夫が亡くなる11日前の話です。
夫はまだ家にいました。
夫は昔から書くことが好きだった。
好きな言葉や思いついたことなど何でも、チラシの裏やそこら辺にある紙に書いていた。
そして筆記用具にこだわる人だった。
急に「青いインクで書きたいから、明日万年筆とノート買ってきて」と頼まれた。
夫は黒いインクの万年筆しか持っていなかった。
その万年筆に青いインクを入れればいいのでは?
と思ったが、どうも色が混じるから、それはダメらしい。
「出たよ、こだわり」私は心の中で思う。
以前なら口に出していた言葉を飲み込む。
私「わかった。万年筆って高いのかな?」
夫「安いのもあるよ。一応この万年筆持って行って」と渡される。
翌日、昼休みを使ってちょっと大きい文房具屋さんへ行く。
店員さんにとても丁寧な対応をしてもらい、持参した万年筆のペン先を洗って書きやすくもしてくれた。
結局買ったのは3千円の万年筆と青いインクとノート。
家に帰ってから夫に渡すと、とても喜んで、早速書き始める。
でも書いたのはその日の夜と、翌日の入院した初日だけになってしまった。
夫が亡くなってからは、私が時々書く日記で使っている。
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昨年の8月10日から、私と娘は長期の夏期休暇に入った。
娘は夫の万年筆を見つけ、何やら書き出した。
そういうところ夫に似ている。
そのとき書いたのがこれです。
娘、書いたあと仏壇に置いていました。
ふざけて書いただけかも知れないけど、娘はその時こんなふうに思ったのは確かだよね。
そして娘の想いに応えた夫は、8月13日にちゃんと帰って来てくれた。
怖くない方だけ、前日のブログを読んでいただけますようお願いいたします。
ただのなぐり書きだけど、今でも仏壇の引き出しに保管しています。