「あと1ヶ月くらいです」

担当医の言葉を聞いたあの日から私は毎日泣くようになった。

朝は大丈夫。

笑顔であいさつして出かけることができた。

でも職場では、特にLINEの既読がつかないと正直仕事が手につかない状態だった。

そんな私は30分でも時間を短縮したかったから帰りは新幹線を使った。

職場も自宅も新幹線が停まる駅でよかった。

お金なんてどうでもよかった。

夕方帰宅し家事以外の時間を全て、夫の浮腫んだ足のマッサージに費やした。

泣くのは決まってそのとき。

浮腫んだ足を見ては可哀想で仕方なかった。

足をマッサージしながら私はたくさん話をした。

「お父さんいないとつまんないよ」

「さびしいよ」

「もっとたくさんお父さんと話がしたいよ」

私は泣きながらワガママを言った。

夫は私のワガママなお願いに何も答えてはくれなかった。

黙って何を思っていたんだろうか?

でもそんな夫は、最後の最後に一つだけ私のワガママをきいてくれた。

それは旅立つ前夜のこと、夫は一晩中、私に話をしてくれた。

せん妄だから話がトンチンカンだったけど…

でも会話としてはちゃんと成り立っていた。

私が「疲れるから少し休んだら?」と言っても話をやめなかった。

いつもの饒舌な夫だった。

こんなに喋れるのにすぐそこにお別れが待っていたなんてね。

今でも信じられないよ。

夫が亡くなってから夢か現実かわからないけど、何度か夫の声が聞こえた。

でも最近は全然ショボーン

「ねえ、あなたの声忘れちゃう前に聞かせてよ」

時々でいいから夫の声が聞きたい🥺