「奥さん、話を元に戻すと、どうして千歳さんが京都文化女子高校を恨んでいると知っただけで
ご自身と結びつけられたのですか?
お父様が副校長を務められていたとは言っても、千歳さんの事情を知らない段階では早とちりな気がします」
「親がああいった職に就いておりますとね、色眼鏡で見られることが多いんです。
私が高校生の時に、父は京都文化女子中学の校長に就任し、同時に高校の副校長も務めるようになりました。
それ以来、校内で不祥事が起こる度に、父だけでなく私たち家族まで攻撃を受けました。
父は堂々としていろと申しましたが、謂われのない誹謗中傷に私は我慢できませんでした。
変な勘繰りをされたくないから、京都文化女子ではない別の中学・高校に進学したのに、他人は『娘も通わせられない馬鹿な学校なのか』『お金の力で娘を安全圏へ逃がした』などと。
私は京都文化女子と耳にするだけで、身体が萎縮します。
何も思うなと言われても、ダメなんです。
冷静になんてなれません」
「では、千歳さんが京都文化女子高校を恨んでいると知ってすぐ、恐怖に苛まれたのですね?」
「ええ。
次から次に、悪いことを考えました。
初めて会った時に感じた山岡さんの陰、私へ向ける笑顔、そしてエアコンの苦情。
考え始めたら怖くてたまらず」
秀美は立ち上がり、ワンピースを握り締める院長夫人を哀れに見つめた。
「ご主人に相談された」
「へ?」
院長夫人が顔を上げた時、診療室から院長とカレンが姿を現した。
カレンは多村清の来訪を待って、院長のいる自宅を訪問した。
院長へ逮捕状を示し、自白を得た後、自宅側から診療室に入り待機していた。
つづく。。。
この作品は、フィクションです。
登場する企業、学校、人物は架空のモノです。