自然栽培 1反歩 を 方針転換 | 減農薬のりんご栽培

減農薬のりんご栽培

(木村秋則氏の自然栽培に近づくために)

自然栽培を始めて2ヶ月経過しました。


黒星病が多発しておりまして、北側の民家を越えた40m先の北側の園から黒星病が多発だという苦情がありました。

因果関係は判然としませんし、明確に判定はできない性質のものですが、 隣接している東、南、西からではなく、最も距離を隔てた北からの苦情?・・・・


あの園は有機質肥料を毎年投入していますので、病気害虫を招く素地はあります。

さりとて、事を荒立てたくはありませんから、やむなく薬剤散布をせざるを得ません。

青森、木村さんの手法は駄目だと口を同じくして栽培者の誰もが批判しますが、実際に実践してそういう人はほぼいません。
批判のための批判で終わる。

試しに自分で3年間やってみて駄目なら体験と実践からそう言えば重みもあります。

今年 黒星病が多いのは自然栽培園に限ったことではありません。
現象の原因と結果は目に見えない世界のことですから判然とはしません。

地区には2-3人が、批判を物ともせずに無農薬栽培を長年実行しています。
残念ながら、木村秋則さんが確立した方法に則っておりませんので、様々な病虫害を抑えこむことはできていないようです。

今回苦情を言ってきた人は、生協への出荷でそれなりに薬剤の制限の中で処方している人なので、無視もできません。

彼は50%減農薬はしていませんが・・・・(50%減らすのは誰にでも可能です)
その先には自然栽培=無農薬しかありません。

JAS有機栽培では、硫黄水和剤と硫酸銅ボルドー剤は認められていますので、それに移行するか・・・という判断です。


来季に向けてこの1反歩の計画です。

基本的には、来季はこの1反歩での自然栽培は継続しません。
理由は、やはり風通しが良くない園で、病気害虫が発生しやすい環境であるということです。
まだ、剪定が甘いため、木村式自然栽培を始める準備ができているとは言えないこともあります。

1) 来春、芽吹く前に50倍希釈の高い濃度で枝を食酢で洗う。

2) その1週間後の葉が展葉を開始した時点で200倍希釈で散布。

3) 更に開花直前にも500倍希釈で花芽を洗う。

4) 開花受粉後の落花期に500倍希釈で散布。


これで、ある一本の木の黒星病がどうなるかを検証します。

他の木は落花期に 薬剤散布(チウラム)をします。

そして、園全体を JAS有機栽培の薬剤使用、あるいは50%減農薬体系のどちらかで栽培します。

今シーズンは下草を伸ばしたまま刈らず、毛根を圧迫断裂しないよう重い重機械(スプレヤー)で走り回らずに、動噴による手散布をしております。
その効果を確認する意味で、来季も手散布とする予定です。

手散布の時間と労力の負担を減らすために、老木3本以上を伐採して 20本以下にします。



今のところ、この園に接する東西と南の園に変わった様相はなく、葉に黒星病も出ていません。
今回の苦情主の園とは違い2-3mの至近距離で隣接しているにもかかわらずです。
隣接する園は全てが、花芽が開花し、受粉前、落花期に薬剤散布をして黒星病やうどん粉病の対策をしています。

西の園の男性は、ある程度木村式自然栽培を知っているせいか、「黒星、ダニに気をつけて・・・多分こちらは散布しているから大丈夫だと思う。。。じゃ、頑張ってみて」 と挨拶した時に言われました。

たしかに、日々その園を眺めていても隣接する枝葉や実に症状はありません。

苦情主に「西東南に変わった様子はありませんねぇ」 というと、「今年は南風で北に飛ぶ」と宣う訳です。
低気圧で雨が降るときは南風あるいは西風です。

しかし、雨が降り胞子が活発化すれば、2-3mの距離を移動してとりつかない・・・筈はありません。
たとえ、風がなくとも・・・。

こういう隣接園との比較でも、北に40m離れた彼の円だけが特別被害を受けてそれ以外は無傷・・・というのも道理がありません。

お互いが主張をぶつけることもできますし、こういうケースで訴訟の判例もあります。
仮にどちらが勝訴しても、お互い失うものはあっても、得る物はありません。

彼が勝訴するにしても、今私が対応を拒めば園の被害が止まらないこともありえます。
そうなりますとその園の収量は落ち販売が減り、顧客を失うことになります。
判決がでるまでには数年かかるのが普通ですから。

彼にとって大事なことは、私の「対応します、 ボルドーを散布して葉と実を包めば一ヶ月抗菌作用で押さえ込めるでしょうから」

・・・という言質が欲しかったということが分かります。

話がこじれて物分かれとなれば、事態の収束は見込めず、彼の園は秋まで不安材料を抱え込むことになるからです。

問題は、北信地域で最も肥沃といわれる土地に、大量の有機肥料を毎年投入して窒素過多=病害虫を招く体質の園・・・に あちらがしているということです。

西日本の生協への出荷には、使用する薬剤の制限がありますので、そうした不自由さは彼も良く認識しています。

薬剤を減らす、散布回数を減らす、できれば無農薬化の意味を知らない筈はありません。

今回、園の環境という意味では、自然栽培にあまり向いていませんので、私の選択の甘さもあります。
まず、本数を減らすことが第一、できれば他の風通しのよい園地。

あるいは、老木で生産性が落ちた一反歩を若い苗に更新し、食酢散布すれば、樹体が小さいので仮に発病があっても問題視されません。

薬剤と肥料を使う慣行栽培は、誰にでもでき収穫まで問題はほとんどありません。
マニュアル通り。

昨年までは50%減だ、ネオニコも使わない、それで味は天下一品・・・という自負もありましたが、それは農薬を使う慣行農法という意味では所詮50歩、百歩の世界です。

それでは、自分の中で胸を張れなくなってしまいました。
面白くないんです。

りんごでも3年自然栽培を着実に実行すれば、無農薬化が実現することは木村さん、それに続く2-3名の実績が証明しています。

木村式自然栽培研究会は全国の県で発足し、果樹では桃、なし、葡萄などで実績がついてきています。
野菜、稲作は枚挙に暇がありません



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そして、以下は状況を比較検証した結果です。


今日も出勤前に1時間半余り摘果作業をしました。
農薬を通常散布している慣行栽培の園です。

すると、4本ある太い主枝一本に大体20-30個の黒星病の実があります。
x 4ならば、1本の木に100個弱です。

今年は実のつきが非常に多いので、実がお互いに密着して混んでいる状態では、薬剤のかかりが悪い面に黒星病が発生し易いです。

1反歩に20本ありますから、少なくとも2000個は発病罹患しています。
20kgリンゴ箱(コンテナ)に 一反歩あたり2-3箱・・・彼の言う数と同じです。

これは、離れた別の私の園でもそうですし、隣の園の若手も今年はそうだと言ってます。

すると、例の北側の御仁が言う 今年多発した・・・というのは、通常の症状ということになります。

勘違い、思い込み、言いがかり、濡れ衣かもしれませんねぇ(苦笑)

しかし、被害者意識から他の何かのせいにしたいとしても、彼に当園の黒星病の実態を見られてしまいましたので、無農薬栽培 → JAS有機栽培基準 へと後退します。

今回 化学合成薬剤を使わないと、黒星病が園内で特にふじに多発するという現実を知りました。

普通の農家の感覚でしたら1反歩だとしても犠牲にしてまでそんなことを体験しようなどとは夢にも思いませんし、怖くてできません。

兼業農家で収入が月々別にある者の道楽だと言われればそうでしょう(苦笑)

たとえ一本、1個でも掛けたコスト、手間暇時間は無駄にしたくはありません。

やろうにもやれないことを、実地で体験したことは金銭では全く図れません。
お金で買える体験ではないからです。

これを専業農家の木村さんが全部の園で9年も試行錯誤してきたのは、驚き以外の何物でもありません。


余談ですが、秋映 1000個 (5kg x 40箱 )
紅玉 300個 (5kg x 20箱)

は、袋掛けを終えていますので、順調に収穫できますれば、化学農薬を今後もほとんど被らない 超々低農薬りんご になります。

この後は、収穫までJAS有機栽培で認められた自然界に存在する硫黄、硫酸銅、BT剤(微生物細菌)を5-6回散布します。

袋掛けした実に薬液が直接あたりません。
薬剤は葉と木を病気害虫から守るための、JAS有機基準のリストのものです。
農薬としてJASでカウントされる数は ゼロ です。

因みに昨年までは、6回散布にて、殺菌剤5剤、殺虫剤5剤、殺ダニ剤2剤で 合計12剤使用していました。
JAS有機栽培基準で11カウントでした。

それが今年は農薬カウントが一反歩についてはゼロになります。

木村式自然栽培は、JAS有機栽培の農薬カウントでやはり ゼロ。
なにしろ、使用するのは水と食酢(特定農薬に分類)だけです。

食酢が特定農薬に農水省で分類しているために、無農薬とは公称できませんが、そのかわりに自然栽培という呼称を掲げているのです。

21世紀は 自然栽培の時代です。