※一次
「じゃあ賭ける?」
「何を」
かた、と机の上にコインがおかれた。いやいや、まさかそれを?と言いたくなるのをこらえる。
そんなんじゃ、ないはずだ。
「誇り、て、やつよ」
「……んなもん、賭けるもんじゃないでしょうよ」
「ふふ。そうか。そうね」
今度はそのコインをくる、と裏へ返す。何がしたいのか見えず、ただ沈黙する。
くる、かた、くる、かた。何度も繰り返されるそれにだんだんと腹が立ってきた。
「なんなの」
「コインには裏と表があるわよね」
「……なに?すべての物事には云々ってやつ?」
「わぁ、野暮!先に台詞をとるなんて!」
「結論を言いなさいよ」
わざとらしく両手をあげ、驚いた風の顔を見せる女に苛立つ。首元をひっつかんで野郎か、などと思うのを右手を押さえてこらえた。
「あ、そ。じゃーあ率直に」
「どうぞ?」
「正義も悪も、ほんとにあると思ってる?」
「また何を適当な」
「適当じゃないわ」
ぴしゃ、と彼女がさえぎる。おちゃらけた様子をすべてなくして、まっすぐ射抜く視線で。
「ここから先、このままここで何をしていくのか。それを考えたことあるの?」
「それ、は」
言葉がつまる。ここにいて、為すべきと言われたことを為していけばそれで生きていける。考える必要なんてない。考えるな、と言われたことはなかった。
ただ、考えることは疲れることだから。だから、考えないことを選んだのに。
「あなた、どうしたいの」
ただただそう問うしかなかった。
考えたく、ない。
彼女は、ふ、と呆れた、と息を吐いてそして見たこともない笑顔でいい放った。
「会いたい人が、いるのよ」