地に生きるものの姿は絶え、── 悪魔のしつらえた寝台で、また一人、誰かが死んでゆく。(10/11)

「それはいけない、こちらへ進むのだ」。牧場ではモラリストたちの高らかな声。
「そちらは汚れている。こちらへ進むのだ」。だが汚濁など、どこにあったのか。
──
さすらう夜の裏通り、ネオンの連なり、客引きの声。
光と音と臭気の混沌。── それは確かに、「大僧正様の御座」と同じ広間にあった。(10/16)




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