早朝、白い朝。雨上がりの香が、ひやりとする風に乗ってやってくる。
濡れたアスファルトの路面を何羽かの雀が走り回っている。作業帽をかぶった初老の男が、一人で歩いてゆく。
── どこかから、硬い貝殻の触れ合う、乾いた音が聞こえてくる。
── 枯れかけていた鉢植えのあの植物は、小さなつぼみをつけ始めた。
早朝。雨上がりの白い朝。(7/1)

夜。暗い通りに一ヵ所、ショーウィンドウの明るい店がある。
ショーウィンドウの中には、両側からの光に照らされて、マネキン人形が空間の一点を凝視している。
── 照明の中なのだ、── その顔の明るい部分と暗い部分のコントラストは異様なほどに高く。(6/30)

三島由紀夫の文章は、すみずみまで死体で構成されている。(6/22)

コローの絵画。土で築き上げられた橋、家々、そうして城。
太陽の光を浴びて、その厚みと重さのある風景は、確かな輪郭を持っている。
── いつか時間も過ぎて、太陽の光は去り、嵐に吹かれた痕跡のある木々ばかりが残される。(6/24)

熱も静まってきた夕暮れ時。
崩れ落ちそうな木々の緑が川の両岸をおおっている。川面には、かすかに靄が広がっている。
夕暮れ時、川面を走ってくる冷気と、濡れた緑の香と。
── 遠い日々のあの錯覚。僕の影が、冷気と濡れた緑とを通り抜け、あの崩れるような緑の中に溶け込んでいく錯覚。
──
僕は川に沿って歩き始めた。── やがて川沿いに木々はすっかり見えなくなってしまい、川向こうの彼方に、赤十字病院の建物が姿を現していた。
── 熱も静まってきた夕暮れ時だった。(6/24)

地中の根。それが植物たちの「反抗」を支えている。
── 存在しているものの「表現」。(6/22)

熱は夜風の中に揺れ、流れる。広いテラスの前に茂る、南国産の植物たちのざわめき。
昼間の汗も乾いた僕に、きみが話しかける。僕も二言三言、きみに話しかける。
── 話したことなど、なにも覚えてはいない。── 夜の香はテラスにまでやってくる。(6/29)

深夜。雨に濡れた冷たく硬く、黒い路面に、街灯の光がいくつもの幻想を僕に見せている。
霧雨が僕の肌に感じられる。冷たい空気は僕の体内にまで染みている。
── かすかに響いている音に僕は耳を傾ける。その音は、いまは静まり返った人々の生活の音なのか。
── 雨に濡れた路面に、街灯の光はいくつもの幻想を見せている。(7/27)




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