※一次
インスタントコーヒーの瓶が空だ。誰が飲み干したのだろうか。もっともこの家には二人しかいないので、自分か彼か、である。
正直、記憶はない。自分がこの瓶を空にしたとは思えない。だが、カフェインをとることはもはや無意識にさえ刷り込まれた行動だ。そしてさっきまで仕事をしていた自分が一切飲んでいない、ということは考えづらいのだ。
うーん、と頭をかく。同居人に聞けばわかるだろうか。その選択肢を浮かべて、ため息と共に捨てた。
「いや、わかんねーな。真実がどっちにしろ僕に押し付けるだろーな彼は」
結論はそれである。
彼も重度のカフェイン中毒である。下手をすると自分よりもコーヒーを口にする。この瓶を空にした犯人の可能性は十分だ。十分なのだが、絶対に素直に吐かない。わかりきっている。
「……ま、買い出しはどうせいかなきゃなんねぇかぁ」
荷物持ちにつれていくしかあるまい。共犯、ということで。