131104_青空 | GreenCherries'Diary

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biceのこと、自分のこと。
思い出したこと、思い出したいこと。

別にそれなりに普通にやれるつもりで出勤したけれど、会社の人に優しい言葉をかけられたら、急に涙が噴き出してきた。
あぁ行かなきゃいけないんだ私、って思ったんだよね。情けなくもぶざまにぼろぼろ泣きながら会社を出た。
迷惑かけて、心配かけた。自分で自分の気持ちを理解できてなかったせい


あぁ普通の考えでは親が急にしんで次の日会社来てるってそんなにびっくりすることなのか...と冷静に捉えてたけど。
嘘だね。そんなこと本当はわかってたと思う。ただあまりに状況がおかしくて、笑いにするしかなかったんだな。誰かが自分以上に驚いてくれたら、それで他人事にできる気がしたんだろ


たまたま前日の夜、自己分析みたいな本の話になってさ、「渡邊さんはあざむくタイプですか?」って聞かれたばかりだった。
他人はどうでもいいけどさ。自分まであざむくのはやめようよって。誰のためのあざむきなの、それ。


新宿の地下を早歩きしながら、斎場近くの母親に電話して、ぎゃーぎゃーわめいた。久々な空気感じながら、ああもう父親のことでこんなに取り乱すこともないんだってまた客観的に捉えて。
家に帰って、黒ネクタイしめて、田舎駅へ。時間も気持ちもぎりぎりだと思った。でも不思議に間に合うって思ってた


ただやくだけのことになんの意味があるのって思ってた。わからないけど、わからないんだけど、もし後で答えが出ても絶対に間に合わないわけだから。
それに骨ってふたりではさむのに。母親しかいないんじゃかわいそうじゃないって。そんなのだめに決まってるじゃないって、急に頭がシンプルになって


タクシー乗ったらどんどん空がくもってきて、斎場着く頃にはワイパーが効かなくなってた。あぁこんなどんよりした灰色、絵に書いたような不幸、悲しすぎるじゃないって、また客観的に捉えて。
斎場の敷地をさまよってやっと辿りついた自動ドア。向こうで母親が驚いた顔してた。丁度やき始める所だった


手をあわせて、目をつぶって、ばかみたいに泣く。あぁこういう場所で号泣しちゃうとか本当にあるんだ...って一瞬また思ったけど、それもあふれてくる感情にはかなわなかった。
ただただ哀しかった。なにがとか、なんでとか、なんのためとか、何も見えなくなってた。全てが自動みたいだった。



待合室でやたらしゃべりまくる。今までのこと、今日のこと、これからのこと。珍しくとても親子らしい時間だなとか思いながら。
ふとだまってしまえばまたばかみたいにあふれてくる涙。泣いた分だけお茶を飲み干す。飲んだ分だけトイレに行く。ふとまた泣いて、お茶飲み干して、そのくりかえし。


どこぞの大富豪か、大人数が近くで泣いてた。母と私ともうひとり。ひっそりさいごを見つめる私達はなんてみじめなんだろうって思ってた。
骨の解説が始まる。あぁこの人、小林すすむに似てるな。あぁあっちははるな愛だ。あほなこと考えてる私、えらく骨をほめる小林すすむ、なんだかおかしかった。


まだ小学生の頃、親戚のおじさんが早くになくなった時。斎場にいるのが本当に怖くて、ずっとその哀しい記憶のままだった。
だけど父親のお骨を見ても、昔みたいに怖くも哀しくもなかったんだな。むしろこんなにいっぱいあるのかって驚いたり、頑張って生きてきたんだって誇らしくなってしまってさ。


儀式の全てはしんだ側じゃなくて、生きていく側のためのものなんだなって。だから泣くだけ泣きまくって、やきおわったら笑ってた私はとても正しいのかもしれないって思った。たぶんお父さんも笑ってた。
そういえばお花を入れてあげるって誰が考えたんだろう。すごく不毛でとても素敵に思えてしまった


斎場を出る。外は快晴。雲の切れ間からいたいほどにさす光。あまりの天気の変わり様にはるな愛も微笑む。
なかなか来ないタクシー。抱えたお骨はやたら重い。白い布、黒いネクタイ、ぬけるような青い空。おかしな組み合わせの前で哀しみなんてどこにもなかった。さぁ家に帰ろう。頭にはそれだけだった


あたたかな青空を見つめながら、ふと7年くらい前の記憶を思い出してた。
その頃私が精神的に頼ってた人に話したこと。「雨降らないよ。私が雨の曲聴いてないから。」いいね、そのルールって彼は笑ってた。
そうだ、あの頃の私はそんなことを当たり前に信じてた。そんな時がまたやってきたんだ。


渋滞をすりぬけて、タクシーが家に着く。着替える間もなく2階に上がる。私の部屋の隣にお父さんの場所を確保する。母とのどたばた作業。
急にくもりだす空。今日一番のどしゃぶり。こらえてたように雨が降る。
「そうね、こういうこともあるのね」母が思い込みを信じてくれたことがうれしかった


今日ぐらいは豪勢に。母とふたりで出かけた焼肉屋さんはあまりおいしくなかった。
ピビンパと冷麺を大量にのこした。「はい、お父さんの分。これ全部食べるからいいの」
お酒を飲んで、けらけら笑ってみた。こんな楽しげな食卓、遅すぎたけれど、やっぱりなにも哀しくなんてなかった。