20日投稿記事 | 減農薬のりんご栽培

減農薬のりんご栽培

(木村秋則氏の自然栽培に近づくために)

転載:



この原因になっていたのが、アメリカの大手政府系住宅公社のファニー・メイとフレディー・マックの経営不安だ。7月上旬からすでにこの二つの米国版住宅金融公庫の経営がおかしくなっているのではないかという噂がウォール街とワシントンを中心に流れていた。


それで、一週間前の13日に、アメリカのヘンリー・ポールソン財務長官は、休日だというのに、それも財務省前の通路のようなところに記者会見のステージを設けて、周りにスタッフも従えず、一人で記者会見をした。

これを私はCNNテレビで見ていたが、きわめて異様な光景だった。


サブプライム問題とアメリカ住宅価格の低迷に端を発する問題は一年かかって、アメリカ最大の住宅ローン会社の危機が取りざたされるまでになった。3月半ばに、大手証券会社のベア・スターンズが破綻して、アメリカのウォール街の巨大銀行のJPモルガン・チェースに一株10ドルで買収されて以後、何度か、「危機は終わった」と楽観的なエコノミストが言っていたが、水面下では危機は進行していた。


それでも、ファニー・メイとフレディ・マックの問題が浮上する前に、別の証券会社のリーマン・ブラザーズかメリル・リンチが破綻して、他の勝ち組証券会社のゴールドマン・サックスの買収されるのではないかという観測も強かったのである。

しかし、ファニー・メイとフレディ・マックの危機は、そのリーマン・ブラザーズが7日に出したレポート、「会計基準が厳しくなれば合計8兆円の増資が必要である」という分析、セントルイス前連邦準備銀行総裁の「両社は破綻状態にある」との発言をきっかけに大きく株価を下げている。

同様に、ファニー・メイの株価チャートを見てみると、7日以降の下げ、ポールソン会見の二日後からの上げがものすごい。それほど株価は不安定な動きをしていると言うことだ。


ファニー・メイ(連邦住宅抵当公庫、Federal National Mortgage Association ) と フレディ・マック(連邦住宅金融抵当金庫、Federal Home Loan Mortgage Corporation )というのは、元々それぞれ1938年、1970年に作られた組織である。共に、本社はワシントンDCにあることから分かるように、民間資本で支えられているものの、分類としては「政府系金融機関」と観るべきである。

ファニー・メイは、1938年はフランクリン・ローズヴェルト大統領が推進していた、ニューディール政策(社会主義政策)の真っ最中で、アメリカの民衆がたやすく住宅を手に入れられるように住宅ローン融資を手がけるための、政府系組織として成立している。戦後の1968年には、ファニー・メイは公的な保証を残した形で、株価を民間に公開し、一種の特殊会社として独立しており、ファニー・メイではまかないきれない部分を補うために同様の特殊会社である、フレディ・マックを設立した。これが1970年である。

そのような経緯から、両社は、別称GSE(政府が支援する事業体、ガヴァメント・スポンサード・エンタープライジズ)と言われている


アメリカでは住宅バブルが崩壊した後は、民間銀行は住宅ローンを手控えるようになっており、特にこの二つの政府系公社に住宅ローン事業を肩代わりさせていくことを目指していた。ところがそのために、日経新聞(7月15日付け)が報じているように、「両社の短期債務と住宅ローン担保証券の合計は、日本の名目国内総生産に匹敵する5兆ドル規模」に達している。

これを内訳的にみていくと、ファニー・メイが一年間に借り換えるか返済しなければならない短期債務は、216ビリオン、つまり2160億ドル、そして、同社の去年のネットの損失額は、21億ドルに達している。また、フレディ・マックに関して言えば、同様に2910億ドル、31億ドルという風になっている。(フィナンシャルタイムズ、7月15日記事)


そして、同日のFTの記事によれば、アメリカの住宅ローン債務が12兆800万ドルであるのに対して、ファニーとフレディが保有するか保証している分は、その実に半分の5兆2000億ドルに達している。つまり、住宅価格がこのまま値下がりして行くなど、住宅不況に先が見えない場合、この二社が抱える負債はさらに大きくなるわけである。資本を増強するために、両社は増資する必要があるが、民間での増資先が見つからない場合には、大きなパニックが発生することは目に見えている。


そのために、ポールソン財務長官、バーナンキFRB議長、ガイトナーNY連銀総裁らは、事前に政府の公的資金注入を宣言しておくことで、危機を未然に防ぐという策にでた。

ところが、日経が同じく15日に報じているのだが、当初はポールソンは住宅公社の救済のための公的関与には及び腰だった。それがひょう変して、公的資金を必要とあれば幾らでも投入していくし、ベアスターンズ危機の後、FRBが商業銀行以外の投資銀行にも適用するとした、特別融資(日銀特融と同じ)の融資枠も両社にも適用すると言い始めた。


なぜ、アメリカ政府当局の態度が豹変したかというと、14日月曜日には、フレディー・マックの短期資金を調達するための30億ドル分の債券の入札が控えていたからだ。そして、週末のニューヨークタイムズの一面に、「政府がファニーとフレディを国有化( takeover、テイクオーバー )することを検討している」という見出しが躍ったからである。この債券入札が上手く行かなければ、最大の住宅公社の資金繰りに大きな穴が空くと考えたのである。

 そこで、ポールソンは休日の財務省前の玄関での会見を行ったのである。この危機を演出した記者会見が功を奏して、債券の入札が無事終わり、15日以降株価は反発した。


ただ、懸念は残っていて、リーマン・ブラザーズ同様に、ファニーとフレディは巨大なヘッジファンドのトレーダーになっているという点である。日経の7月20日付け記事では、太田康夫編集委員が、「(両社の)幹部のボーナスは収益に連動し、政府系にもかかわらずヘッジファンドばりの利益追求に走った」と解説しているが、まさにその通りで、投資銀行並みにレヴァレッジを掛けた運用をやっている。(レヴァレッジ率は、「“保証残高”の“保証業務に割り当てられた資本”に対する比率、ファニーは150倍、フレディは125倍。住宅市場が低迷しているので、これでは自己資本が足りないのではないかといわれてきたわけである)

そんな資本過少でも両社がやっていけたのは、半ば政府系という暗黙の理解があって、「いざと為ったら政府が助けてくれるよ」という安心感があった。モノライン会社が、格付けの低い地方債の格付けをトリプルAにする保証業務を行っていたのと同じである。


このファニーとフレディが発行する債券を、日本の金融機関も数兆円の規模が買ってしまっていた。これに関する損失について、日本語のニュース記事(共同通信)は次のように報じている。


 (引用開始)

農林中金が5兆円超保有 米政府住宅金融の関連債券
2008年7月17日(木)22:27 (共同通信)

 農林中央金庫は17日、米政府が緊急支援を表明した政府系住宅金融2社の発行する政府機関債と住宅ローン担保証券を、3月末時点で計約5兆5000億円保有していたことを明らかにした。これまでに判明している国内大手金融機関の保有残高では最大規模。実際に損失が生じる可能性は低いとしている。保有残高の内訳は、政府機関債が約2兆円、住宅ローン担保証券が約3兆5000億円。

「共同通信」(7月17日配信記事)
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/business/CO2008071701000985.html

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日本の金融機関が保有している米GSE関連債券
2008年7月16日(水)06:45 (ロイター日本語版)

 [東京 15日 ロイター] 米当局が政府系住宅金融機関(GSE)の連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)、連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の2社の支援策を打ち出した。GSEの関連債券(GSE債)について、2008年3月末現在の日本の主要金融機関の保有状況を調査したところ、日本の大手金融3グループの保有残高合計は約4.7兆円となった。


 また、生命保険会社のGSE関連債の保有状況は、機関債と住宅ローン担保証券(RMBS)の合計値で、日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命の大手4社の合算は4兆円を超えた。個別にみると、日本生命は2兆5000億円、第一生命は9000億円だった。


 大手証券会社では、大和証券グループ本社<8601.T>がGSE2社関連のRMBSを1811億円保有している。野村ホールディングス<8604.T>については、RMBS業務から撤退し、米国のプライマリーディーラーの資格も返上したたため「ポジションは少量」(広報)だという。


 市場関係者によると、ファニーメイとフレディマックの2社のGSE債の発行残高は約5兆3000億ドルで、米国内の住宅ローンの半分を占める。このうち、機関債は約1兆6000億ドル、住宅ローン担保証券(RMBS)は約3兆7000億ドルという内訳となっている。


 米財務省の2007年6月末時点の統計によると、全GSE債の発行のうち海外の政府・民間セクターによる保有残高は約1兆3000億ドルで、このうちアジア勢が約8000億ドルを占める。内訳は中国が約3700億ドル、続いて日本が約2280億ドルだった。

ロイター(日本語版)(7月16日配信記事)
http://news.goo.ne.jp/article/reuters/business/JAPAN-327591.html?C=S

(貼り付け終わり)

このような報道の情報をまとめると、日本の金融機関が持っている、ファニー債、フレディ債は全部で10兆円ということである。これが全部損失になるかは分からないが、太平洋を挟んで日本でも米国初の金融危機が「波打ち際」に迫ってきている。これが津波に為らなければいいが。


ポールソン財務長官は、繰り返し、今回の住宅公社の救済のための公的資金注入の表明は、すぐに行われると決まったものでもなく、市場の混乱を押さえるためのバックネット(防御幕、backstop)であると表明している。しかし、一般銀行以上のレヴァレッジ比率を持つ両公社の経営が安全だというのは、もはや「大本営発表」に過ぎないのではないか。
 
イギリスの経済紙「エコノミスト」は、ポールソンの会見のどたばたを「まるで途上国政府のようだ」と揶揄している。

ただ、ファニーとフレディの危機以外にもアメリカでは深刻な危機が進んでいた。それは。カリフォルニア州にある地方銀行のインディーマックの破綻である。この銀行は、住宅ローン会社の大手で、サブプライム危機の主役の一つである、カントリーワイド・ファイナンシャル社から分離して出来た銀行である。この銀行が、経営破綻したのだ。アメリカでは、破綻した銀行は、日本の預金保険機構に相当する、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に置かれる。インディマックが閉鎖されたのは週末の11日で、この間銀行は閉鎖されて、週明けの14日からカリフォルニア州内の各支店では、預金保険で保障されている約1000万円以上の預金者達が夜明け前から行列を作って並び始めた。


炎天下の中できた行列は火曜日にも続き、時間切れで自分の預金を引き出せなかった預金者が騒ぎ始めたので、警官が「騒いだり、列を乱したりすれば逮捕する」と宣言する騒ぎになったようだ。(現地の新聞、カリフォルニア・デイリーニューズの記事を参照した)


これは、俗に言う「バンク・ホリデー」というやつである。アメリカでは、シティバンクやJPモルガンのような巨大銀行、そして、ファニー・メイやフレディ・マックのような巨大住宅公社は、「あまりにも大きすぎて潰すにつぶせない」(too big to fail)だという考えから、今のところ取り付け騒ぎが、1930年代のウォール街のようには起きていないが、地方銀行の経営危機は深刻だといわれている。今年になってから、FDICの調べでは、6つの地方銀行が破綻している。ところが、同調べによると、問題銀行としてFDICは575の銀行を上げているという。(インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙、7月15日記事)


去年の秋口に発生した、イギリスのノーザン・ロック銀行の取り付けから一年、とうとう預金者の群れがアメリカで列をつくったわけである。大量の紙幣が各支店に運び込まれて、預金者に払い戻しを行ったようだ。

今年になって、地方銀行の破綻が相次ぐことは既に予測されており、アメリカ政府当局は、銀行の破綻法制を整備するという動きに出ている。バーナンキが、一部銀行の破綻にそなえて、破綻法制と受け皿銀行の整備を整えると発言した。そのとたんに銀行株が大きく下げている。バーナンキ議長の無能ぶりに皆、呆れている。


アメリカの手先の竹中平蔵は、かつて、日本の不良債権処理の問題を論じるとき、アメリカの雑誌のインタビューに対して、「大きすぎてつぶせないということはない」と発言したことがある、その竹中が、このアメリカの金融統制的な動きをどのように弁護するか見ものである。

 なお、銀行の破綻(はたん)法制整備については、以下の記事がその動きを伝えている。これは7月8日にバーナンキがバージニアで講演した内容を報じた記事である。日経新聞の電子版からの引用である。


(引用開始)

FRB議長、投資銀行に破綻処理制度 米議会に提案へ

 【ワシントン=藤井一明】米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は8日、証券会社の機能を持つ投資銀行を、市場の混乱なく破綻処理する法整備が必要との認識を示した。支援先(スポンサー)が見つかるまで、一時的に業務を引き継ぐ公的な受け皿銀行づくりと、FRBが融資を柱に直接支援する枠組みづくりの2方式を議会に選択肢として示す考えだ。FRB議長が投資銀行の具体的な破綻処理制度に言及するのは初めて。


バージニア州で金融の規制と安定をテーマに講演した。資本不足に陥った金融機関が、増資による自主再建の見込みがなく、合併や買収の相手も見つからない場合は、資金繰りに行き詰まって破綻する。普通の企業と違うのは資金繰り難が金融市場での取引の停止を通じて連鎖し問題のない金融機関にまで深刻な影響を及ぼす点だ。預金と融資を主に担う通常の商業銀行には米連邦預金保険公社(FDIC)による受け皿銀行を使う道があったが、投資銀行向けの手段は未整備だった。(00:02)

日経新聞(電子版)2008年7月9日更新
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080709AT2M0803L08072008.html
(引用終わり)

このように、7月4日のアメリカ独立記念日が終わった後、金融情勢は去年と同様にさらにきな臭さを増してきている。経済評論家のケヴィン・フィリップス氏は、著書『バッドマネー』(未邦訳)の中で、夏に起きる金融危機のことを、「8月の砲声」と呼んでいた。アメリカの金融危機は、第一次世界大戦の勃発(=8月の砲声)と同じように、アメリカにとっては、覇権国の地位を揺るがしかねない戦争そのものだと指摘しているのである。おそらく、今年の8月中旬にも大きな動きが金融市場であるのではなかろうかと私は見ている。


そして、世界的にインフレーションの危機が迫っている。日本も、未だに、太田弘子経済財政担当大臣がいうような「デフレ経済」であるわけはない。インフレに関する統計調査には大きなカラクリがある。インフレ指標となるコアCPIという数値には、石油価格と食料価格が含まれていない。これはアメリカでも日本でも同じだと思う。最も重要な生活必需品が、インフレ計算のための指標に含まれていないという大きな統計上のゴマカシがあるのだ。石油や食糧を加えて計算すれば、すでに日本はデフレ経済を脱却して、インフレ経済になっていると思う。

さらにいえば、アメリカの金融マスコミは、未だに「アメリカは不況入りしたかどうか」ということを論じているのである。


民衆はアメリカは不況入りしたことを肌で感じでいる。私自身、食堂で値上げが相次いだり、ご飯や野菜の盛りつけの量が少なくなっているにもかかわらず、値段は上がっていることから、原油と食糧に端を発するインフレの進行を肌で感じている。これで、「まだ日本はデフレ」だという政府は頭がおかしいのではないかと思う。

 マケイン大統領候補の経済アドバイザーだった、フィル・グラム上院議員が、「アメリカの景気後退はアメリカ国民のの脳内で起きているに過ぎない」との「メンタル・リセッション」論を展開したところ、大きな批判を浴びて、アドバイザーの地位を追われた。この事が示しいているように、ウォール街以外ではアメリカは不況入りしたというのが大衆のコンセンサスなのである。


原油高の責任は投機活動とドル資産を回避した資金移動が大きな要素になっている。石油が上がれば、食糧が上がる。これで一般人の生活は苦しくなる。儲けているのはゴールドマン・サックスのトレーダーとそれに群がる金融業界の人間だけだ。いわゆる「スーパークラス」たちは、民衆の生活苦を肌で感じないが、暴動だけは起こされては困るので、警察の増員や治安の強化をテロ対策の名目で進めている。


アメリカ人も地道な節約努力をしているということは海外のメディア報道でもそれとなく書かれている。

例えば、スーパーに買い物に行く回数を減らして、自動車のガソリンを節約しているし、5月に配られた、日本のかつての「地域振興券」のような「戻し税」の分の金額を生活必需品の消費に当てている。銀行の取り付け騒ぎがあったカリフォルニア州では、払い戻しを受けた預金を、自宅のベッドのマットレスの下に隠しておくと答えた人もいた。他の銀行には危なくて預けられないというわけである。


そして、今週末には、ウォール街の大銀行の四半期決算が出た。シティ・グループの4-6月期の最終赤字は2600億円だった。金融機関の決算前に、ウォール街の銀行に対して、ヘッジファンドほかの投機筋から空売りが掛けられている問題が浮上し、アメリカの証券取引委員会にあたるSECでは、空売り規制を導入した。以下のダウ・ジョーンズの日本語版記事がそれを伝えている。


(引用開始)

WSJ-米証券業界、空売り規制への対応準備に追われる
7月17日17時21分配信 ダウ・ジョーンズ


ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)米証券当局が空売りの規制強化に動いているのを受け、米証券業界はその対応準備に追われている。新規定は21日に施行されるが、証券各社はその前に新たな統制を実施しようと急いでいる。


米証券取引委員会(SEC)による異例の措置により、証券会社は新しい必要条件を満たすべく、バックオフィス業務を微調整しなければならなくなる。


最も頭を悩ますことになりそうなのは、現行制度では、「必要な株式を調達して決められた期日に引き渡すことができる」との合理的な確信がある限り、空売りは認められるが、新規定の下では、事前に正式な借り株契約を結ばなければ、空売りができなくなることだ。


ある証券会社幹部は16日、空売りする「株式を持っているとの確信が必要になる」と語った。

新規定の仕組みや、余分な作業に伴う費用の増加についての問題は、まだ協議中という。証券幹部らは16日朝、業界団体の米証券業金融市場協会(SIFMA)と電話会議を開き、SECの新規定にいかに対処し、明確化を求めるかについて話し合った。


SECのクリストファー・コックス委員長は、規制強化の「実施には何の障害もない」としつつも、これによって証券会社の作業が増えることは認めた。また「取引所に運営上の時間の余裕を与えるため」、SEC幹部らが規制強化の実施日を遅らせた、と付け加えた。


SECの計画がすでに空売り筋の勢いをそいでいる兆しが見られている。新規定が定める金融機関19社の株価は16日、大半が急騰し、平均で12%高となった。連邦抵当金庫(ファニーメイ)(NYSE:FNM)は2.18ドル(30.83%)高の9.25ドル、連邦住宅金融抵当金庫(フレディマック)(NYSE:FRE)は1.57ドル(29.85%)高の6.83ドル、証券大手リーマン・ブラザーズ・ホールディングス(NYSE:LEH)は3.43ドル(25.95%)高の16.65ドルとなった。これら3社の株式は数週間にもわたって容赦ない売りにさらされ、大幅下落していた。

WSJ-米証券業界、空売り規制への対応準備に追われる
7月17日17時21分配信 ダウ・ジョーンズ

(引用終わり)

この空売り規制の導入によって、銀行株は株価の下落を一応は食い止めた形になっている。この空売り規制が導入された結果の火曜日以降のウォール街の金融株の上昇率について、アメリカの「ウォールストリートジャーナル」(WSJ)は以下の興味深い図表を載せている。


この表の緑色で示されたグラフの長さが、空売り規制の導入による株価の上昇率を示していて、金曜日の段階で、リーマン・ブラザーズの株価は19.11ドル(上昇率44.6%)となり、さらにファニー・メイ(13.40ドル、89.5%)、フレディ・マック(9.18ドル、74.5%)となっているのが分かる。上昇率の小さいゴールドマン・サックス(182.84ドル、15.9%)やJPモルガン・チェース(40.02ドル、29.0%)、さらにはイギリスのHSBC(78.95ドル、9.8%)と比べると、リーマンやメリル・リンチ、シティ・グループ、二つの住宅公社の株価がいかに低迷しているか分かるだろう。日本の大和証券の株価は、88ドル前後だからかなり優秀であると言うことが分かる。

 参考までに、リーマンのここ三ヶ月の株価推移をチャートで示すと、5月前後は、40ドル後半だったことが分かる。この三ヶ月で株価は一気に下落し、一時は10ドル台前半にまで下がっていた。シティ・グループもこの7月14日には14ドルにまで下がっている。一年前は一株50ドルだった。


このようにしてチャートとして視覚化してみると、ウォール街の金融株の下落は深刻なものであることが分かる。空売り規制とフレディ、ファニー公的救済の表明、四半期決算の発表によって、この不安が収まるかどうか。実際の経済が恐慌化すれば、クレジットカードの焦げ付きや自動車ローンの焦げ付きが表面化するので、それを抱えているシティ・グループはさらに経営難に拍車が掛かるのではないか。


そして、大西洋を隔てた、イギリスも同様に住宅バブルの崩壊と不況入りを経験している。イギリスの保守的な新聞、「タイムズ」紙のコラムニストで今年80歳を迎える、ウィリアム・リーズ=モッグ(William Rees-Mogg )氏は、最近のコラムで「このアメリカ発の不況は容易に恐慌に進展する可能性がある」(7月14日付け)と指摘している。

記事URL:Times online :This recession could easily tip into a depression by William Rees-Mogg


リーズ=モッグ氏は、このコラムの中で、1929年に起きたウォール街の大暴落以降の不況に関して、経済史学者の著作を引用しながら、「株式市場の価格低迷の深刻化は、当初の暴落から数年後の大恐慌が進展していった時期に起きている」と指摘している。この老コラムニストは、1931年にイギリスが金本位制を離脱したときのことは覚えていないが、1930年代後半の恐慌が深刻化したときに、イギリス国内で失業者の群れが賃上げを求めてデモ行進したときのニュース報道を良く覚えていると回想している。


ダウ平均が、1929年のレベルには戻るには、戦争の期間を経て25年(1954年)の期間を要しているという。

その計算で行くと、同じ恐慌が起きた場合、今の株式水準に戻るには2032年まで要すると、彼は、粗っぽく算定している。


実際にその通りになるかは分からないし、そこまで酷くならないのではないかと私は楽観的に考えているが、それでもローズヴェルト大統領が、ニューディールの一環として設立した、住宅公社が「国有化」されるという話が取りざたされる状況は、何か、歴史の大きな流れや波動が一巡してまた同じところに戻ってきた感を抱いてしまう。


巨大銀行を何としてでも救済するという政府主導の恐慌押さえ込みの動きから、アメリカはもう既にウォール街主導の社会主義に体制を移行させているだろう。


 イギリスといえば、イギリスには学問道場のメンバーの一人、マッドマン(谷口誠)さんが滞在していて、この学問道場の掲示板にいろいろと現地のナマ情報を伝えてきてくれる。その中で、「ふじむら掲示板」と「在外日本人掲示板」に投稿された現地報告は、非常に雰囲気を生々しく伝えてくれているのでそれを紹介したいと思います。


(「ふじむら掲示板」より貼り付け開始)

[6162] 英国は「スタグフレーション」に既に突入 - 投稿者:谷口 誠 投稿日:2008/07/19(Sat) 02:44:02

おとといの「チャンネル4(民放で日本のTBSのような局)」が報道した夜のニュースでは、
65%の英国人が「車の運転量を減少している」と解答。

37%が「外食を控えている」と解答。

乳製品は平均で10%の価格上昇

電気代は20%上昇

ガソリン、石油は 40%上昇

今日(金曜日)の帰り道の地下鉄内でもらったフリーペーパー(LONDONPAPER)によると

洋服の大セールが、各老舗や有名店のブティック、洋服屋、百貨店で

ブランドものが 80% 割引!!! という破格セールが あちこちで行われている。

(東京の青山や神保街や新宿の全デパートが一斉に、背広をはじめとして、全ての男性用洋服を 8割びき している、というようなすごいロンドン市内の状況!!)


まさに、スタグフレーションです。


住宅と土地は昨年より 20% 下落。

失業者は、金融関係者だけで 2万人。

食料やエネルギーは 2割から5割に急上昇し、

一方で、家電品やパソコン、洋服などは、全く売れずに ダンピングが始まっている。

まさに、1929年の世界大恐慌です。 デット・インフレーション。


資産である、家、土地、債券が、暴落したことで、資産減少 失業などにより、給料という商品価格

は大幅に下落

したがって、消費に使える金がほとんどなく(ローンの返済借金 ばかり残る)、消費が縮小。

ブラウン首相は「価格高騰を前にして、無駄な食料を買わないように」 などという的はずれな

発言をしています。

今晩もスーパーで「卵」や「みかん」が高くて買えなかった、貧乏人の 谷口は 年内に、必ず、

ノーザンロックに 続く英銀行の取り付け騒ぎが起こると 確信しています。

(貼り付け終わり)

 

イギリスでも金融業界(シティ)はリストラの嵐が吹き荒れていて、2007年夏までのように、企業の巨大M&Aによって、企業弁護士たちも投資銀行家たちも多額の手数料を稼ぎ出していくという、バラ色の時代が終わって、やることがないので趣味のバレエを踊るという状況らしい。


こういう実感のこもった情報はもうメディアでは報道されなくなってきていて、私たちは、企業の決算や損失計上のニュースの深刻さからその有様を想像するしかない。

アルルの男・ヒロシ拝