夜。冷気は窓を通り過ぎ、僕の存在に触れ、僕は外の世界をふと知るのだが、
── 僕が僕の消えかかった松明を持ってさまよった、この永遠の夜の、都市のビル群、ネオンの閃光。
── 僕にとって「知る」とは何だったのか。(1/31)

雨。── 影の静かな侵略は、何を眠らせるのか。── すべてなのか。
冬の終わりの雨。── 夜の彼方から、冬の終わりの雨の音。
この静かな幽閉。(3/5)

遠のいた波は、波打ち際の「同じ輪郭」を目指し、だが同じ輪郭などすでにどこにもなく、彼方、月は赤く焼けてゆく。
赤く焼け、閉ざされた目は夢見るのだ、夢を、夢を、夢を。
── 知りつくし、知りつくされた、地平の手前、かつて知った拡大する輪郭の手前、── おそらく人は、捧げるものが何ひとつなくなった時に、滅びてゆく。
(1/6)

ある種の書物や音楽への退屈。
── そこでふたたび招かれるものがある。
少年時代、あの冬に入る日、広野の彼方に見た山々。零度の行為の表出。
── 決して求めてなどいなかったものへの退屈が、それを明らかにする。
(1/16)

帰省する数日前に、雪が降ったそうだ。日陰にはまだ雪が残り、風の冷たさ。
友人たちと車で行った場所はひさしぶりだと思ったが、数えてみれば八年ぶりになっていた。(2/11)

たとえ恐怖というものが世界の側にあるのだとしても、そこから逃れ、熱に焼かれる愚自体が苦痛だ。
── 口実は無数にある。だが怠惰の素顔の先に、「世界」はある。(1/19)

恐怖感すらが、しょせんは休息なのだ。── 行き場の一切の壊滅。(2/4)

逃げ続け、手近かなものを手に入れ続け、知らず墓標は後ろに並び立つ。
── ただ一度の勇気で、幸福は微笑んだのに違いない。
だが手近かな、がらくたを手に入れ続け、── 振り返れば墓標が連なるなら、振り返ることすらできない日々。(2/7)

彼方の灯台は、── 少女たちの表情の中にも、風と光のざわめきの中にも、僕の身体にも、ただ休息なき休息の中に、光を放ち続ける。(2/19)


雨の夜。── どこか遠くで、置き忘れた僕の持ち物が、たぶん乗り物か何かが、僕の見えないところで雨に打たれている。
僕は多くの場所をめぐったはずだった。
── あの日々、Fさん、Iさん、Sさん、Rさん、Mちゃん・・・。
── 何が、僕の言葉を語っていたのか。雨の中、腐食した悲哀は、もはや息絶える。
彼方からは電車の音が雨を縫い、山々の深い闇に反射し続けている。
── 冷淡で残酷で、しかし必ず正しい零度の光と風とは・・・。(9/23)




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