人間の男と子どもに化けた ぎん と たま。二人はサルの団長が案内してくれた席。ステージ
にほど近い席に腰かけた。
「では、ごゆっくり お楽しみください。」
サルの団長は軽く礼をすると、ステージ横の階段を駆け上がりステージ裏に消えていった。
「とうちゃん。サーカス楽しみだね。」
たま が ぎん に 話しかける。すると、ぎんの横から顔をこちらに向けている女の子と目が合
う。たま と 同じくらいの年恰好で、両親の間に座っていた。
たま が はにかむと、女の子は足をばたつかせてニィッと歯を見せる。テントの灯りが徐々に落
ちていき、女の子の顔が次第に見えなくなってきた。
「さあ、始まるぞ。」
ぎん に言われ、たまはステージの方に向き直った。
テントの中がすっかり暗くなると、スポットライトが生まれ、テント内をグルグル駆ける。
「さあ、みなさんお待たせしました。不思議サーカスの始まり~!!」
マイクに乗ってサルの団長の声が響く。その声に続き、
「ジャーーン!!」
シンバルの震えが鳴る。
そして、スポットライトがステージの上に止まった。そこには、同じタキシードを着たサルの鼓笛隊
が横一列に並んでいた。真ん中のサルが笛をピィーと吹き、指示棒を振り上げる。
「キャッ キャッ キャッ」
鳴き声を上げる。すると、一斉に太鼓や笛の音がリズミカルに跳ね、奏でられていった。