七色日日新聞・号外(七) | 七色祐太の七色日日新聞

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怪奇、戦前文化、ジャズ。
今夜も楽しく現実逃避。
現代社会に疲れたあなた、どうぞ遊びにいらっしゃい。

レインボー祐太氏
怒濤の十一連勤より
華麗に生還

~浅草六区・コニーアイランドで
 祝砲上がる~

先年来本紙にも度々登場
数多の賑々しき話題を提供せし
三流怪奇・見世物博士
レインボー祐太氏は
先の木曜日を以て
繁忙期に伴う休日無しの
十一連勤を無事終了
数万の観衆に囲まれ
六区をパレードせし後
九段の軍人会館に於て
三流怪奇学術界第一線
復帰記念講演会を催し
会場は立錐の余地無き超満員
一時は憲兵隊まで出動せし
大混乱となりしもの也
憲兵隊司令官某曰く
「元来レインボーなる者は
 小才に長けた一介の
 こすき人物に過ぎず
 其の専門研究分野の低劣さから
 別段国家が取り扱う
 必要無き人間なるが
 先天性の天然的性格が
 後天性の押しの弱さと結びつき
 常にスローモーな
 貴族的雰囲気を醸し出した結果
 政・財・官各方面はもとより
 企画院内部に至るまで
 存外隠れた信者が多いとの
 風聞も聞き及びし為
 吾人としても当面其の動向を
 注視せざるを得ずとの
 やむなき結論に
 至りしもの也」
世間より姿を隠せし十一連勤中の
レインボー氏の動向につきて
事情通N曰く
「レインボーのブログは
 三十代を迎えた直後の
 記事を最後に長らく
 更新が止まつていたため
 青春の終わりを自覚して
 笑顔で自死したとの噂が
 多くで流れたが
 実は先月某日
 フオークリフトを運転中
 危うく物損事故を起こしかけ
 ヒヤリハツトを体験した直後に
 誕生日を迎えており
 本人としては
 直前の暗い体験を
 強引に二十代全体という
 括りとともに過去に捨て去れて
 無邪気に心機一転していた
 ところであるから
 まず死ぬ心配などない
 レインボーは
 今月末に阿佐ヶ谷の
 某喫茶店で行われる
 映画イベントへの
 出演が決定しているが
 別の出演者から
 イベント名の案を
 出すよう頼まれて考案した
  
 裏町銀幕ボードビル
 カウチポテトの会
  
 等は全て却下され
 その後自らの肩書きを
 連絡するよう言われた際も
  
 ひきつり笑い映画王子
 永遠の高等遊民
  
 云々と送つて
 結局別の肩書きに
 勝手に決められるなど
 完全自己完結の世界観は
 少しも衰えを知らない
 今後もこうした調子で
 人生を静かに歩み続けてゆくだろうが
 元来山師的な性格故
 いずれ何か良からぬ大博打でも
 やりそうな気配である
何はともあれ連勤も終了
パレード乃至復帰講演会も
大盛況のうちに幕を閉じた
当のレインボー祐太氏
「そうね
 疲れるときだつてありますよ
 でも仕事が終われば
 家に帰れば
 ジエリー・ウオーレンの
 映画が見れると思うと
 仕事中でも安全靴で
 タツプを踊りたい気分なんです
 これからも
 永遠のインテリ時給取りとして
 人生を謳歌していきますよ
と記者の面前にて
意気軒昂

嗚呼
我国怪奇見世物界の
更なる発展の為
在野の博識時給取り
レインボー氏に
限りなき
祝福と栄光を乞い願わん


(塵芥生)