『午後6時の彼』(11)は コチラ
「お恥ずかしながら、私は、博美の死を知りませんでした。
仕事の関係でベトナムに行っておりましたんで。
人づてに博美の死を聞き、驚きました」
彼は背筋を伸ばし、話し始めた。
「最後に博美と会った時、博美は妊娠していました。
博美はシングルで産み育てると決意していましたから、博美が亡くなったとなれば、その子が今どこでどうしているのか、気にかかった次第です。
子供の父親が誰なのか、それは私にもわかりません。
ですが、博美の妊娠を知っていた知人として、子供の行方を把握する必要があると思いました」
私は彼の話に耳を傾けながら、心の中でダメ出しを繰り返した。
彼のひと言ひと言に引っかかる。
素直じゃないのは私も彼も同じ。
「由里子さん、あなたには11歳になる息子さんがおありですね。
時間を守るよう、厳しく躾けしておられる。
博美は、由里子さんと待ち合わせをしている最中に、事故に遭って亡くなった。
あなたが約束の時間に遅れなかったら、博美は― 」
「止めて下さい!」
私はテーブルを叩き、彼の話を中断した。
聞きたくない。
彼に、言われたくない。
「私は真実が知りたいんです」
彼は私の目を見つめ、低音の声を発した。
「真実?」
彼の求める真実とは何なのだろうか。
真実から目を背けているのは、私ではない。
「博美の死に責任を感じるからこそ、由里子さん、あなたは息子さんに時間の大切さを教えておられる。
彼を育てることで、自分の罪を償おうとしているんじゃありませんか?
彼こそ、博美の子供ですね」
『午後6時の彼』(13)は コチラ
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