いつものように、
卵をスーパーの棚に陳列していると、
買い物客の男性が「一つちょうだい」
と話しかけてきた。
丁寧に一つ、男性に手渡し、
「いつもありがとうございます」
と伝えると、
「どこから来たの?」
と、私達家族が他所から移住してきた事を知っているようだった。
かれこれ7年が経つのだけど。
富山から来たと伝えると、
良いところだよね、行った事あるよ、
と幾つか会話を交わし、男性は去って行った。
引き続き、私は棚に卵を並べ始めた。
卵を並べ終える頃、
さっきの男性がまた通りかかり、
お宅の卵は有精卵か?と尋ねてきた。
圧倒的なハーレム状態だが、
雌が整う感じがするので、雄も何羽か一緒に飼って自由にさせているから有精卵と言うことになる。
人工的な受精をしているわけではないので、
絶対とか、完全に言い切ることはできないが、
まぁ、日中あれだけ取っ替え引っ換え
自分の縄張り内にいる雌は一通りお試しされているだろうなぁと、
予想はつくわけです。
(だいたい、有精卵と謳うだけの為に人工的な受精はしたくない主義。自然に飼いたいの。)
まぁ、そんな事細かにしゃべってないけどね。
「有精卵ってのはな、生命力があるから温めれば雛が孵るだろ?
無精卵をいくら温めても孵ることはない。
そこに命があるかないか、決定的な違いが生命力なんだ。」
一体何の話を始めるんだろう、
この人うちの卵で孵化させたいのかな、んなわけないか。
そして男性は唐突に、
「昔、○○(マヨネーズ作ってる大企業さま)の女の営業と話した時に、使ってる卵は有精卵か聞いたことがあるんだよ」
と切り出してきた。
「お宅のマヨネーズに使っている卵は有精卵か無精卵か聞いたら、無精卵だと言う。
なぜ有精卵を使わないのかと聞いたら、有精卵と無精卵の栄養成分を調べたけど、ほとんど変わりないって言うんだ。」
なるほど。
何かちょっとでも、有精卵の方が数値が優勢ですよ〜(有精卵なだけに笑)て訳でもないのね。
そして、筍って知ってるか?と聞かれ、さっき話した生命力の伏線を回収しに来たと見て、
私「あの、コンクリートを突き破って生えてくる筍の事ですか?」
男「そう。筍の生命力は凄いんだよ。
あの硬いコンクリートを突き破るくらいだから、どれだけ硬いのか割ってみると、中は手で割れるほど柔らかい。」
うむ。
言ってる事はわかるが、イマイチぴんとこない。
「瓦割り知ってるか?空手の瓦割り。
あんな硬い瓦を、瓦より柔らかい手が割るんだよ。」
おぅ、わかるぜ。
空手家ってスゲェって話か?(心の声)
「言いたい事は分かるか?
生命力ってのはコンクリートや瓦を割るんだよ。
だから、有精卵と無精卵は全く別モンってわけよ。」
・・・・・。
お、お、お、おぉーーーー!!!
おっちゃん、褒めてんのか??
褒めてくれてんのか??
やっと意味がわかった私は、
ホクホクしながら、
「為になるお話、ありがとうございました!!」
と伝えると、
「この話を○○(マヨネーズの)の営業の女にも話したんだけど、その女は有精卵を食べてるってさ。」
と、去り際にほくそ笑んでいた。
そんなオチまで、、、
おっちゃん、一体何者??
↑卵のラベルに、バッチリ有精卵って謳ってるぜぃ!!