私が子供の頃には「毒親」とか「親ガチャ」なんて言葉はなかった。
当時はもし悪い子がいたらその子が問題視されて、親や環境にフォーカスすることはあまりなかったような気がする。
今の若いご両親たちは、子供から親ガチャ外れたとか言われても笑って受け流すのだろうか。
私たち世代の親は現在70~80代だと思うけれど、その世代の人たちにとって「毒親」なんてとても怖い言葉なのではないかと思った。
自分のしてきた子育てに心当たりがありすぎて。
当時は子供を殴ったり、怒鳴ったり、家から閉め出したり、そんなことはまだ普通にあった。
家だけでなく、学校でもたまに殴る先生がいた。一応父兄の間で問題にはなっていたようだけれど。
そういうのがまだ「躾」とか「指導」という名のもとに容認されていた時代だったと思う。
私も特に母親よくに殴られたが、なぜ殴られたのか意味が分からず大きな声で泣き、うるさいと言って家から閉め出された。
外は暗くなってきたのに裸足のまま上着もなく、泣きながらドアをたたき、インターフォンを押しまくったら突然ドアがバン!と勢いよく開いて、靴を投げつけられた。
多分周囲の家に丸聞こえだったと思うけど、それを虐待とかで通報するような人もいなかった。
殴られたのも追い出されたのも悲しかったけれど、一番悲しかったのは助けてくれる人がいなかったことだった。
後から母が「ごめん」と言ってドアを開けてくれるわけでもなく、近所の人がとりあえずうちに居るといいよ、と家に入れてくれるわけでもなく、空から天使が降りてきて天国に連れて行ってくれるわけもなく、ただ母親の機嫌が直るまで寒くてもお腹がすいても待つしかなかった。
それが一番辛かった。
隣の家がまた昔ながらのご家族で、悪いことをした子には火のついたお線香を手に押し付けるというお仕置きをしていた。
一度友達がそのお仕置きを受ける場に居合わせてしまったことがあったが、あまりの恐怖で体が動かなかった。
虐待以外の何物でもない。恐怖にひきつった友達の顔も、手の上でジュッと小さな音を立てたお線香も、今でもはっきりと覚えている。
「毒親」「親ガチャ」という言葉にはまだ茶化すような明るさを感じる。
毒のように子供に悪影響を及ぼす親。ガチャではずれの親。
こういうのって、誰がどんな親をイメージして作り出した言葉なんだろう。
その感性に素直にすごいな、と感心してしまう。
私も自分の親がいわゆる「毒親」だったと理解しそれを受け入れたのは数年前だし、機能不全家族という言葉を知ったのもわりと最近。
でも、今親から離れて当時のことを思い返してみると、ただただ仕方なかった、としか言いようがない。
私が一番不幸だったと感じている子供時代、両親は二人ともまだ30代だった。
自分が同じ年の時に子供に「親ガチャあたり!」と思ってもらえるような親になれたかどうか。
そう考えると仕方ないとあきらめる気持ちになる。
傷は癒えないけれど。