「あんた、自分のやったこと、わかっているのか?
何も出来ないくせに、余計な発言で話をこじらせやがって」
亘が多村清に詰め寄ると、
「ふぅー」
多村清は亘を見下し、作業着の裾を引っ張った。
多村清は、院長夫人の発言に対し、感じることは何もない様子だ。
「苦情や問い合わせをする客は、あんたらにとっちゃ、皆クレーマー扱いなんだろ?
七条工務店は、他の住宅メーカーからも一目置かれる立派な家を建てる。
七条工務店以外の住宅メーカーは、欠陥住宅。
七条工務店は誰にも文句は言わせない。
SNSをパトロールする部門までありますってか!
ハウジングを見学した時から、家の引き渡し日までに、何度聞かされたことか。
えらく自信家な工務店だと思っていましたよ。
ビッグマウスを信用するのに不安はありましたが、他のメーカーを見て回ればあなた方が胸を張る通りで、柱のクオリティーが全然違った。
デカイ買い物です、俺はいい家が建てたかった。
七条工務店を選んだのは俺です。
誰のせいでもない。
間違っていなかったと今でも思っていますよ、でもね、あんたらのその根性のままじゃ、会社は持たない。
家ってね、建ったら終わりじゃありませんよ。
人が暮らし始めると、手直しの必要な箇所はいくらでも出てくる。
俺らが納得できないのは、手直しが必要だからじゃない、あなた方が俺らの声を聞かないことだ。
頻りと送ってくるアンケートだって、一方的で、自分たちのいいようにしか解釈していないでしょ。
自分の主張だけして、あとは耳栓。
アフターフォローを拒絶する工務店なんて、誰にも信用してもらえませんよ」
「君の担当者の出来の悪さはわかりました。
同じ会社の者として、申し訳ない。
しかし、出来の悪い担当者と、七条工務店を一緒にされては、これもまた名誉毀損だ」
「はあ?」
亘は眉を上げ、顔を歪めた。
放っておくと手を出しかねないと判断し、
「多村さん、頭をしっかり働かせてから発言されることをお勧めします」
秀美が割って入った。
誰にだって長所と短所がある。
ただ、今この瞬間に、多村清の長所が見出せないだけ。
本心では多村清も自身の失敗に気付いているはず、わかっているからこそ、虚勢を張って自分の弱さをごまかしているのだ。
亘と多村清の興奮が、冷房を切ったせいでより熱を帯びる。
本音では冷房をつけたいが、今はとにかく我慢。
つづく。。。
この作品は、フィクションです。
登場する企業、学校、人物は架空のモノです。
