サルの鼓笛隊の演奏が終わると、スポットライトが舞台の端に移動した。舞台のそでから、異様
な空気が流れてくる。
「グワァオーーーッ!!」
獣が雄たけび。
ゆっくり、舞台のそでから、猛々しい姿を現す。のし のし と 歩み、雄たけぶ。大きなオス
のライオンだ。そののたてがみは直毛で長く、地面の上をすべるかのようにゆれている。そして、
ライオンの背には、ライオンと同じように髪の長い女が腰かけていた。ライオンが客席をみつめ
る。目が合えば瞬く間にとびかかってきそうな緊張感がはりつめる。客の誰かと、ライオンが目が
合う度、ライオンの足は、その客目がけ一歩が出る。その度、背の上の女が長いたてがみを手綱の
ようにひく。ライオンは向きなおり、また舞台の中央へと前進した。
舞台の中央に来ると、ライオンは女に髪を引かれて、客の方を向いた。そして、体を伏せる。
女はたてがみの一部をつかみ、ライオンの上に立ち上がって たてがみをピンとのばした。
女は ゆっくりとひとつ深呼吸をして、たてがみをゆっくりとなでる。ぽん ぽぽん と音がつぶ
やく。たてがみから生まれる音は 次第に大きく、静かな波のようにテントの中に流れていく。
たま と 身を伏せているライオンの目が合った。ライオンの目は たまの目を突き抜けるよう
に遠く 遠くを見ているかのようだった。
つづく・・・